私たちは宇宙の5%しか知覚できない/真実の目『宇宙奇譚集』プレビュー その1
この世界は、私たちが想像可能な領域を遥かに超えて複雑、かつ不確かに、そして、〝かなり興味深く〟成立しています。そのような奥深い世界を覗き込むために、サイエンスからオカルト、都市伝説まで縦横無尽に横断す
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世界一の超能力者「ベラ」の、現代の日本人に対する提言を伝える警世の書
ベラ・コチェフスカ(1945-2011)。標題にあるとおり、旧ソ連政府に認定された「世界一の超能力者」である。依頼者の過去や未来の透視はもちろんのこと、不治の病を治す能力まで持っていた。
1992年11月末に来日し、テレビ番組に出演。番組内で彼女に各種測定を行なった東京電機大学教授をして「地球人ではない」といわしめた。
本書は、前世は日本で巫女をしていたというベラの、日本における霊的冒険の跡をたどり、あわせて現代の日本人に対する彼女の提言を伝える警世の書である。
語り手である「私」は、彼女の日本招聘に尽力したプロデューサー。普通、ノンフィクションで「私」とあれば著者自身のことであるから、当初、評者は、著者の宮﨑氏は過去にテレビプロデューサーなんてされていたんだ……と思って読んでいたのだが、最後にこの「私」はフリーのディレクター渡辺延朗氏がモデルの架空の人物であると明かされ、狐につままれたような気分になった。
それはともかく、ベラによれば日本は「地球のヘソ」「国土全体が特別な磁場を持つ聖地」であり、古来、イエスやブッダ、モーセ、ムハンマドといった聖賢たちも、霊体となって日本を訪れ、この地で修業を積んだという。また、特に伊勢神宮は世界でも稀に見る聖地であり「世界中の人々が祈りに来なければいけない」とまでいうのである。
一方で、現代は「日本人の心が滅びゆく時代」であり、「日本人の心が現世的な欲得に傾き、伊勢神宮はじめ偉大な神仙たちの棲む聖地を無視」するようになると、「日本の霊的エネルギーが滞り」ひいては「地球全体の霊力も低下」してしまうとも述べている。
さて、ベラは来日時、当時の本誌「ムー」のインタビューにも答えている(1993年2月号)。このとき彼女は、編集部員の目の前にUFOを召喚して見せ、さらに「聖書に書かれてあることはすべて現実のものと」なるとして人類を襲う危機を予言。人類が救われるためには「結局は、ひとりひとりが心を浄化し、言葉を整え、行動を改めることです」と説いている。
評者の手許にも当時のバックナンバーはなく、これは資料としても極めて貴重であるといえよう。
科学によって解明される呪いの「効力」とは?
「丑の刻参り」などで知られる「呪い」。科学万能のご時世では、迷信として笑い飛ばされることもままあるが、著者によれば「科学が発展してもなお、呪いは日本の文化に深く根ざしている」。否、逆に科学によってこそ、解明される呪いの「効力」もあるのだ。
たとえば、自分が呪われていると知った人は、その不安や恐怖が「カテコラミン」という物質の分泌を促し、くも膜下出血に似た症状を起こすという。あるいはまた、それを聞いた者は自殺するとされ、発禁処分となった「呪いの歌」という現象は、「ウェルテル効果」で説明がつくという。
これらの事例が物語るように、本書は古今東西の「呪い」という現象を、医学を中心とするさまざまな科学的知見を用いて、とらえ直そうとする試みである。単に呪いのみならず、鬼や河童や吸血鬼といった怪物、パンデミックや災害、さまざまな難病奇病、各種オカルト現象のタネ明かし等々、多彩なトピックが取り上げられ、それぞれに快刀乱麻を断つがごとく鮮やかな、思わず唸らされる科学的解説が加えられていくので、読んでいて飽きることがない。
しかし何より衝撃を受けたのは、著者・中川朝子氏が2000年の生まれで、現在医学部在学中ということだ。ハードな学業の傍らにこれほどの著書を書き上げ、さらには小説まで執筆されているというから、何とも末恐ろしい才能が登場したものである。日本の未来も安泰というものだ。
難解極める「量子モナド理論」をわかりやすく解説
著者・保江邦夫氏は理論物理学・量子力学・脳科学を専門とする理学博士。湯川秀樹博士の衣鉢を継ぐ「素領域理論」の世界的権威であり、『数理物理学方法序説』全9巻などの大部の著作もある。
その著者の盟友で、著者曰く「京大一の天才」の中込照明博士が、あるとき「最先端の極めて高度な数学で記述される」「リーマン幾何学と一般相対性理論から素領域理論、さらには心の世界までをすべて包含した大理論」を打ち立て、その論文のコピーを著者に送ってきた。
「量子モナド理論」と名づけられたその理論は、ギリシア以来の問いである「人間とは、宇宙・世界とは、心とは何か」のすべてを解明し、数学的な証明もなされているという、驚愕の代物であった。だが一方で、著者ですらそれを理解するまで、5年もかかったという、難解を極める理論でもある。
本書は、人類が到達したこの最終理論を、著者ならではの親しみやすい文体で、だれにでもわかりやすく説明してしまう驚異の書。この理論を用いれば、超能力の仕組みまで解明できてしまうというから驚く。たとえば全身の生体情報が集約されている松果体が置かれた空間のツイスター(空間の超微細構造)を読み取れば他者の思考を読むことができるし、また物質のツイスターに働きかければ念動やテレポーテーション、物質化などもできるというのである。
新たな宇宙観を提示する必読書だ。
一般人の常識を覆す「陰謀論」アップデート版
「世界を操る闇の支配者」と聞けば、老練な本誌読者にとっては、いささか使い古されたフレーズと思われるかも知れないが、何しろこれはその「2.0」である。いったいどんなアップデートが施されているのか。
