魔都東京を浄化する技法「東京スピリチュアル・ロンダリング」/ムー民のためのブックガイド
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睡眠中、当たり前のように見る夢。たいていはたわいもない内容で、起床後すぐ忘れてしまうことも多いだろう。しかし、なかには不思議なメッセージ性をもち、見た人間の人生を大きく変える夢もある。夢に隠された秘密とはなんなのか? “未来記憶”までもが封じ込められた膨大なデータバンクが、神秘世界の扉を開く。
夢はだれしもが体験する最も身近な不思議現象であり、時空を遥かに超越した妖かしの神秘空間で、非日常かつ幻想的な事象が繰り広げられる。だが、すべての夢がファンタジックな幻影とはかぎらず、ときとして、現実世界に向けて鮮烈なメッセージを送ってくることがある。
夢に見たことが後日、ほとんどそのままの形で実現する「予知夢」、俗にいう「正夢」もそのひとつだ。
まずは歴史的大事件に関わる予知夢の事例をいくつか紹介しよう。
1865年4月のある夜、アメリカの第16代大統領エイブラハム・リンカーンがホワイトハウスの2階の一室で眠っていると、大勢の人が悲しげにすすり泣く声が聞こえてきた。不審に思って階下へ降りたが、人の姿はない。それでもすすり泣きの声は聞こえつづけており、部屋から部屋へと歩き回ってイーストルームをのぞくと、部屋の中央に棺が設置され、周りに警護の兵士が立っている。
「だれか死んだのかね?」と尋ねると、
「大統領閣下であります。暗殺されました」という答えが返ってきた。
人々のすすり泣く声がひときわ大きくなったところで、リンカーンは目が覚めた。
4月11日リンカーンはその夢の内容を、夫人と伝記作家で友人のウォード・ヒル・ラモンに語った。そして3日後の14日、ワシントンの劇場で観劇中、ヒットマンが放った凶弾を頭部に受け、翌15日、この世を去ったのである。
それだけではない。リンカーンは暗殺事件当日、ボディーガードのウィリアム・H・クルックに、3夜連続で自分が暗殺される夢を見た、とも話していたのだった。
こんな話もある。
1912年3月22日、イギリスの実業家コナー・ミドルトンは、ニューヨークで開かれる重要会議に参加するため、当時、世界最大の豪華客船として処女航海に出ようとしていたタイタニック号のファーストクラスを予約した。
ところが、出航の10日ほど前に不吉な夢を見た。大海原の真ん中で、巨船がキール(竜骨)を上にして転覆し、その周りの海面で大勢の乗客や乗員が助けを求めながら必死に泳ぎ回っている夢である。
タイタニック号は全長259.08メートル、最大幅28.19メートル、総トン数4万6328トン。船底には二重底を採用し、さらに16の防水隔壁が設置されており、完成と同時に不沈神話すら誕生していたほどの船だ。
ミドルトンはまさかと思ったが、次の夜もまた同じような夢を見たので、急遽、予約をキャンセルし、ニューヨーク行きを中止した。この決断が、彼に悲劇を回避させることになる。
4月10日、2218名の乗員・乗客を乗せたタイタニック号はイギリスのサウサンプトン港を予定通り出航。フランスのシェブール、アイルランドのクイーンズタウン(現コーヴ)に寄港したあと、最終目的地であるニューヨーク港へ針路を向けた。かくて迎えた4月14日午後11時40分、ニューファンドランド島沖合の会場で巨大氷山に衝突。乗員・乗客1513名(諸説あり)とともに海中に没したのである。
予知夢と同様に、神秘的な超常能力と関連付けざるをえない不可解な夢がある。「テレパシー夢」や「透視夢」がそれだ。
テレパシー夢は、いわゆる「虫の知らせ」のこと。出征して戦死した息子が夢枕に現れて別れの挨拶をしたとか、交通事故の夢を見たら身内の者が実際に交通事故死していt、といった類の夢だ。報告事例は無数といっていいほどにあるので、具体例の紹介は省略する。
一方の透視夢は、遠隔地の光景を視覚的に認識する夢のことだ。2例を紹介しよう。
1883年8月27日の夜、アメリカの「ボストン・グローブ」紙の記者エド・サムソンは、編集部の長椅子でうたた寝していたとき、インドネシア・ジャワ島のプラレイブ島が大噴火する夢を見た。
耳をつんざく大音響とともに巨大な火と煙の柱が立ち昇り、灼熱の溶岩流が山麓から海へと突っ走る。煮えたぎる海水。その海水に次々と飲み込まれて断末魔の呻き声をあげる住民。やがて島全体が吹き飛び、わずかに噴火口だけが海上に残った……。
