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神話であり歴史書である「旧約聖書」の記述を”史実”として裏付ける遺物が発見された。エルサレム旧市街で、「エレミヤ書」の登場人物を記す粘土石が見つかったのだ。
旧約聖書にある『エレミヤ書』が史実であることを証明する遺物が、古都エルサレムの旧市街にある遺跡「ダビデの町」から発見された。
『エレミヤ書』とは、旧約聖書における3大預言書の1つであり、ユダ王国の滅亡とバビロン捕囚という激動の時代を書き記したもの。研究者らは聖書に登場するユダ王国の存在を示す証拠だとしてさらなる調査を進めている。
発見されたのは約2600年前の印章が押された「ブラ」という直径1センチほどの粘土石。ここに『シュレムアの子ユカル(エフカル)』という名前が記されていたことが明らかになった。この『シュレムアの子ユカル』とは旧約聖書「エレミア書」38章1節に登場する、ユダ王国・ゼデキヤ王の廷臣とされる人物だ。ユカルは、繰り返しユダ王国の滅亡を預言するエレミヤの処刑を求めた4人の側近のうちの1人で、エレミヤを泥の溜まった古井戸へと突き落としたとされている。
今回発見されたブラはパピルスなど巻子の紐を止める際、署名代わりに自分の名を刻んだ印章を押す柔らかい粘土石で、ユカルは身分が高かったことから公式な文書に押印したものと考えられている。
また、この「ダビデの町」では、他にも『パシュフルの子ゲダルヤ』と刻まれたブラも発見されているのだが、このゲダルヤもまたゼデキヤ王の側近であり、ユカルとともにエレミヤの処刑を求めた人物だ。『エレミヤ書』の同じ聖句に出てくる人物のブラが、2つも同じ場所で出土したのはイスラエル考古学史上初めてだという。
ここで聖書考古学者たちが躍起になって調査を進めている「ダビデの町」について少し触れておこう。それは古都エルサレム旧市街南側に位置し、古代イスラエル12支族の統一王国としてダビデ王が建設した首都の都市遺跡だと考えられている。
旧約聖書によると古都エルサレムは、ダビデ王がモーセの十戒を納めた伝説の聖櫃/アーク「契約の箱」を運んだ場所であり、息子であるソロモン王統治のもと「契約の箱」を安置する第一神殿が建てられた聖都であった。だが、ソロモン王の死後、栄華を極めた王国は分裂。古都エルサレムは長らくダビデ王の系統であるユダ族が治めていたが、攻めてきたバビロニア人によって滅亡。城壁や市街は完全に破壊され、ソロモン時代の神殿からはありとあらゆる品が略奪されたのだ。
ダビデの町では、聖書のみならず考古学的にも貴重な遺物や遺構が次々と発見されているが、これまでの聖書考古学ではダビデ王やソロモン王の存在について確証が得られないとされていた。しかし、ユダ王国最後の王・ゼデキヤが登場する『エレミヤ書』が史実であることが証明できれば、古都エルサレムの歴史を解明する貴重な足掛かりになるだろう。
更なる調査の結果に期待したい。
(2021年8月16日記事を再編集)
遠野そら
UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。
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