ヘルメスの杖とカドゥケウス/秘教シンボル事典
占術や魔術、神智学で用いられるシンボルを解説。今回は、ふたつの原質による均衡と和合を示す「カドゥケウス」です。
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目下流行の「ルノルマン」と名前だけ似ている「グランジュルノルマン」カード。19世紀フランスという激動の時代に構成されたシンボル群は、現代日本の複雑な人生を占うのに適している。日本でほぼ唯一の「グランジュ」使い、赤魔導士Bijouがその世界を解説する。
占い用カードデッキ「グランジュルノルマン」(以下グランジュ)は、伝説の占い師、マドモワゼル・ルノルマン(Anne-Marie Adélaïde , [1772-1843])の没後1845年に彼女の弟子によって作られた、といわれています。ルノルマンの名はあれど、本人とは直接の関係はありません。
グランジュが発売された1845年はフランス革命、七月革命を経て、度重なる飢饉がフランス全土を襲った激動の最中でした。その後も二月革命からの憲君主制、共和制、君主制を経て、ようやく1870年ごろから落ち着きをみせます。当時のフランスは、ギリシャ神話、ヘレニズム文化に色濃く影響されており、グランジュも例外なくこうした思想が組み込まれています。

カードをご覧になるとわかると思いますが、所狭しと描かれた意匠の数々 実は、それぞれに意味があります。
つまり、1枚のカードに7~8種のイラストにそれぞれ独立した意味があり、カードの一枚引き(ワン・オラクル)では吉凶混合になることがほとんどです。
さらに実際の占いでは、複数枚並べて隣り合った、または対角にあるイラストをつなげて読んでいく……など、少し面倒な占術のためか、まったくもってマイナーであり、解説本に至っては本家フランス語版とドイツ語版しか発売されていないというありさま。
現在でもフランスの占い師さんは使っていると聞きますが、こと日本においてはよっぽどの愛好家でなければあまり手を出さないタイプの代物です。
また、タロットや「プチルノルマン」カードは様々なイラストレーターがオリジナルの絵で発売し、日々新しいカードが生まれていますが、グランジュに関しては発売当初のただ一種類のみです。

中央部のメインイラストには、主にギリシア神話のシーンが描かれ、物語に思いをはせることができるでしょう……と、言いたいところですが……。今後ご紹介していくと思いますがなんたってこの絵がどれもゆるい! ゆるすぎてただただ笑えるものも多く、なんなら大喜利が始まりそうな勢いのあるイラストばかりなのです。
誤解されそうな説明になりましたが、もちろん私は大好きですし、運命すら感じています。
※プチルノルマンカード(以下ルノルマン)は日本でもブームがきつつあり、諸先生方の出された本もわかりやすく大変楽しく使えて奥深い占いカードです。実はマドモワゼル・ルノルマンとは無関係のドイツ生まれ。
グランジュルノルマンのカードは全部で54枚(内2枚は人物カード)。同じエピソードでも順番通りにも時系列にもなっておらず、スートをまたいで登場したりと自由な仕上がりになっております。
大分類として、
【金羊毛革(ゴールデンフリース)】……貿易・ビジネス関連の6枚
【トロイア戦争】……弱肉強食を読み解く9枚
【予想外】……不測の事態を示す19枚
【閉ざされた化学】……恋愛・結婚に関する7枚
【時間の秩序】……12星座を表す12枚
※クラブの9のみ、金羊毛革と時間の秩序の両方に分類
これを踏まえてテーマや質問をピンポイントに絞って占うことも可能です。

多様なシンボルを含みますので、技術を要しますが、一方では1つのデッキで7~8種のオラクルカードが使える、様々なスプレッド(並べ方)ができる、示される回答が具体的といったメリットもたくさんある稀有なカードデッキといえます。
正直、本当にマドモワゼル・ルノルマンの弟子が考案したのか、誰がパリで売り出したのか、それすらもわかっていないことが多く、謎に満ちたデッキではありますが、当時のフランスの風を感じつつ、ちょっとゆるくて愛嬌のあるイラストに埋め尽くされたグランジュの世界はとても魅力的です。
一枚ずつに秘められた物語と多層のシンボルは、複雑な現代社会を読み解くことにも役立ちます。


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