奇妙なゆえに信じたい! 妖怪や病や死を招く5つの迷信・俗信/妖怪補遺々々
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京都の鬼門を守る比叡山(ひえいざん)。その山中に、3つの結界石が置かれた、奇妙な場所がある。遠い昔、最澄が魔物を倒し、地中に封じこめたとされるこの場所は、はたしてどのようなところなのだろうか。
比叡山の一角に“狩籠(かりごめ)の丘”と呼ばれている場所がある。
比叡山は根本中堂を中心とする東塔(とうとう)、釈迦堂を中心とする西塔(さいとう)、そして円仁や良源(元三大師)ゆかりの横川(よかわ)の三塔地域から成るが、この狩籠の丘はやや横川寄りの西塔地域の外れにある。奥比叡ドライブウェイを走っていくと、道路脇に広場のような空間があり、そこが狩籠の丘だ。若干、不自然な気がするかもしれないが、関心がない人には、何の変哲もない景色に見えてくる。
しかし実際に降り立つと、たしかに異様な佇まいだ。高さ1メートルくらいの紡錘形の石が9メートルほどの間隔で3個、置かれている。その3つの石を結ぶと正三角形になる。おそらく結界になっているのだろう。その真ん中に立つと、何かを感じる。
インターネットの『日本伝承大鑑』というサイトによれば、火坂雅志『魔界都市・京都の謎─封印された闇の歴史を暴く』(PHP文庫/2000年)を読むと、比叡山の開祖・伝教大師最澄(767〜822年)が都の巽(南東)に潜んでいた魔物を狩り、艮(北東)に埋めた場所とのことだ。
そうした霊能力が最澄にあったのかどうかは筆者にはわからないが、彼が山林修行のため比叡山に登って草庵を結んだのが延暦4(785)年7月である。そしてその9年後には一乗止観堂(いちじょうしかんどう)を創建。そこが後に延暦寺根本中堂になっている。最澄には相当な霊的験力が備わっていたと思われるのだ。
山背(やましろ)が山城と改まり、造営中の新京が平安京と命名されたのが延暦13(794)年11月のことである。狩籠に封印されたのが鬼なのか、それとも別の魔物なのか――それらは今も謎に包まれたままだ。
だが、よく知られるように、平安京は怨霊や物の怪、祟神(たたりがみ)などの魑魅魍魎が跋扈する魔界都市だった。最澄が叡山に草庵を結んだ年、桓武天皇は弟で皇太子の早良(さわら)親王を廃し、廃太子は淡路島へ流される途中で没するという事件が起こっている。
この事件が象徴するように、造営中の平安京にはその名に反するかのごとく、どす黒い怨念が渦巻いていた。
狩籠という地名を聞いて筆者が想ったのは、最澄の好敵手の弘法大師空海が高野山を開いたときに出迎えたという狩場(かりば)明神のことである。
次に想ったのは、三津首広野(みつのおびとひろの)という最澄の俗名だ。三津首は『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』には見えないが、後漢の孝獻帝(こうけんてい)の末裔を名乗る諸蕃系の一族で、その氏(うじ)の名は近江国滋賀郡古市郷の、現在の滋賀県大津市唐崎1丁目から下阪本6丁目にかけての、琵琶湖に沿った戸津・今津・志津の三津浜に由来する。 次に想ったのは、三津首広野(みつのおびとひろの)という最澄の俗名だ。三津首は『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』には見えないが、後漢の孝獻帝(こうけんてい)の末裔を名乗る諸蕃系の一族で、その氏(うじ)の名は近江国滋賀郡古市郷の、現在の滋賀県大津市唐崎1丁目から下阪本6丁目にかけての、琵琶湖に沿った戸津・今津・志津の三津浜に由来する。
だが、ここで穿った見方をすれば、狩籠の地に封印されたのは3体の首(三つ首)ではなかったのか。あるいは、最澄出自の三津首は秦氏系の可能性もある。そうなると京都市右京区太秦(うずまさ)の式内「山城国葛野郡 木嶋坐天照御魂(このしまにますあまてるみたま)神社〔名神大[みょうじんだい]。月次(つきなみ)・新嘗(にひなめ)〕」(蚕の社)との関係も彷彿としてくる。3つの石は同社にある三柱鳥居の礎石だったかもしれない。
狩籠という地名を初めて耳にしたとき、筆者は籠目(あるいは目籠)を想起した。一つ目系の妖怪は目のたくさんある籠を怖がるという伝承があるが、比叡山には一眼一足法師もいる。しかし、カゴメというと籠の中の鳥だ。ここから籠この神社や上賀茂・下鴨神社の神々とのつながりも見えてくる。
狩籠の周辺は滋賀県と京都府、すなわち近江国と山城国が非常に複雑に入り組んだ境になっている。まさに、サカイ(坂も同源)を守護する、霊的スポットの「サカ本」なのかもしれない。
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