怪僧グリゴリー・ラスプーチンの基礎知識 ロマノフ王朝を操り、帝政ロシアの崩壊を予言した男/羽仁礼・ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、皇帝夫妻の寵愛を受けて国政を操り、やがて帝国に崩壊をもたらした、ロシア史上類を見ない怪人
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怪談師としても活躍中の漫画家・山田ゴロ氏。霊との交流ができてしまうため、友達の家で不思議な子供から指さされてしまい……。
 ぼくが、まだ中学生のころ。友だちの西君との話だ。
 西君とは中学で知り合い、同じ柔道部に入っていた。身体が大きくて運動は抜群だが、勉強はあまり得意ではなかった。
 漫画を描くことや漫画家になりたいなんて、当時はとても珍しいことで、そんなぼくを、いつも西君は、特別扱いしてくれていた。例えば、町の映画館でアニメが上映されると、
「一緒に行こう」
 といって、映画を奢ってくれたり、毎週の「少年マガジン」「少年サンデー」なども、時には自分が読む前に、ぼくに貸してくれたりするお人好しだった。
 あるとき、初めて西君の家に、遊びに行った。なんでも、お父さんやお母さんにぼくのことを話していたら、一度、漫画をどんな風に描くのか見てみたいということだったのだ。
 その日はちょうど梅雨の時期で、毎日、ベショベショ雨が降っていた。
 西君の家は旋盤加工工場を営んでいた。町工場の集まったようなところで、工場の横に家はあった。庭には資材と旋盤のクズが、山積みになっていた。
 西君の両親は、工場からオイルのにじんだ作業着のまま。顔を手ぬぐいで拭きながら、ぼくの前に現れた。オイルの滲んだ手ぬぐいで拭くものだから、顔全体が、てかてかになっていた。
「こんにちは」
「やあ、すまんね。克彦が毎日おまさんの話をすんやて。いっぺん、わしらにも漫画描いとるとこ見せたってくれへんかね」
「ええけど、緊張するなあ。特別なこと何にもしとらへんでね」
「いや、漫画、描くっちゅうだけで特別やわね」
 ぼくは、西君の両親が、のめり込むようにして頭を寄せて見ている前で、ちょっとアガりながら、そのときに描いていた漫画のペン入れを見せた。墨汁やペンは、いつも持ち歩いていた。
 すると、いきなり原稿の上に、ポタッと一滴の水が垂れて、インクがサッと滲んだ。
「あっ!」
 と、ぼくが声を上げて天井を見ると、
「どうしたね?」
 と、前にいた3人が、ビックリ。
「水が垂れてきた!」
「えっ、どこに?」
「ここ、原稿の上に」
「あれッ?」
 どこにも垂れていなかった。もう一度、天井を見あげたが、考えてみたら2階もあるので、雨漏りなんてそもそもありえない。
「変やなあ……」
 と、思っていると、6畳ほどのその部屋の隅に、なんと傘を差して立っている幼い子供がいたのだ。
「西君。あれ、何してるの?」
「えっ、何が?」
「何がって……弟さん?」
「どうかしたんかね?」
 と、おじさんたちも、気がついていないようだった。
ぼくは、とても寒気を感じて、ブルブル震えだした。幼い子供の傘からは、たくさんのしずくが、ポタポタと落ちている。
ぼくは思ったーー
(ああ、いつものやつか……)
「ごめん。なんでもないわ。おじさん、これぐらいでええ?」
 と、原稿を持ち上げて見せると、
「ありがとう。ほんと、あんた絵が上手いな。漫画家になったらええ」
「うん、ありがとう」
 そして、西君の両親は、部屋の中にいる傘を差した子供の横を通り、工場に戻っていった。
「ゴロ、ありがとう。今、飲み物持ってくるわ」
 西君も部屋を出ていった。
 ぼくは、傘を差した子供とふたりっきりになった。じっと睨み合った末、
「どうしたの?」
 と、つい聞いてしまった。すると、その子は片手で庭を指をさした。その手は泥まみれ。よく見ると靴も履いていなくて、足も泥んこだった。
 ぼくは指さす方を見て、もう一度視線を戻すと、その子は、今度は頭からドロドロになって、そのまま、スウッと消えてしまった。
 するといきなり、
「ゴロ! ゴロ!」
 という声にびっくり。
「どうした、ゴロ。さっきから何度も呼んどるのに」
 いつの間にか西君が、麦茶を持ってきて、目の前にいたのだ。
「西君。弟いる?」
「いるよ、妹も」
「弟さんに、なんかあった?」
「なんにもあらへんよ。変なこといわんといて」
「ほんなら、庭に、何かある?」
「鉄くずや、資材があるけど」
「他には?」
「お母ちゃんが花植えとる。その横に、リキのお墓かな」
「リキって?」
「秋田犬のリキや。すごう可愛がっとったけど、春ごろに死んでな」
「ちょっと見にいこか」
「雨、降っとるげ」
「ええから行こ」
すぐにふたりで傘を差して庭に出た。鉄くずや資材の山で見えなかったが、確かに庭の端が、花壇になっていた。そして、その横には、柿の木が生えていて……
「あそこがリキの墓で……あっ、なんやこれ!」
 近づいてみると、なんと、リキの墓といって西君が指さしたところは、ボコッと大きく窪んで、少し雨水が溜まっていた。
「なんで!?」
「わからんへん。ほんでも……ぼくの傘、〝貸したげる〟」
 じつはそのとき、ぼくの目の前には、あの男の子が傘も持たず、泥んこでその水の溜まった凹みに、立っていたのだ。
 ぼくは自分の傘を凹みの上に置いた。男の子は「ワンっ」と鳴いて消えた。
「あれっ、ゴロ、今『ワンっ』て聞こえへなんだ!」
「うん。聞こえた。リキやないかな」
 それからばらくして、梅雨も明けたころ。部活の終わりに着替えをしていると、西君が、
「ゴロ。ありがとな」
「えっ、なにが?」
「あれからな、リキの墓、盛り土してな、しっかり踏み固めて、お父ちゃんが石置いたんや。お父ちゃんの話では、土に埋めたリキの身体が土に返ったんやと。ほんで雨が染みて、リキの身体の分だけ、土が落ちたんやと」
「ああ、それで泥んこやったんやな」
「泥んこ? なんや、それ。……ほんでな。夕べ、おれの夢にリキが出てきたんや。リキ、嬉しそうにな、尻尾ふって飛びついてきて、ペロペロ顔を舐めるんやて。ほしてな、耳元で、『ゴロちゃんに、傘ありがとういっといて』って」
「なんや。そんなことか」
「ほんでな、今朝、玄関のところの傘立てにあったんや。これ、あのときのゴロの傘」
 それは、柄のところが土にまみれていて、布のところには、いくつもの犬の足跡がついていた。

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