田中俊行の実家は事故物件!? 騒霊現象と奇妙な肉塊の家を語る/松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎の怪談行脚

文=松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎

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    異色ユニットが、行く先々での怪奇体験を公開。今回は映画『事故物件 恐い間取り』にちなんで、田中の実家、家そのものにまつわる怪奇現象を紹介する。

    2020年7月28日記事を再編集

    田中も出ている映画『事故物件 恐い間取り』

    タニシ 事故物件住みます芸人・松原タニシです。
    田中 俳優兼オカルトコレクター・田中俊行です。
    健太郎 四国の怪談は俺が守る、恐怖新聞健太郎です。……てか田中さん、”俳優兼”って何ですか?
    田中 この度銀幕デビューしまして。
    健太郎 え、マジですか!?
    田中 タニシくん原作の映画に。
    健太郎 ええ!?
    タニシ そうなんですよ……映画『事故物件 恐い間取り』に田中俊行がこっそりと……
    田中 しっかりと。
    タニシ 映り込んでます。

    映画ポスターの山野ヤマメ(亀梨和也)をモノマネするタニシ。

    健太郎 え、田中さんすごいじゃないですか、何の役なんですか?
    田中 主人公・山野ヤマメを演じる亀梨和也さんのラ……
    タニシ ストップ!それは映画を観てのお楽しみということで。
    健太郎 え、主役亀梨くんなんですか!? ていうかタニシさんの本が映画になるのがすごいですよね。
    田中 しかも監督は『リング』の中田秀夫監督やからね。ヤバイよこれは。
    タニシ そうなんです、僕もまさかこんなことになるなんてという感じですよ。

    映画『事故物件 恐い間取り』の中田秀夫監督から恐怖新聞健太郎へのオファーは果たしてあるのか?

    健太郎 それに田中さんが出るんですか……
    タニシ 実は田中さんの役は大島てるさんと競合の末、田中さんが勝ち取ったみたいですからね。
    健太郎 え、どんなキャスティング!?
    田中 どうも、大島てるに勝った男、田中俊行です。
    タニシ てるさん悔しがってたなー。
    健太郎 事故物件といえば事故物件公示サイト「大島てる」が有名ですもんね。その代表である大島てるさんが事故物件の映画に出てたら話題性ありますよね。
    田中 健太郎さん、その言い方やったら大島てるさんが出た方が良かったみたいな感じやんか。
    健太郎 いや、そんなつもりはないですよ。

    映画原作の『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房)も好評発売中!

    田中家のルーツ「脇の浜」

    タニシ まあ田中さんの家も事故物件ですもんね。四十を超えた息子が子供部屋から出て行かないという。
    田中 オカンとバチバチやからな。
    健太郎 それは田中さんが田中家にとって事故物件っていうことですよね。
    田中 いや、ちゃうねん、ていうか事故物件持ってるからね。
    健太郎 え、そうなんですか?

    おとなのおもちゃ屋で大人買いする子供部屋おじさんの田中俊行。

    田中 まあ俺んちってよりは、俺のおばあちゃんの家やねんけど。おばあちゃんの家は3階建てで1階部分は魚屋になってて。
    タニシ 田中さんの実家は魚屋さんなんですよね。
    田中 そうそう、先祖が相撲取りやったから。
    健太郎 全然魚屋と相撲取りが結びつかないんですけど……。
    田中 うちの実家の魚屋って屋号が「脇ノ浜」って言うねんけど、実は田中家の先祖である脇ノ浜という力士が始めたんよ。というわけで、まずはこの脇ノ浜が相撲取りから魚屋に転身するまでの奇跡の物語が田中家の逸話として残っているので紹介するね。
    健太郎 あれ、事故物件の話はどこいったんでしょう……。

    田中 昔々神戸の灘に脇ノ浜という相撲取りがいまして。相撲取りとして実力はあったものの体力の限界を感じ、この先どうしようか悩んでいたんです。悩み疲れてトボトボと歩いていたら、気がつくと自分のシコ名と同じ神戸灘の脇ノ浜海岸にたどり着いていました。浜辺には漁師が十数人で網漁の網を綱引きの様に一生懸命、海から引き上げている最中でした。脇ノ浜は相撲取りだけあって体が大きく目立ちます。漁師の一人がボーッとしてる脇ノ浜を見つけ、
    「ちょっとあんた手伝ってくれへんか」
    と声をかけました。脇ノ浜は言われるままに手伝うと、一気に網は引き上げられ十数人の漁師はそのまま網と一緒に吹っ飛んだといいます。
    「あんた相撲取りやめて魚屋やりなはれ——!!」
    一人の漁師の言葉で吹っ切れた脇ノ浜は、相撲取りから魚屋へと見事な転身を決めたのです。こうして脇ノ浜は「脇ノ浜」の屋号を名乗り、神戸で魚屋を始めたとさ。

