フリーメーソンが創った国家「アメリカ」/世界ミステリー入門
自由と民主主義の国——アメリカ合衆国。さまざまな面で世界をリードしてきた大国だが、じつは建国から国家運営にいたるまで、その背後には「フリーメーソン」の存在があるという。この世界最大の秘密結社が、“理想
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今突然、インターネットが使えなくなったら? メールやSNS、ウェブサイトの利用はおろか、行政や医療などの社会インフラも停止を余儀なくされるだろう。世界の脆弱さを、国際政治の脅威として読む。
日本時間2020年12月14日、21時頃の話。いきなり冷水を浴びせかけられたような感覚に襲われる人たちが世界中にいたにちがいない。Googleのネットワークがダウンし、GメールやYouTubeをはじめとするさまざまなサービスへのアクセスが不可能になった。Googleのアカウントにアクセスすると「IDが見当たりません」というエラーメッセージが出るパターンも多かったようだ。この時は1時間ほどで復旧したが、12月16日の午前6時半にも同じような障害が発生している(ちなみにこの時は復旧まで3時間かかった)。
この一件の余韻が残る中、12月15日にはペンタゴンのコンピューターシステムが数回にわたってハッキングを受け、大量の機密情報を取り扱う内部ネットワークが一時的に緊急シャットダウンされていたことが明らかになっている。この措置は国土安全保障省の部局のひとつであるCISA(サイバー・インフラ安全保障局)によって定められた、国益を守るためのプロトコル(手順)に従ったものだった。
「Just the News」というサイトの2020年12月16日版に『ペンタゴンの機密情報コンピューターネットワークが緊急シャットダウン』という見出しの記事が掲載されている。対象となったのはSIPRNET(Secret Internet Protocol Router Network=秘密インターネットプロトコール・ルーターネットワーク)だ。トップシークレット級ではないにせよ、かなりデリケートな情報を扱うネットワークであることはまちがいない。
「ペンタゴンの秘密情報管理ネットワークSIPRNETが緊急シャットダウンされた事実を、複数の国防省関係者が認めた。稼働時間内でこうした措置が取られたことは今回が初めて。同様の措置を取った政府機関には国家安全保障省も含まれる。この一件の背景として、度重なるハッキングが挙げられる。職員に対しては、内部システムのソフトウェアアップデートという理由が示されたようだ。稼働不可能な状態は数時間にわたった」--と報じられている。
ペンタゴン内部も大騒ぎだったようだ。通常は何か月かに1回、メンテナンスと一緒に行われるものと認識されており、業務時間内に行われたことも初めてだったと伝えられている。
コロナ禍のさなかにある今、インターネットインフラの重要性は強調してもしきれない。
感染の抑え込みに成功したと認識されている台湾と、現時点で世界最高のワクチン接種率を達成しているイスラエルには、医療サービスのデジタル化に成功しているという共通点がある。そしてその背景には、揺るぐことがないインターネットインフラがある。
だからこそ、12月14日の一件の重要性は強く意識されるべきではないだろうか。Googleのネットワークのダウン。そしてその直後に起きたアメリカ政府機関の内部システムのシャットダウン。ふたつの出来事に関連性はないのだろうか。
さまざまな分野でネットへの依存度が日に日に高まっているーーいや、依存せざるを得なくなっているーー中で、ネットインフラの根幹部が不安定になったら何が起きるか。
インターネットバンキングを利用している人は多いはずだ。振り込みや支払いができなくなり、経済では血流に例えられることが多いお金の循環が著しく滞る。ステイホームが声高に叫ばれ、他者との物理的つながりが希薄になりがちな現状では、SNSが外界との接点として大きな役割を果たしている。ネットインフラが崩壊すれば、他者とのつながりが完全に断たれてしまう人が続出することは想像に難くない。
オンラインミーティングツールが仕事や学びの現場になりつつあるトレンドは、これから先も加速していくだろう。SNSライクな使い方をしている人も少なくないはずだ。こうしたサービスに不具合が起きたら、学びや経済活動に大きな影響が出ることは明らかだ。物理的なコミュニケーションが十分ではない今、デジタルな手法でのコミュニケーションまで断たれてしまったら、心まで蝕まれてしまう。
