路地裏好きを招くベトナム産サイコホラー『The Death | Thần Trùng』/藤川Q・ムー通

文=藤川Q

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    「ファミ通」とのコラボでムー的ゲームをお届け。ベトナムを舞台にしたレアゲームで、独特の恐怖を体感せよ!

    じわりとあふれる、ベトナム仏教的死生観

     ベトナムはハノイを舞台とした『The Death | Thần Trùng』は、ベトナム文化を下敷きとして丁寧に作りこまれたホラーゲーム。ハノイの街並みを再現した空間で、ウォーキング・シミュレーター風に探索を進めていくなかでも、ユニークで惹かれる点が、路地裏と狭小住宅という舞台装置だろう。

     ベトナム北部を思わせるような、どこかレトロな街並みを歩くなかで感じるのは、うすぼんやりとした言葉にできない気配。そんななかで目にするベトナムの土人形や、葬儀の風習。そうした小道具と狭い路地裏の空間が相まった、この地独特の死の気配がじわじわ感じられる。

     ゲーム作品としては非常に珍しい、臨済宗や浄土教の影響を感じさせる“ベトナム仏教”の文化や死生観を体感できる点こそ、本作の魅惑的な点。

     たった3人で制作されたインディーホラーである本作には、日本語翻訳も少々粗いものだけれど、しっかり実装されている。また、プレイフィールにもやや粗削りな点が目に付くものの、やはり本作が描くハノイの薄暗く不気味な路地裏で感じる、ベトナム仏教における日常と非日常、生と死の気配を体感的に感じられて“怖い”と思ってしまう作品は、他に類を見ない。

    本作のムー民度(★★★☆☆)
    https://store.steampowered.com/app/1726400/The_Death__Thn_Trng/

    Steam 配信中 620円(税込) © DUT Studio

    藤川Q

    ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。

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