目覚めたサムソンは夢で見た一部始終を書きとめ、そのまま机上に置いて帰宅した。その原稿が翌朝の同紙の一面トップを飾った。あまりの迫真の内容に、編集長が勘違いしてしまったのだ。
たがてサムソンが出社して事情が判明。同紙は謝罪広告の準備を始めた。だが、状況は急転する。サムソンが夢を見ていた27日早朝、ジャワ島に近いクラカタウ島の火山が大爆発していたのだ。
爆発によって島の半分は陥没して海面下に沈み、噴煙は高度70~80キロ、発生した津波の高さは30メートルにも達し、ジャワ島だけでおおよそ3万6000人が死亡するという有史以来最大規模の火山爆発だった。しかも、プラレイブ島はクラカタウ島の古称だったのである。
続けて、こんな例もある。
第1次世界大戦中の1915年5月1日、イギリスの作家でオックスフォード大学教授のイアン・ホルボーンはアメリカでの講演旅行を終え、豪華客船ルシタニア号に乗船してニューヨーク港から帰国の途に就いた。その航海中の5月7日、ホルボーンの妻マリオンは、自宅の安楽椅子でうたた寝をしているときに海難事故の夢を見た。
「私は大きな船に乗っていた。その船は危機な状態にあり、今にも沈没しそうに見えた。次々と救命ボートが下ろされ、人々は先を争って逃げ惑っていた。通りがかった若い船員に夫のことを尋ねると、『ホルボーンさんはすでに救命ボートに乗り移っておられます』という返事だった」
それとまったく同日の5月7日、ルシタニア号は南部アイルランド沖でドイツ海軍の潜水艦U-20の雷撃を受け、わずか18分で沈没。乗員・乗客約2000名のうち1198名が犠牲になった。だが、ホルボーンは救命ボートに乗り移って生還を果たしたのだった。
夢には未知なる智慧も封印されており、発明や発見、芸術的創作などにつながるインスピレーションの源泉になることがある。
一例をあげれば、ミシンの発明がある。
連続縫製ミシンの考案製作に没頭していたアメリカの機械工で時計工でもあったエリアス・ハウが最も悩んだのは、糸を通す針の穴だった。試行錯誤するが、どうしてもうまくいかない。
そんなおり、奇妙な夢を見た。
南海の孤島で先住民に追いかけられている夢で、先住民は槍を手にしている。恐怖にかられながらも、ハウの視線は槍の穂先に釘づけになった。すべての槍の穂先の先端近くに穴が開けられていたからである。
直後、ハウの脳裡に閃光が走った。それまでは縫い針と同様に針の根元に穴をあけていたのだが、発想を転換。針の先端近くに穴を開けることによって、連続縫製が可能になる「ミシンの発明」についに成功したのである。
ドイツの化学者フリードリヒ・アウグスト・ケクレによる「ベンゼン環」、俗にいう「亀の甲」の発見も、夢のなかに現れたビジョンにアイデアを得たものだった。
彼自身の回想によると――。
「眼前では、原子たちが目まぐるしく曲芸を演じていた。この種の夢は何度も見ていたので、そのなかから特別大きな原子の列を見分けることができた。その列は蛇のように身をくねらせ、絡み合いながら運動していた。と、突然、1匹の蛇が自分の尾をくわえて環状になり。あざけるかのようにぐるぐる旋回しはじめた。私は雷に打たれたかのように目覚めた。」
このウロボロス(尾を飲み込む蛇)の夢がヒントになり、6個の炭素原子が互いに手をつなぎながら環をつくっているベンゼン環の仕組みが解明されたのである。
芸術家たちの創作活動にも、夢は大きな影響をおよぼしている。具体例をあげる紙幅はないが、文学、音楽、絵画、映画などの分野で、夢から着想を得たとされるものは数かぎりなくあるのだ。
とまれ、夢が自然科学の研究対象とされるのは、脳波の測定が可能になった20世紀に入ってからで、脳波の研究によって睡眠は2種類に大別されることが判明した。
ひとつはデルタ波と呼ばれる波長の長い脳波が示される睡眠で、これを「ノンレム睡眠」という。もうひとつは「レム睡眠」で、波長の短いベータ波に似た脳波が示される睡眠をいう。体は眠っているが脳は半分目覚めている状態であり、私たちが夢を見るのはこのレム睡眠時である。
睡眠が2種類に大別され、レム睡眠時に夢を見ているという大脳生理学上の発見は画期的だったが、夢にはなおも未解明の謎がつきまとっており、核心部分に関して正確なことは現在もわかっていない。
そもそも人はなぜ夢を見るのか。夢はいったいどこから生まれてくるのか。夢はいったいどこから生まれてくるのか。
そんなことすら、いまだ謎のままなのだ。
