演芸史上初の〝都市伝説縛り〟! 第一回・三大話芸都市伝説の会レポート

構成=こざきゆう

    2023年8月13日、「第一回・三大話芸都市伝説の会」が開催された。浪曲、落語、講談……いわゆる〝日本三大話芸〟の演者3人が、都市伝説をテーマにした新作を披露する、前代未聞の話芸ライブをレポートする。

    演芸界の稀少コラボ・イベント

    〝うなり(節)〟の芸・浪曲、〝喋り〟の芸・落語、〝語り〟の芸・講談。〝日本三大話芸〟それぞれの演者が、共通の趣味である都市伝説の磁場に引き寄せられるように結集した。それが東京都港区のespace天で開催された「第一回・三大話芸都市伝説の会」だ。
     披露される演題は、浪曲、落語、講談の、もちろん古典ではなく、新作。いずれも都市伝説に材を取ったもの。新作の会はさまざまあれど、都市伝説のくくりで三大話芸の会は過去に例がない。
     また、浪曲、講談、落語の演者が一同に介する会というのも、じつは年に10回もあるかどうかという、稀少コラボ・イベントなのだ。

    三大話芸の都市伝説好きが〝引き寄せられて〟

    「espace天始まって以来の大入り」というほど、満員状態で会がスタート。
     まずは演者である、浪曲師・東家孝太郎氏、落語家・三遊亭吉馬氏、講談師・神田桜子氏がそろって登場。
     今回の会のいきさつが語られた。
     いわく、そもそも不思議な話が好きな桜子氏が、都内某所で行われている〝都市伝説好きが集まり喋る会〟に、孝太郎氏、吉馬氏に声をかけたことだという。それぞれの話芸ジャンルの3人が都市伝説という磁場に引き寄せられたことで、演芸会が立案されたのだ。

    今回の会のきっかけや、3人それぞれの都市伝説との馴れ初め(?)などが語られた、プロモーション・トーク動画。

    ふだんの演芸では聞かれない〝ワード〟が飛び交う!

     そしていよいよ本題。三大話芸が披露された。

     開口一番は桜子氏の講談「ニコラ・テスラ 電流戦争」(作:春風亭昇輔)。
     講談では古典・新作に限らず、偉人の伝記ものも定番のひとつだが、さすがの都市伝説の会。偉人は偉人でも、奇妙な噂がつきものの科学者ニコラ・テスラの伝記講談だ。テスラおなじみの、1880年代アメリカで起きた、発明王エジソンとの送電方式をめぐる戦いを描いた。

     続いて、吉馬氏の落語「真実の長屋」
     息子の勉強を教えてほしいと、ご隠居の元に訪れた八っつあん。ところがご隠居は難しい勉強は教えられない。そこで、代わりに都市伝説や陰謀論を教えてその場を乗り切ろうとするが、事態は思わぬ展開を迎える……。
     笑いの芸である落語と、怪しい都市伝説は、決して相性がいいものではない。そこを、ご隠居が教えるという古典落語のフォーマットで絶妙なバランスで語る。

     中入り後は、孝太郎氏の浪曲「パンを踏んだ子 令和日本版」(作:浦野とと)
     高慢な女の子インゲルが、地獄に堕ちてレプティリアンに囚われ、最終的には次元上昇するという、アンデルセン童話に材を取った、世界初の都市伝説浪曲だ。これまで披露していくなかで進化してきたこの浪曲、迫力満点の仕上がりとなった。

    「パンを踏んだ子 令和日本版」については、以前、Webムーで紹介。

     いずれも、〝都市伝説〟的な用語が飛び交うその異様さ(←讃えている)。ここがふだんの演芸の場ではないことが如実に感じられる。

    「ここだけの話」ということで……

     最後は、演者3名による、都市伝説クロストーク。どんな話題が展開したのかだが、基本的には会場だけの(配信もあったが)クローズドだ。残念ながら詳細をここでは紹介できないが、ちょっとだけ触れればーー

    ・ スピリチュアルに関心のある、すごいお母さんのお話
    ・ じつはあの会社は、宇宙人につながっている!
    ・ レプティリアンはいる、その根拠!

    などなど。

     そして、孝太郎氏より、この会が開催された8月13日こそ、偶然にも、『日月神示』の〝大峠の始まる日〟という説がある日だったと紹介された。この会の開催は、何かの力に導かれているのだ、と。
     その〝力〟こそ、都市伝説の磁場、引力なのかもしれない。

    三大話芸都市伝説テラーによるクロストークは、会場をどよめかせる話題満載。大いに盛り上がった。

    三大話芸史上初の会を終えて……

     会の終了後、史上初の都市伝説話芸をやりきった演者3人に今日の感想を伺った。

    桜子氏
     講釈(講談)はお客さんを寝かせるのと難しい顔をさせるのが得意。今日はまさにそんな感じでしたね(笑)。「ニコラ・テスラ 電流戦争」は、この会のための新作ではありませんでした。でも、都市伝説の会をすることにあたり、「都市伝説はそんなに詳しくなくて……」と孝太郎兄さんに言ったところ、兄さんから「テスラやってますよね」と言われて、それで。手応えとしては、講談を聞いたことないお客様が多かったので、「難しいこと言ってんな」って感じられたかもしれません、高座も雰囲気を出すために、照明が暗かったんで(笑)

    吉馬氏
     都市伝説落語という、これまで存在すらしていなかったものを、新しく自分で作るにあたって、笑いの芸である落語ですが、だからといって都市伝説をちゃかすことはやりたくなかったんです。都市伝説の魅力を損なわないように、自分たちの生きている現実の裏側のこと、いわゆるオープンになっていないことを楽しむことだという意識があったんで、茶化さず、ふざけず、なんとか成立させられればと、がんばってみました。

    孝太郎氏
     この会のプレイベントとして、5月に「都市伝説浪曲の会」というものをやったんです。そこで話してきた経験や、これまで何度か都市伝説浪曲を高座にかけて、レプティリアンからの警告と思われる現象が起きたこともありました。そのうえで進化してきたものが、今日、ようやく完成したなという感じがしましたね。三大話芸を聞いたことがないお客さんが多かったようですが、そういう方へのアプローチも蓄積されていたので、確かな手応えがありました。
     今日の会は、世の中が「風の時代」に入っていたからこそできたんだと思います。第二回も機が熟したとき、やれるかなと思っています。

    左から、浪曲師・東家孝太郎氏、落語家・三遊亭吉馬氏、講談師・神田桜子氏、曲師・沢村まみ氏。
    (補足:曲師は浪曲の演奏を担当する。まみ氏ご本人いわく、都市伝説についてはあくまで中立、とのこと)

    第二回・三大話芸都市伝説の会、その開催に期待したい!

    写真提供=配信スタジオespace天https://espace-ama.jp/

    こざきゆう

    児童書ライター、作家、編集者。伝記、お話、学習漫画、動物などをメインに活動。

    関連記事

    おすすめ記事