また、デジタル技術が平時の医療サービス体制においても不可欠な要素であることは言うまでもない。カルテなどの患者の個人情報のやりとりから、お薬手帳アプリもある患者の個人データ、さらには救急搬送などをスムーズに進めるため病院データの管理など、かなりのウェイトを占めるはずだ。
現状を見てみよう。日本では全国の保険事務所や医療機関がオーバーロード/オーバーワーク状態になっていて、PCR検査から入院までの流れがスムーズに機能していない。緊急事態宣言下の11都府県では、1万人以上もの感染者が入院・宿泊調整中というカテゴリーに分類されたまま自宅で待機している。
アメリカに目を転じれば、ワクチンの流通が滞っている。ニューヨーク州のクオモ知事は、1月22日現在でワクチンの在庫がほぼ底をついた事実を明らかにした。他の州でもスケジュールに遅れが出て、予約をしていても接種が終わるまで8時間かかるという話も珍しくない。ワクチンの分配からロジスティクス、そして現場スタッフのマンパワーの配置まで、デジタル情報はすべての側面で関わらざるを得なくなっている。そんな中世界レベルでネットワークのダウンが起きたとしたら、被害の大きさは想像もできない。
コンピューターネットワークの大規模ダウンを想定したワーストケース・シナリオに関する議論はかなり前から始められ、深められているのが事実だ。2020年度アメリカ大統領選挙のテレビ討論会が行われる寸前のタイミングで、主流派メディアにおいて“ダーク・ウィンター”という言葉が使われ始めた。最初の頃は「トランプ政権があと4年続く憂鬱感」を表現するものと理解されていたが、本当の意味はまったく違うし、想像よりはるかに重い。世界規模のネットワーク崩壊によるパニックとその後の状況を包括的に意味する言葉なのだ。
2020年7月8日に開催された世界経済フォーラムでは“デジタルパンデミック”という言葉が議題として取り上げられ、コロナ禍よりも深刻な現象というコンセンサスの下に話が進められたという。最高情報責任者ジェレミー・ユルゲンス氏は、次のような発言をしている。
「今後、さらなる危機が訪れると思っている。その影響は新型コロナウイルスのパンデミックよりもはるかに早く訪れ、はるかに大きくなるだろう。経済的・社会的な意味合いも重い」
この発言を受け、世界経済フォーラム創設者のクラウス・シュワブ氏は次のように述べた。
「ここにいる人間すべてが理解していることだろうが、大規模なサイバー攻撃が各国の電力供給や交通網、医療サービス、そして社会全体の動きを止めるという恐ろしいシナリオがある。しかしどうだろう。理解はしているが十分な意識を向けていないというのが実情ではないだろうか。大規模サイバー攻撃によって、新型コロナウイルスがかすむような甚大な影響がもたらされる」
2021年1月6日、ワシントンDCの連邦議会にトランプ大統領支持派の群衆が乱入するという事件が起きた。アメリカは内戦勃発の瀬戸際まで追い詰められたと言えるだろう。国民が完全に分断されたまま船出したバイデン政権が対峙しなければならない敵は多い。ペンタゴンの事件を出すまでもなく、アメリカにサイバー戦争を仕掛けようともくろむ国家は決して少なくないはずだ。
サイバー戦争を仕掛ける側として、すっかり冷え切った関係になってしまった中国がリストの筆頭に挙げられることは間違いない。アメリカ国内のインターネットインフラに攻撃を仕掛ける一方で、トランプ政権を快く思わない勢力に対して資金提供を行っていたという話もある。
世界経済フォーラムでも明言されたデジタルパンデミックが現実のものとなるのは時間の問題かもしれない。一連の出来事の禍々しいさきがけとなるのがGoogleのシステム障害と、それに続くペンタゴンへのサイバー攻撃だったと指摘する声も根強いのだが、こうした見方には信憑性があるのだろうか。
Googleほどの規模を誇るネットワークにおいて、すべてのサービスが一気に停止する状態は考えにくい。ユーザーは世界中に点在する複数のサーバーでカバーされているからだ。
だからこそ、というべきだろうか。ある程度まで仕組みを知っている人々にとって、世界規模のダウンはパニック以外の何物でもなかった。グーグル側も大規模な問題が起きた事実を認め、その原因を「ストレージクォータ」の問題であるとした。ストレージクォータというのは、複数のユーザーが共用するコンピューターでユーザーごとに割り当てられたメモリーの限度を意味する。
