盲目の大予言者ババ・ヴァンガの謎/MUTube&特集紹介  2025年8月号

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    アドルフ・ヒトラーも心酔した驚異の予知能力の正体を三上編集長がMUTubeで解説。

    大予言者ヴァンガの真の姿

     今年1月、本稿共著者のひとり山本里佳に、ブルガリアの作家ジェニー・コスタディノワから、170枚に及ぶブルガリア語の原稿が送られてきた。内容は、日本の読者向けにババ・ヴァンガの予言をまとめたものである。
     コスタディノワはこれまでにも『予言者ヴァンガ』など、ヴァンガの伝記やその予言に関する著書を何冊か著しているヴァンガ研究家でもある。その彼女が今回原稿を送ってくれたのは、昨年山本がブルガリアを訪れた際の約束があったからだ。
     ババ・ヴァンガことヴァンゲリア・ディミトローヴァは、今や世界中に知られたブルガリアの予言者で、「バルカンのノストラダムス」という異名をとっている。日本でもヴァンガの予言と称するものが大量にネットにあふれており、時折雑誌やテレビでも特集される。しかしそうした予言のほとんどは、実際にヴァンガ本人が語ったものかどうか不明なものばかりだ。
     たとえばヴァンガは、スターリンの死や9・11同時多発テロ事件を予言したといわれることもあるが、本場の研究家コスタディノワによれば、ヴァンガがこれらの事件を予言した事実は確認できないそうだ。そして本当のヴァンガの予言は、ブルガリアのヴァンガ財団をはじめ、生前ヴァンガと親しかった人物にのみ伝えられている。
     しかも現在日本のネットやメディアにおける、センセーショナルで面白おかしい取りあげ方は、ヴァンガについて、何やら無気味な予言をいくつも残した、なんとなく「怪しい人物」といった印象を拡大させているのではないだろうか。
     ブルガリアで長く暮らし、生前のヴァンガと近かった人たちを何人も知る山本は、かねてより日本での誤ったイメージを訂正し、ヴァンガの真の姿を伝えたいと願っていた。
     そこで昨年ブルガリアを再訪した際にヴァンガ財団を訪れ、財団が出版している関係書籍をひと揃い購入したい旨申し出たところ、紹介されたのがコスタディノワだった。
     彼女は、ブルガリアの首都ソフィアに「ドールズ」という人形博物館を開いており、山本は、やはり生前ヴァンガと親しかった新体操コーチのネシュカ・ロヴェヴァと一緒に「ドールズ」を訪ねた。話ははずみ、ふたりからはヴァンガに関して多くの話を聞くことができた。話を進めていくなかで、コスタディノワが日本の読者のため、これまで彼女が書いたヴァンガ関係の書籍の内容をわかりやすくまとめ、山本に送ってくれるという話になった。
     その約束の原稿が、今回送られてきたのだ。そこには、日本人の知らないヴァンガの予言がいくつもあった。すでに的中したものもあれば、これから先、人類が未来に遭遇する災厄を述べたと思われる予言もいくつもあった。

    国際紛争の勃発を次々と予言

     たとえば、次のようなものがある。
    「シリアの可哀そうな人々! 石に石を積み重ねても、ひとつもそこに残ることはないでしょう」
     この予言が何を意味するか、今となっては明白だろう。
     2011年初頭、チュニジアでは、国民がベン・アリ大統領の政策に抗議して立ちあがった。大規模な反政府デモはたちまち全土に広がり、事態を収拾できなくなったベン・アリ大統領は国外に脱出。このことは民衆の勝利として、「ジャスミン革命」と呼ばれた。
     いわゆる「アラブの春」の始まりである。
     このチュニジアの例に触発されたのか、反政府デモがエジプトやイエメン、ヨルダンなどでも発生した。そして秘密警察が生活の隅々まで目を光らせ、反政府活動など起こり得ないと思われていた独裁国家シリアでも、いくつもの反政府団体が姿を現した。強権的なシリア政府はイランやロシアの支援も得て、武力でこうした活動を抑えこもうとしたが、反政府勢力の側もしぶとく抵抗し、13年も続く内戦となった。
     この内戦では660万人のシリア人が難民となって国外に避難したばかりでなく、673万人が国内での避難を余儀なくされた。シリアの総人口は2022年推計で2156万人だから、国民の半数以上が難民となるという、近代史上例を見ない、恐るべき事態となった。
     2024年になって、シャーム解放戦線を中心とする反政府勢力が首都ダマスカスに迫り、アサド大統領がロシアに出国していちおう内戦は終結したが、アサド大統領の支持勢力はまだ一部に存在しており、事態は収拾したとはいいがたい。
     ヴァンガかこのシリアの惨状を予言したのは、1976年、シリア人男性と結婚している女性と会見したときである。当時のシリアは、先代のハーフィズ・アサド大統領の鉄の支配の下、アラブ諸国のなかでもむしろ治安のいい国と思われていた。
     女性との会見でヴァンガは突然、ひとり言のように前述の予言を何度も口走ったのだという。
     さらにいうと、ヴァンガによればこのシリアの状況は、新しい時代をもたらすきっかけになるというのだ。
     コスタディノワの原稿には、ほかにも日本人の知らない予言、日本や世界の未来に関する予言がある。
     以下の章では、ヴァンガという人物について紹介したうえで、この特殊な存在を受けいれてきたブルガリア独特の精神世界にも触れつつ、コスタディノヴァが伝えてきた予言、山本が現地で直接聞いた予言を紹介していこう。

    (文=羽仁礼+山本里佳)

    続きは本誌(電子版)で。

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    webムー編集部

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