大地の神託「ジオマンシー」が現実的な悩みに答える! お金も恋愛も生々しく聞ける土占いの魅力/高橋桐矢

文=高橋桐矢

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    ありか、なしか? 大地から神託を得る占い「ジオマンシー」は現実的な問いにズバリ答えてくれる。占い師・高橋桐矢がその基礎知識を案内する。

    砂や土から始まった占い「ジオマンシー」の歴史

     ジオマンシーの起源は約1200年前、9世紀のアラビアの砂占い「Raml」(アラビア語で砂という意味)にさかのぼる。砂占いの名の通り、地面の砂や砂を敷いた盤に棒や指で点や線を描いて神託を得るというものだ。
     11世紀頃のアラビアは、科学や数学の世界の最先端。点や線を用いるだけでなく、占いのシンボルを足し合わせて数学的に生成していくシールドチャートという特徴的な手法もあるが、ともあれ、ジオマンシーは、イスラム教とともに世界各地に広がっていった。

    砂に穿った点で占うのが原点。画像=https://www.islamicoccult.org/ogunnaike

     12世紀、ヨーロッパで初のジオマンシーの翻訳書を出版したフーゴーという人物は、アラビア語で「砂の科学」と呼ばれていた占いを、火風水地の4大の地に対応する「ジオ(地)マンシー」と訳した(余談だが、「風水」の英訳語も同じくジオマンシーである)。
     現在に伝わる占術としてのジオマンシー理論を完成させたのは、ルネサンス期を代表する魔術師ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパだ。19世紀には、ナポレオンの愛読書だったとの触れ込みで、2冊のジオマンシーの本が出版され、大ブームとなった。マダム・ルノルマンの名を冠して作られたグランジュ・ルノルマンカードにも、ジオマンシーシンボルが使われていることからもその浸透ぶりがわかる。
     20世紀の魔術結社ゴールデンドーンの団員のフランツ・ハルトマン、元団員のアレイスター・クロウリーも、ジオマンシーに関する著作を著している。

     そういった歴史上何度かの「ジオマンシー・ブーム」を経て今、再び欧米や日本でもジオマンシーに注目が集まっている。1200年以上の長い年月にわたって「偶数か奇数かの4組による16種類のシンボルを使う」という様式はほとんど形を変えないまま、魔術師、神秘家、そして一般の占い愛好家にも注目されてきた占いなのだ。

    画像=https://digitalambler.com/2019/04/24/the-two-sons-of-iyan-bird-based-origins-and-other-ideas-for-geomancy/
    ジオマンシーは16種のシンボルで占う。

    偶数か奇数か? 2択の組み合わせで神託を得る

     ジオマンシーは、偶数(陰)か奇数(陽)か、という対になった2つのシンボルを導き出し、組み合わせるところから、東洋の易と対比して「西洋易」と呼ばれることがある。

     古典的には「地面を無心につついてできた穴の数」で「偶数か奇数か」を読んでいたのだが、「偶数・奇数」「裏・表」など2択ができれば道具はなんでもいい。コインを4枚投げて裏表で判断してもしい、サイコロを4つ振ってもいいし、小さい石をざらっと出した数が偶数か奇数かで判断してもいい。いずれも神託である。

    「偶数と奇数か」が「4組」なので、シンボルとしては16種。ここでは各シンボルのメッセージだけ簡単に紹介しておこう。

    「人々」 人と協力できるとき。人や物がたくさんある状態。多いほうが吉。
    「道」 自分の道を進むとき。人や物が少ない状態。少数派として進んでゆく。
    「つながり」 運命的につながる。人や物との嬉しい出会いがあり、絆が深まるとき。
    「拘束」身動きがとれない。物理的あるいは心理的に動けない。その場に留まる。
    「大吉」 オールOK最強運。大きな幸運が期待できる。輝かしい成功をつかむ。
    「小吉」 助けてもらえる。ささやかな幸運。まわりの人が力になってくれる。
    「獲得」 何かを得る。お金や物や愛情を受け取る、手に入れる。インプット。
    「喪失」 何かを手放す。お金や物や愛情を失う、提供する。アウトプット。
    「喜び」 楽しく過ごす。踊ったり歌ったり笑ったり、今このときを楽しむ。お祭り。
    「悲しみ」 思う通りにならない。不本意な結果。誰のせいでもない残念な運勢。
    「少女」 可愛く綺麗になれるとき。愛と美と女性らしさ、あるいは現実の女性。
    「少年」 挑戦することで強くなるとき。男性らしさ、あるいは現実の男性。
    「白」 明るく清く正しく。穏やかな運気。純真で、公平で、知性であることが吉。
    「赤」 流血や不和に注意。穏やかでない運気。欲望、興奮、衝動が高まるとき。
    「竜の頭」 何かが始まる。天高く昇ってゆく竜のように、勢いよくスタートする。
    「竜の尾」 何かが終わる。落ちてゆく竜のように、終わりへと向かってゆく。

    筆者のYouTubeでも占い方を実演している。

    大地にはリアルな相談事を聞くべし

     ジオマンシーの神託をもたらしているものは、何なのだろうか。
     ゴールデンドーン団員だったイスラエル・リガルディの著書には、地の占術であるジオマンシーは、天上の存在ではなく、地上の精霊が対応していると記されている。「ジオマンシーは地球による、地球自身の預言である」とも。
     神託をもたらしているのは、地のエレメントに対応する精霊、大地に満ちた気、そして、大地そのものだ。
     点で表されるジオマンシーシンボルには「地上の星座」という美しい別名もある。占星術を天の占術とするならば、ジオマンシーは、地上の占術であり、より現実的で物質的、具体的なアドバイスを与えてくれるのだ。

     では、現実的で物質的、具体的なアドバイスを与えてくれるジオマンシーに何を聞くべきか?

     ズバリ強いのは、お金や物の損得に関する相談だ。
    「損する」か「得する」か。良し悪しがハッキリ出る。

     例えば恋愛では、その人と付き合うことによって「物質的に豊かになれるか」を、教えてくれる。結婚生活も、現実なので得意なテーマ。商品が売れるか、事業が儲かるか……などなど、下世話な質問にも、ピンポイントで答えてくれる。
     逆に適していないのは、精神的な質問だ。「なぜ自分は生きているのか」といった哲学的な問いには、「その質問には意味がない」という答えになったりする。その場合は「生きにくさを感じているのでカウンセリングにかかるほうがいいか」と聞き直せばいい。カウンセリングに料金分の価値があるかどうか、ストレートに教えてくれるはずだ。

     古来、占いや呪術は、無くしものを探したり、泥棒を見つけたり、豊作や商売繁盛を願ったり、結婚や子宝を得たり……現実的な問題の解決に使われてきた。個人の心を読み解く、心理学的な側面を持つ占いが発達したのは近代になってからだ。

     1200年の歴史を持つジオマンシーは、占い本来の「今をよりよく生きる」ツールという側面を色濃く持っている。

    大英博物館が収蔵する「ジオマンシー」の道具。
    「説話社占い選書12 大地からの16の神託 ジオマンシー占い」(説話社)も入門におすすめ。

    高橋桐矢

    占い師兼児童書作家。著書に『ジオマンシー占い』(説話社)、『アラビアンジオマンシーカード占い』(FCM合同会社)、『はじめてのルーン占い』(日本文芸社)、『実践ルノルマンカード入門』(ワン・パブリッシング)、『イジメサバイバル』(ポプラ社)、など。占い師3人のユニット「トリプルK」として活動中。

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