GメールとYouTubeでユーザー数が35億人に上るという事実を考えれば、今回の事件によってもたらされたインパクトは計り知れない。スマートフォンの普及によって、ネットに接続された状態の端末の数も爆発的に増加している。世界規模のネットワーク全体を基準にして見れば、コンピューターを媒体とした活動においては個人ユーザーであれ企業ユーザーであれ、そして政府機関であれ、いずれも個々の細胞程度の存在でしかない。
物理的制約を超えた業態の「民間企業の内部インフラで起きた不具合」が世界を揺るがすという事態を誰が想像できただろうか。ただし、それほど影響を受けなかった国家があることも事実だ。自由世界では名実ともにトップランク企業であるGoogle社だが、アメリカに対抗する国家の代表格である中国やロシアにはその存在がどのように映っているのだろうか。
中国本土で「Google.cn」のサービスが開始されたのは2006年だった。ところが、同社は4年後の2010年に撤退し、サービスの拠点を香港に移している。世界最大のマーケットである中国と世界最大のサーチエンジンとして知られるGoogle社。お互いが望むものを提供し合う相思相愛の関係が築かれるはずだったが、わずか4年で暗礁に乗り上げてしまった。
その理由はもちろん、中国の言論統制とGoogle社の自由主義的な企業姿勢の相性の悪さだ。検索結果に特定のサイトを表示しないためのスクリーニングを中国共産党に強要されたGoogleは、中国で事業を継続していく意味に疑問を抱いたにちがいない。中国政府も御しやすいとは言い難いGoogleの扱いに苦慮し始め、自前のサーチエンジンBAIDUの大々的なプロモーションを始めた。ユーザーは制約に縛られて身動きできなくなったGoogleに魅力を感じなくなり、結局BAIDUに乗り換えざるを得なかったというのが実情ではなかったか。
一方、ロシア政府のGoogleに対する当たりはさらに露骨だ。Google側にブラックリストが渡され、そこに掲載されているサイトを検索結果に表示しないよう強い口調で勧告が行われているという。Roskomnadzor(ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁)の要求は強く、ブラックリストは毎日届くようだ。
Roskomnadzorの内部情報提供者が『ヴェドモスチ』紙に語ったところによれば、検索結果から70%が削除されてしまう場合もあるらしい。これではとてもサーチエンジンとは呼べない。こうした厳しい締め付けが始まったのは2017年だった。サービスは事実上存在しているものの、西側諸国における性質からは程遠いというのが事実のようだ。
2020年12月、トランプ政権は大統領選挙の前後にアメリカ財務省と商務省に対してサイバー攻撃が仕向けられ、これがロシア主導だった可能性が高いという旨の発表を行った。調査に当たったタスクチームによれば、過去5年間においてもっとも大規模で最も洗練された手法が用いられていたという。この事件に関する一連の報道でほのめかされたのは、大統領選挙へのロシアの介入だ。トランプ元大統領の負け犬の遠吠えと受け取る声も聞こえたが、事実は事実として認識しておくのがフェアな姿勢だと思う。
Googleを媒体としたサイバースペース闘争で、中国とロシアが完全な形で共闘しているとは思い難い。しかし、接点が全くないとは言えないのではないだろうか。技術提携や資金提供の存在も否めないという話もある。世界経済フォーラムでの声明とダーク・ウィンターとの関連性も、ほのかではあるが見え隠れしている気がしてならない。点としての事象がきれいな一本の線になる。ならば、デジタルパンデミックとダーク・ウィンターは表裏一体の形でとらえておくべきだろう。
コロナ禍の中でクローズアップされることになった二つのキーワード。いずれの現象も、まだ始まったばかりなのかもしれない。今われわれができるのは、コロナ禍よりも大きなインパクトをもたらす可能性がある出来事に対し意識を高め、ものごとの成り行きを注視していくことではないだろうか。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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