たった一夜で全住民が姿を消し、誰も住めなくなった呪いの現場! インドに伝わる恐怖の村伝説を追う

文=仲田しんじ

    一夜にして村民全員が姿を消した村があるという。村からの“夜逃げ”の直前、人々はこの村には二度と人が住めないように呪いをかけたというのだ――。

    村民が集団で“夜逃げ”した村

     インド・ラージャスターン州の中心部に位置する忘れ去られた廃村、クルドハラはかつて農業と水管理の技術で有名なパーリ(同州中西部)出身の司祭階級、パリワル・バラモンが定住したことで繁栄したコミュニティであった。彼らは不毛の土地を緑豊かなオアシスに変え、この地域で最も繁栄した地域の1つに変えたのである。

    「MRU」の記事より

     クルドハラは長きにわたってこの地で栄えたが、地元に伝わる昔話によると18世紀に暴君的な官僚であるサリム・シンがやって来て村を支配下に収めた。
    “ジャイサルメールの怪物”と呼ばれるシンは、村民に対し恐喝まがいの重税を課し、さらにひと目ぼれしたクルドハラの首長の娘にしつこく言い寄った。
     突然の人災に村民たちは協議を重ね、村を放棄することが決められた。しかし村民たちは対外的に村を去る理由を明らかにはしていない。

     そしてその夜、周到に準備をしいた村民たちは集団で村を後にしたのだが、その直前に村民たちはこの村に二度と人が住むことがないよう、恐ろしい呪いをかけたのだった。

     この呪いによって幽霊の出没などの心霊現象が多発するようになった一方、この廃村に住んでみようと試みた者は不幸で残念な出来事に見舞われて定住を諦めることを余儀なくされている。

     こうして今に至るまで廃村には人が住むことはなく、これは呪いがまだ有効である結果であると多くが信じている。村を訪れた者は幽霊を目撃したり、説明のつかない騒音を聞いたりするなど奇妙な出来事を経験し不安に襲われるケースが多く、“心霊スポット”としても有名になった。興味本位で訪れてみたものの、一帯のあまりの不穏さに早々に引き返す者も後を絶たないということだ。

     廃村の崩壊しつつある通りには、村を放棄せざるを得なかった村民たちの怨念が残っていると主張する人々もいる。

     一方で好奇心に駆られて村に来たものの、幽霊に遭遇したりするような心霊現象をいっさい体験することなく見物を終えたという者も多い。結局のところクルドハラの呪いは伝説であり、史実の裏付けはないのだが、ここに村民が放棄した廃村があるのは事実である。いったい彼らはどこへ行ったというのだろうか。集団失踪事件であった可能性はあるのだろうか。

    画像は「Pixabay」より

    伝説を裏付ける具体的な証拠はない

     歴史家はクルドハラの村が実際に放棄された考えられるいくつかの理由を挙げている。その1つは、村民が当時直面していたかもしれない厳しい経済状況である。

     役人よる無慈悲な重税を通じて、地域経済が大幅に悪化した可能性があり、また干ばつなどの環境的苦難に直面して農業収入が激減していた可能性もある。

    「MRU」の記事より

     廃村の発掘調査により、家屋、通り、複雑な水道システムが発見され、村がかつて完全に自給自足であったことが示されている。この水道システムには、灌漑や家庭用の水を集めて分配するために使用される運河とダムのネットワークが含まれていた。

     この地域は頻繁に干ばつに見舞われるエリアであり、このような複雑で洗練された水道システムを持つことである程度の干ばつを克服して繁栄を続けた輝かしい時期があったことが推測できるということだ。

     発掘調査では土器や道具などの遺物も発見されており、村民の日常生活を垣間見ることができる。しかし残念ながらこれらの調査結果のいずれからも村を放棄した村民の行方についての手がかりは得られなかった。

     今後の調査で村の繁栄期の様子をもっと再現できるかもしれないが、彼らがどこに行ったのか、また村を去った理由を説明する証拠はほとんどない。

     現在入手できている情報を考慮すると、ほとんどの歴史家は村民が自然環境と政治的な理由の組み合わせで去ったと解釈している。つまりシビアな干ばつと重税のダブルパンチで村の放棄を決めたというのだ。

     そもそも水資源に乏しいクルドハラだけに村民たちはいつかは離れるつもりであったのかもしれない。そこへきて圧制の時代になり、その決断が早まったと解釈することもできそうだ。

     クルドハラの人々に実際に何が起こったのかはほとんど不明のままであり、その呪いについての噂が広まっているだけであり、伝説を裏付ける具体的な証拠はまだない。

     村を放棄した村民たちの行き先が不明ということは“集団アブダクション”であった可能性もゼロではないだろう。

    画像は「Pixabay」より

     今日、この村は、その不気味な歴史に惹かれる歴史愛好家や超常現象愛好家に人気の観光スポットとして知られている。この村に実際に何が起こったのかこの先も謎であり続けるかもしれないが、現地を訪れてみることで何らかのヒントや気づきが得られるかもしれない。

    【参考】
    https://www.ancient-origins.net/ancient-places-asia/kuldhara-0018085
    https://mysteriesrunsolved.com/2018/06/ghost-village-of-kuldhara-rajasthan.html

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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