「つちのこ神社」に祀られるご神体は…? 岐阜県東白川村に潜む怪蛇つちへんびの謎
毎年の「つちのこ捜索」が話題になる東白川村。当地にある「つちのこ神社」には、まさに怪蛇が眠っているという……。
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イエティ伝説で知られるヒマラヤ山脈のふもと、ブータンには「ミゲ」と呼ばれる雪男がいるというーー。しかも、その雪男は3種類もいる!? 世界中を旅した筆者が、現地でその正体を探った。
北はチベット自治区、南はインドに接し、世界最高峰のヒマラヤ山脈のふもとに位置する国、ブータン。国土の40パーセント以上が標高3000メートル以上に立地するこの国では、かねてより「ミゲ」と呼ばれる雪男の目撃情報が多数確認されてきた。
ヒマラヤ地帯のUMA、雪男としてはイエティが有名だ。その最古の記録は1832年イギリスのネパール公使ホジソンのヒマラヤ研究にイエティの名が出てくる。その後も学術調査は何度も行われ、2011年にナショナルジオグラフィック社が行った科学的調査はDVD『雪男伝説を追え!!』にまとめられている。
だが、これらの先行研究だけでは、ブータンのミゲの実体はわからない。以前からブータンの雪男伝説に興味を持っていた著者は、2016年7月、ついに現地へ飛んだ。
今回は現地旅行代理店と事前に綿密な打ち合わせを重ね、何十人もの貴重な証言を得ることができた。ここではブータンの雪男解明につながる4名の証言を取り上げ、調査の足がかりとしたい。
まず、最初に向かったのはブータン中央部の秘境、標高約3000メートルのポプジカだ。オグロヅルの飛来地としても知られ、人口は数千人という小さな村である。ここで訪ねた人物は、8歳から修行を積み、13歳でお寺に入ったという占い師、クンブ氏である。47歳となった現在は農家と大工を兼業しながら、村人が病気のときは占いもしている。彼にミゲの話を聞いた。
「私は見たことがないが、父から話を聞いたことがある。ミゲは身長が天井よりも大きい。だいたい2メートルから2.5メートルほどだ。顔は丸くて、オランウータンに似ている。人間と同じく二足歩行をするが、足の踵は逆についているんだ」
話はそれだけでは終わらなかった。
「実はミゲ以外にもミゲムというのがいる。そちらは雪女だ」
日本の雪女のイメージに引きずられないよう、雪男のメスといい換えよう。ミゲムはミゲより小柄で、人間と同じくらい。そして驚いたことに、ミゲムは人間と結婚をしたという。
「結婚をした男は猟師をしていて、山で女(雪男のメス)と出会った。ふたりは一緒に暮らし子どももできたそうだ。ミゲムは特に毛深くもなく、身長は人間と同じぐらいだった」
日本の昔話でも、蛇や犬などと結婚をする異類婚の話はある。だが、ブータンにおける雪男のメスの話には悲劇的な別れはないようだ。さらにクンブ氏は衝撃的な情報を口走った。
「ミゲたちの仲間にミチュンもいる。そのミイラはこの村の寺にある……」
ミチュン? それはミゲムよりさらに小さく、人間の子どもほどの大きさだという。寺で保管されているミイラは外国人には見せられないというが、絶対に見てみたい。何度も頼みこんだ結果、しぶしぶクンブ氏はお寺の場所を教えてくれた。
翌日、著者はガイドとともにガンテサンガチョリンと呼ばれる寺を訪れた。相手をしてくれたのは20代の小僧さんである。
「たしかにお寺の中にミチュンのミイラはあります。でも外国人には見せてはいけないのです」
一般的にブータンでは、寺の本堂の見学はできるが内部の撮影はできない。しかも、ミチュンのミイラは本堂ではなく、特別に鍵のかかった社殿の奥深い部屋にあるそうだ。筆者は何度も、見せてもらえないかと頼んでみると、首を振るばかりの小僧に代わり、年上の先輩が話を聞いてくれた。
「わかりました。私が鍵を探しましょう。本当は住職の許可がないといけないのですが、これも仏の導きです」
30分ほど経ち、彼が手招きをしてくれた。薄暗い本堂の階段を昇ると、真っ暗な2階の奥の部屋に案内された。小僧たちが窓を開けてくれる。曇り空の光が部屋に差し込み、目的のミチュンのミイラを照らしだした。
それは、なんとも奇妙な物体だった。
写真は撮影できなかったので、スケッチを見てほしい。たしかに人の形をしたミイラである。大きさは人間の2、3歳児、身長は60~70センチほどだ。ただし長年の保存で縮んでいるそうで、もともとミチュンは身長1メートルから1メートル40センチほどの人型の生物だという。
「お寺に伝わる話としては、およそ300~400年前に悪さをしたミチュンを捕まえたそうです」
そこには、大きな魚(マスの仲間)、ヒョウ、トラ、クマ、イノシシの頭の剥製もあったが、剥いだ皮を乾かしたような状態で、保存状態はそれほどよくない。だが、ミチュンのミイラは手足も残っており、黒光りしている。小僧は話を続けた。
「ミチュンは脇の下に玉があり、もし人間がミチュンを捕まえて、その玉の能力を使うと他の人はみんないうことを聞いてしまうんです。邪悪な存在ですよ」
昔話と現実が混ざっているかのようだ。だが、目の前に雪男の子供とされるミイラは確かにある。
いったいこれはなんなのだろう?