    健太郎 なんですかその日本昔ばなしみたいな話!
    田中 昔は家の入り口に立派な力士の廻しも飾られてたらしいわ。おじいちゃんが死んだ瞬間におばあちゃんが捨てちゃったけど。入り口付近にあるから通り過ぎる時に微妙に頭にあたって鬱陶しかったみたいやね。
    健太郎 まあ田中さんの先祖が力士で、その力士が魚屋を始めたってのはわかったんですけど、それが事故物件であるってのがまだわからないんですが……。
    田中 そうそう、ここからがその話。俺の両親が朝から夜8時ぐらいまでは一階のお店(魚屋)にいて商売をしてるんだけど、おじいちゃんは亡くなってるからおばあちゃんは一人でその家に住んでて。元々お店(魚屋)は市場でやっててんけど阪神淡路大震災で殆どの店が潰れちゃった。今は市場もなくなって店の周りは東隣にぴったりと隣接する一軒家があるだけ。
    タニシ そっか、田中さんのおばあちゃんの家、あそこ元々市場だったんですね。

    田中 そうそう。それで今から3年ぐらい前の話やねんけど、この一軒家に若い夫婦が引っ越して来て。おとなしそうな二人で、こっちが挨拶しても首だけ少し曲げてくる程度らしいねんな。愛想が全然ない。仕事が昼夜関係ないらしいねんけど、夕方から仕事で深夜に帰宅する事もあったと。
    ある時、休日だと思われる若い夫婦二人が初めてあちらから声をかけて来た。
    「すみません、夜中にどんちゃん騒ぎするのやめてもらえませんか?」
    ——妙な事を言い出す。
    というのは俺の両親は夜8時にはお店を出るし、当時おばあちゃんは入院をしていて夜8時から午前4時(父が魚市場に行く)までの間は誰もいなくなる。どんちゃん騒ぎというより人がいないから静かなはず。その事を伝えると、若い夫婦は顔を見合わせて不思議そうに首を傾げながら戻っていった。数日後、また深夜に騒いでうるさいと、二人が文句を言いに来た。けど今言ったように夜は人がいない。それで僕の両親は詳しく夫婦に聞いてみることにしたんよね。
    どうやら騒ぎが起こるのは決まっておばあちゃんの家の2階部分らしいと。2階は寝室、リビング、仏間の3部屋があるねんけど。話を聞いた推測だと、主に真ん中のリビングで騒いでるらしい。祭りの様な何人かで楽しく踊っている感じだと言う。時間は深夜1時〜3時の間、毎日ではなく騒ぐ日もあれば何も音がしない時もあるとのこと。
    それで、もしかしたら勝手に誰かが入り込んでる可能性もあるから両親が調べてこいと僕に言うわけですよ。

    愛犬タイソンの行方

    タニシ 実家に居座ってなんもしてないねんから、それぐらいは貢献しろと。
    田中 そうそう。俺ほんまに田中家にとって何の役にも立ってないからな。それで、何回か一人で寝泊まりしに行ってんけど、特に何も起きなかった。
    そのうち若い夫婦は1年も経たずに引っ越していったんよね。いまだに原因は分からへん。隣は今空き家になってるわ。
    タニシ 事故物件ってよりは、変なことが起きてるってことですよね?
    田中 そうやね。まあおばあちゃんももう亡くなってしまってるねんけど。そういえば、おばあちゃんが一人暮らししている時でも夜中に階段を誰かが上り下りする音や、家の玄関で大きな水(?)をぶちまけた音が何時間も続いて眠れないって言ってたなあ。
    健太郎 ちゃんと怪奇現象起きてるんですね。
    田中 そうそう。あと、祭りのような踊りで数人が楽しい演出をしてあの世へ連れて行くといわれる怪談も聞いた事があるから、もしかしたらおばあちゃん連れて行かれたんかもしれへんなあ。
    健太郎 え、ちゃんと怖いじゃないですか。
    タニシ そんな田中さんのおばあちゃんの家に実は僕もお邪魔させてもらいまして。
    田中 そうそう、タニシくんとタニシくんの後輩芸人が二人、華井さん(華井二等兵)とにしねくん(にしね・ザ・タイガー)やったかな、来てくれて。

