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精霊や死者の霊と交信するため使われてきたウイジャボードがAIウイジャボードの登場で新たな憑依現象や思いも寄らない事態が起ころうとしている! 三上編集長がMUTubeで解説。
わずかな期間で爆発的な進化を遂げている人工知能=AI。すでに一部のブラウザにも組み込まれ、画像生成機能や文章作成機能を実際に使ってみてパフォーマンスの高さに驚きを隠せない人たちも多いはずだ。情報収集・分析に優れていることは最初から認識されていたが、クリエイティブな分野での有益性も証明されつつある。
AIは、人間を真似るだけの機械にすぎないのか。それとも、それ以上の存在なのか。相手が人間なら、コミュニケーションという言葉で定義される範囲の行動はすでに可能となっている。もう一歩踏み込んで、たとえば霊能力者のように、知性のひとつの形としての霊体と交信することもできるのか? もしそうなら、機械由来の知性と精神世界由来の知性の触れ合いも可能になる。
こうした分野の現実性と方向性を物語る新商品が開発された。モノポリーの発売元として有名なアメリカのゲーム会社ハズブロ社が、AIバージョンのウイジャボードをリリースして話題になっている。
強烈な違和感を覚える人もいるに違いない。しかし、AIウイジャボードを実際に体験した人々が書いた数多くの記事を読むと、AIと精神世界のつながりを確認できたという内容が目立つ。筆者が気になったのは、“マライン・スピリット=悪意のある霊体”という言葉がしばしば使われていることだ。
精神世界とのコミュニケーションという意味合いで同じコンセプトであるコックリさんは、漢字で「狐狗狸」と表記されるとおり、交信相手は動物霊であることが多いといわれている。AIウイジャボードの場合、こういうニュアンスで使われるのがマライン・スピリットという言葉なのかもしれない。
昭和のコックリさんブームど真ん中の世代である筆者は、さまざまな媒体で、そして実体験を通してコックリさんに関するたくさんの情報を吸収してきた。狐憑きのような状態になってしまった、来てもらったはいいが帰らなくなってしまった、2日後に高熱が出て1週間も引かなかった──そんな話を聞くたびに、動物霊や低級霊と呼ばれる存在についての知識が深まっていった気がする。
ごく普通のアメリカ人がウイジャボードに抱く平均的なイメージは、どんなものなのか。実際のところ、大げさには考えないだろう。だからこそ、AIと組み合わせてみようというアイデアが生まれたのだと思う。しかし、そういうカジュアルな姿勢に冷ややかな視線を向ける人たちがいる。キリスト教関係者、特にエクソシズムの概念に詳しい人々の間では、ウイジャボードが悪魔のポータルになりえるというコンセンサスがすでにできあがっているようだ。次に紹介するエピソードは、とあるキリスト教系のサイトで見つけた話だ。このような事態を恐れているのだろう。
アメリカ東部メイン州のキリスト教系の私立高校の男子生徒グループがウイジャボードを墓地に持ち込み、そこに埋葬されている男性であると主張する霊体との交信に成功した。その夜は儀式がうまくいって、訪れた霊体もおとなしく帰った。
2週間後に同じメンバーが集まって、寮の一室で再び降霊会が始まった。しばらく質問を続けるうちに、ひとりの学生に憑依現象のようなものが起こり、ものすごい勢いで暴れはじめた。そのうち、ボードが部屋の中を飛び回りはじめた。学生たちは寮長の部屋に駆け込み、助けを求めたという。寮長が部屋に入って祈りを捧げるとポルターガイスト現象は収まり、憑依現象に襲われた少年も落ち着きを取り戻した。彼らは在学中には二度とウイジャボードには触れず、そのまま卒業した。特に大きな事件は起きなかったが、数年後のある夜、取り憑かれた少年がショットガンで自らの頭を吹き飛ばした。マライン・スピリットという言葉の重みが感じられるエピソードといえるのではないだろうか。
ウイジャボードは軽んじるべきではないし、できるなら触れないほうがいいのかもしれない。アメリカ人は「ウイジャボードなんて子供のすることだ」と口ではいいながら、心の奥底では独特な畏怖の念を抱いているのかもしれない。
だれかがプランシェット(ボードに書かれた文字や数字を示す小さな車輪がついたハート形の器具)をこっそり押しているにちがいないと考えるタイプの人なら、そもそもウイジャボードとの接点をつくろうとは思わないはずだ。ビリーバーであっても、伝統的な儀式を通して得られる漠然とした情報から何かを読み取る過程が目的なら、その核となる部分をAIに任せてしまうことに意味があるとは思えない。AI由来のウイジャボードを媒体に精神世界とつながるという行いは、伝統的な儀式に代わるものとして成立するのか。
(文=宇佐和通)
続きは本誌(電子版)で。
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