著者は混乱しつつも、秘宝を見せてくれたお寺に礼を尽くすため、ルンタ(風の馬を意味する仏教で使用する旗)を奉納し、雪男調査の成功を祈願してもらった。
さらなるミゲ情報を集めるため、著者は古都プナカの近くの村でも聞き込みを続けた。有力な証言をしてくれたのは農家のナムゲ氏だ。
「私はミゲの足跡と草むらに寝た跡を見たことがある。それに知り合いのお坊さんも20年ほど前にミゲ退治をした。お坊さんによるとミゲの大きさは人間よりひと回り大きいぐらいだ」
40代後半の朴訥とした農夫は自信満々に切りだした。足跡を見た場所を聞くとこの村から歩いて1日半はかかる峠の中だという。
「ミゲの背中には穴が開いている。ヤツらは人間の真似をするんだが、こんな話がある。ある男がミゲに困らされていた。そこでミゲをやっつけるために、火をつけた松ヤニを背負って山の斜面を駆け下りた。ミゲがそれを見て真似をしたところ、背中の穴に火が入ってしまって、全身大火傷をして死んでしまった」
背中に穴があるとは、新情報だ。さらにミゲは人間を食べるらしく、かなり恐れられている。
「もしミゲを見たら、運がひどく落ちてしまう。すると悪いことに見舞われる。たとえば病気で亡くなったり、一家全員が死に絶えてしまったり……」
怪物を見ると祟られる話は多いが、ミゲも一緒なのだろうか。
別の農家の女性はミゲのいい話もしてくれた。
「お米は大事なので農家は7種類も育てているの。収穫のときにその日のうちに終わらない分は、ミゲが刈っておいてくれるっていう言い伝えを母から聞いたことがあるわ」
ブータンは一部を除くとほとんど米を主食にして、米作りも盛んだ。刈り入れの時期はどこも猫の手を借りるほど忙しいから、ミゲの助けは嬉だろう。しかし、この話に女性の夫が割って入る。
「いや、私の地方ではミゲが恐ろしいから、これ以上の悪さをしないようにわざと刈り入れずに稲を残しておく風習がある。そもそもお前が生まれたこの土地はおかしな風習ばかりだよ」
女系社会のブータンでは婿入りが普通のことだ。どうやら、ミゲを取り巻く文化も土地柄によるらしい。
翌日、ナムゲ氏は著者を送りがてら、北の山を指さした。
「この山を越えて、次の山を越えたところにミゲの足跡があるんだ」
農夫のまなざしは真剣であった。
最後に遊牧民のドゥゲ氏もミゲに関する話をしてくれた。
「私の家は、代々続く遊牧民の家系で、チベットとブータンを行き来しています。私の祖父はミゲを見たことがあるそうです。でも、最近の若い人はミゲの話をしなくなりましたね」
冬に高度3700メートル、夏に4900メートル以上の山でヤクを遊牧させるというドゥゲさんは寂しげな目をしながら昔の記憶を思い起こしてくれた。彼の遊牧民仲間もミゲを見たことがあるらしいが、40年以上前の話だという。
「ここパロのジツフ村から歩いて5日間はかかるラナ山とドトラ山の間にミゲが住んでいました。体長は2メートルぐらい。指は4本と聞いています。私も山でミゲの毛を見たことがあるんです。茶色で8センチぐらいあって、ほかのどんな動物にも似ていなかった。私の仲間のドンチュは、私にミゲを見たという話をした後、仲間内にウワサが広まり、やはり病気になって亡くなってしまいました」
現地でミゲ(雪男)の話を聞く前は、ブータンに仏教が伝わる以前からの民間信仰のようなものではないかと思っていた。しかし、伝説・民話の類いにしてはリアリティーがある。山岳地方に住む少数民族の可能性も考えたが、ブータンでは、遊牧民や少数民族がわりと一般的で、過去から現在にいたるまで一緒に社会を形成している。ひとつの民族だけが、怪物扱いされることはないだろう。
毛の生えた大男や人間と同じ大きさの女、さらに人間と結婚したという話――。実際、人間と対面した雪男は存在するはずだ。
考え合わせると、ネアンデルタール人と近縁で、体の大きさもそう変わらないとされるデニソワ人が思い浮かんだ。デニソワ人の歯はロシアのアルタイ山脈で発見されたが、ブータンとデニソワ洞窟は約800キロしか離れていない。チベット人の高地順応能力はデニソワ人からもたらされたという論文も発表されているが、実はブータンの人口の約8割はチベット系民族なのだ。となると、ブータンの雪男は、デニソワ人の生き残りなのではないだろうか。
ブータンの鎖国状態は1971年まで続いていた。つまり45年ほど前までは、ほとんど外国人が足を踏み入れたことのない未知の領域であったのだ。現在では、文化と自然環境を守りつつも、観光客の人数制限も撤廃された。これから各国の研究者が現地に入り、ブータンの雪男の真実が解明されることを願ってやまない。
(ムー 2016年11月号掲載)
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