この根源的な疑問に対してひとつの仮説を提示し、現代に通じる夢理論を展開した知の巨人がいる。オーストラリアの精神病理学者ジークムント・フロイトがその人であり、概略、次のような潜在意識関与説を唱えた。
――人の意識には顕在意識と潜在意識がある。潜在意識は普段は顕在意識の理性によって抑圧されていて表面には出てこない。だが、眠りに入って顕在意識が働かくなると、顕在意識が海面から浮かび上がる泡のように表面に姿を現す。それが夢である。夢が超現実的色彩を帯びるのは、潜在意識が原始本能の世界につながっているからである。
そういえば、潜在意識の活動は超常能力と深く関連している、としばしば指摘される。超能力者の多くはトランス状態に入ることによってパワーを最大限に発揮するし、瞑想や禅の修行によって超常能力を獲得したという人も少なくない。つまり。超能力者は一種のレム睡眠に入ることにより潜在意識を活性化させている、とも考えられるのだ。
フロイト自身は超常能力に対しては必ずしも肯定的ではなかったが、予知夢やテレパシー夢、透視夢など、超常能力との関連を想起せざるをえない夢は潜在意識の活動と関係がある、と考えたほうが納得しやすいではないか。
では、潜在意識とはどうゆうものなのか。フロイトは願望(欲望)であるとし、とくに抑圧される傾向の強い原始本能=性欲に注目した。ただし、それがストレートに夢に反映するとはかぎらない、とも説く。
夢見中のレム睡眠状態でも、潜在意識が完全に働きをやめることはない。ために、不道徳な願望は遮断されたり変形されたりして、願望とは直接的には結び付かない物体や風景、事件などに置き換えられて象徴的に夢のなかに現れる、というのである。
ただ、フロイトは性欲(願望)ですべての夢を説明しようとしたため、批判的見解を示す者も少なくない。その後の研究により、願望だけでなく、過去の記憶、不安、生理的欲求、肉艇的変調、外的刺激……などの夢の原因になることが明らかになったからである。
とはいえ、潜在意識が夢の情報源だとするフロイト学説はなおも有効性を失っていない。そしてその欠陥を補い、独自の壮大な夢理論を構築したのがスイスの心理学者カール・グスタフ・ユングだ。
――夢の根源である潜在意識には、個人の本能や体験だけではなく、太古の記憶ともいうべき集合的無意識世界も息づいており、そこには何万年、何十万年も前の先祖から受け継いできた経験の膨大な堆積がある。
もう少しわかりやすくいえば、祖先のあらゆる記憶を貯め込んだ巨大なデータバンクのようなものが存在し、睡眠中にそのデータバンクにアクセスする回路が開かれて情報が得られ、それが映像化されるのが夢である、というのだ。
そのデータバンクは、予言学にいう「アカシックレコード」と同様のものと理解すれはいい。だからこそ、予知夢やテレパシー夢、透視夢、発明・発見や芸術的創作につながる夢といった不思議現象も起こるのである。
現に、夢のなかで生じる超常能力に的を絞った研究結果の報告もある。有名なのは、アメリカの精神科医モンターギュ・ウルマンが1962~1978年に運営したマイモニデス夢研究室で行った実験だ。
被験者は脳波計や眼電位計などの測定器を装着して遮音室で眠る。被験者が夢見状態に入ったことを測定器で確認後、別室に待機していた人物が美術アートの絵葉書に描かれた絵柄のテレパシー送信を行う。絵葉書は多数のなかから無作為に選ばれ、どの絵柄が選ばれたかは実験終了時まで送信者しか知らない状態を維持する。10分後に被験者を覚醒させ、夢の内容を報告させて録音する。同じ絵柄の絵葉書を用い、この手順を1晩のうちに4~5回繰り返す。
翌朝、送信に使われた絵柄を含む8枚の絵葉書と録音テープが3人の独立した判定者に送られて判断後、総計処理される。
その結果、明らかな有意性が認められ、75パーセントもの高率で一致したケースもあったという。とくにイギリス人超能力者マルコム・ベセントを被験者とした実験では成功率が高く、彼は夢予知によってフランスの第18代大統領シャルル・ド・ゴールの死などを的中させたと報告されている。のちに、ウルマンは同実験の詳細をまとめた著書『ドリームテレパシー』を発表している。
いうなれば、夢は”未来記憶”までもが封じ込められた膨大なデータバンクにアクセスして超能力を発現させる手段であり、神秘世界への扉を開く鍵なのである。
(月刊ムー2017年3月号掲載)
藤島啓章
ライター。ムーにて基礎知識連載「世界ミステリー入門」などを担当
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