    田中家にて。奥は、なにかとタニシ企画に登場する華井二等兵。

    タニシ 実際行ってみると、いろいろあって気持ち悪かったですねー。
    健太郎 何があったんですか?
    タニシ まず2階のリビングに先祖の遺影がわんさかあって。
    健太郎 脇ノ浜の写真もあったんですか?
    タニシ いや、脇ノ浜は見つけられへんかってんけど。ただ、どの先祖よりも大きな額縁に入れられた犬の写真があって。
    田中 タイソンな。
    健太郎 タイソン?
    田中 マルチーズのタイソン。おばあちゃんが可愛がっててん。

    歴代のご先祖様より立派な、タイソンの写真。

    タニシ ただ、怖いのがその遺影の反対側に押入れがあるんだけど、天袋が少しだけ開いてて。気になったから開けてみようとしたら田中さんが突然「あ、やめた方がいい!」って言い出して。でも気になるから開けたら、なんかビニール袋を何重にも巻いた肉塊みたいなのが出てきて。
    健太郎 ええ!なんですかそれは。
    タニシ わからへん。でもちょうどその肉塊の大きさ、小型犬サイズのような……。
    田中 タニシくん、それ以上は言わん方がええと思うで。
    健太郎 こわ!!!

    知らぬが仏とは、まさにこのことか。

    怪奇現象の原因を霊に問いただす

    タニシ あと、3階に上がったらなんか廃墟みたいになってて。それで朽ち果てたベッドの真ん中に百円玉が置かれてて。
    健太郎 え、なになに?
    タニシ 何の為に置かれてるのかわからへんけど、その百円玉でコックリさんしてみようかって流れになって。
    健太郎 どんな流れなんですか。
    タニシ それで田中さんに五十音と鳥居のマークを書いてもらってコックリさんシートを作って、「コックリさんコックリさん、誰がどんちゃん騒ぎしてるんですか?」って聞いてみてんけど。

    霊現象について霊に聞く。餅は餅屋だ。

    田中 全然まともな文字に動いてくれへんねんな。
    タニシ そうそう、「る」「ほ」「み」っていうよくわからん文字に移動するのよね。
    田中 もしかしたら田中るほみっていう先祖がおったんかもしれんけど。
    健太郎 いや、るほみって名前の人なかなかおらんでしょ
    タニシ それでコックリさんの最中に田中さんがとんでもないことを言い出すんですよね。
    田中 た行書くの忘れた」って。
    健太郎 た行?
    タニシ そうそう。つまり「た」が抜かれてる。たぬきになってしまってるんですよ、コックリさんシートが。
    健太郎 タヌキ!!
    田中 そやねんなあ、だからどんちゃん騒ぎしてたのは田中るほみじゃなくて、タヌキの仕業やったんかなあって。
    健太郎 どんな展開!

    「た」行がないばかりか、「よ」などを書き損じるなどやっつけ感満載のコックリさんシート(田中作)。

    タニシ でもそのあと一番怖いことがあって。誰もいないはずの1階で物音がしだすんですよ。真夜中の3時に。
    田中 それで「俺が見てくるわ」って言って一人で見に行ってんけど。
    タニシ それから田中さんが全然戻って来なかったんですよね。しかも1階からは何の物音もしなくなって。「田中さんが異世界に吸い込まれてしまったんじゃないか」って、僕ら本気で心配して。
    健太郎 え、大丈夫だったんですか?
    タニシ そしたら10〜15分くらい経ってからかな、田中さん戻ってきて。「親父やったわ」って。
    健太郎 親父かい!
    タニシ でも何が怖いかって、10分間ほんとに無音だったんですよ。だから1階に下りた田中さん、暗闇の中親父さんと10分間一言も会話してないんですよね。
    田中 そやねん、親父あんまり喋らへんから。
    健太郎 どんな親子関係なんですか。
    タニシ なんにせよ田中さんのおばあちゃんの家は不気味でしたね。
    田中 せやろ。

    幼いころの田中(中央)。このときの心のまま、大人になってしまいました。

    松原タニシ

    心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。

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