著者のひとりであるベンジャミン・フルフォード氏は、カナダ生まれの世界的ジャーナリストで、ディープ・ステート研究の第一人者といってもよいだろう。かたやウマヅラビデオは3人組のYouTuber。当事者の生の声であるだけに、彼らの語るYouTubeのおぞましい情報統制の内実などは、傾聴に価する。
紹介される情報は、どれも一般人の常識を覆すものばかりで、たとえば現在も進行中のウクライナ戦争に関しては、ウマヅラビデオによれば「悪の帝国対悪の国家」の闘争に過ぎず、またフルフォード氏によればロシアの特殊部隊がウクライナで悪を働いている連中を退治する「警察的」な作戦なのだという。
さらに、ウクライナとともに、最近にわかにきな臭さを増している台湾情勢では、フルフォード氏が「アジアの結社筋」から聞いた話によると、中国と台湾は平和的に合体するということで「すでに話がついた」という。
このように、通常の報道だけではわからない驚くべき情報の数々が、「ディープ・ステート」というレンズを通して、次々と暴露されてゆく。まさしく、アップデートされた陰謀論の本領発揮である。
竹内文書をテーマに語り尽くす対談書
著者のひとりである竹内康裕氏は皇祖皇太神宮・第68代管長で、あの竹内巨麿の孫であるというから驚く。
本書は、『竹内文書』の管理人であるこの竹内氏と、本誌読者にはお馴染みのサイエンス・エンターテイナー飛鳥昭雄氏が、竹内文書をテーマに語り尽くす対談書。
何と巻頭カラーで延々12ページにわたり、あの竹内文書の原本等が世界初公開されており、これだけでも十分買いである。
竹内家は、「本来、スメラミコトがおやりになっていた神事を代行してきた」家系であり、その祭式や歴史を記した文献が『竹内文書』であるという。
日本は「世界のヘソ」、要であるとか(これは前述のベラ・コチェフスカもほぼ同じ表現を用いていた。何か繋がりがあるのか?)、古来世界史は日本を中心に展開してきたとか、イエスは若いころと昇天後の2度にわたって日本に来たとか、「初代の天皇陛下はアダム」だったとか、驚愕の情報のオンパレード。まさに標題にある「今だからぜんぶ話そう!」の大盤振舞いである。
さて、老婆心ながらつけくわえておくと、本書はその題材、標題、著者名などが、かつて本欄でご紹介した竹内睦泰氏(故人)の『真・古事記の宇宙』に何となく似ている。だが、同じ竹内でもあちらは「睦泰」、こちらは「康裕」。そして標題はあちらは「真」で、こちらは「シン」である。
混同されぬよう、ご注意されたい。
伝統的な手相術をカリキュラム化した実用的な一冊
個人的な経験であるが、評者を含めて人間関係の構築の苦手な人、いわゆる「コミュ障」にとって、手相術は大いに武器となる。手相術の心得があるというだけで、有力者から老若男女問わず、さまざまな人々とたちどころに繋がりができてしまうのだ。これを活用しない手はない。
こう聞いて俄然やる気が出た人に最適の書、それが本書『手相術の教科書』である。著者フランク・クリフォード氏は、30年のキャリアを誇る手相家/占星術師。本書は、著者の長年にわたる実地経験に基づいて、伝統的な手相術をカリキュラム化した実用的な一冊。しかも監訳に当たっているのは、著者とも親交深いあの鏡リュウジ氏。大船に乗ったつもりで、お買い求めいただきたい。
鏡氏によれば、本書の特色は「複雑な手相術を4つのステップに系統立ててわかりやすいテキストにまとめた点」。具体的には、①「手の大きさと形」、②「手のひらの基本線」、③「指」、④「指紋のパターン」である。以上の4ステップを習得すればアマチュアとしてはもう十分だが、さらに上級の技術として、時期の読み方や人生の特定の分野に対する手相の応用法も学べる。
ここまで来れば完全にプロの領域だが、巻末には実際の手相の写しを使った練習問題も収録、現在の自分の実力のほどもわかるスキのない構成だ。本書を座右の書として「自分自身を知り、未来を能動的に切り開」いていっていただきたい。
秘密結社会合の余興小道具を、図版とともに紹介
「デムーリン・ブラザーズ」の名をご存じの方は、ほとんどいらっしゃらないのではないか。何を隠そう、評者も今の今まで知らなかったわけだが、彼らの本業はバンドのユニフォームや軍服など、服飾品全般の製造である。創業は1892年。
当時の合衆国は秘密結社(実態はただの社交クラブ)の全盛期で、3500万人もの成人男性が、何らかの団体に所属している状況であったという。これに目をつけた彼らは、結社の会合での余興で使うための、小道具や装置を続々と開発し、大人気を博した。
たとえば、表紙にもある、滑り台に変形する玉座だとか、電気の流れる椅子だとか、尻を叩くと轟音の鳴る木槌やシャベル、迫りくる回転ノコギリ、爆発する葉巻、座ると崩れ落ちる椅子等々、思わず「子供か!」とツッコみたくなる悪戯グッズがテンコ盛りで、「秘密結社」の裏の顔が垣間見られる(もっとも、あのフリーメーソンはこうした面白グッズの使用を厳禁していたようだ。ある意味、当然といえば当然か)。
何にせよ、どんなことでも問題になりうる今の世の中ならば、到底許されぬ珍発明の数々は、アンティークな図版にとぼけたキャプションまでやたらおもしろく、眺めているだけでにやにやが止まらない。こういう本を書架に一冊備えておいて、折りに触れて取り出し、酒でも呑みながらぱらぱらとめくる、という愉しみもまた、読書の醍醐味のひとつであろう。
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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