燃料不要の“反重力推進装置”がついに完成!? 元NASA科学者が立ち上げたベンチャーが衝撃発表

文=仲田しんじ

関連キーワード:

    とうとう人類は夢の反重力推進技術を手に入れたのか!? ある専門家が電場を用いて重力に逆らう推力を生み出す「新たな力」を発見したと主張している。

    燃料不要の「新しい力」を発見

     2001年、イギリスの電気技師ロジャー・ショーヤー氏は、燃料なしで推力を生み出せる「Emドライブ」という推進装置を初めて発表した。Emドライブは反作用のない推進装置、つまり、燃料が不要で、なにも後方に押し出すことなく自らを前進させる装置との触れ込みだった。

     Emドライブはその後、NASAのイーグルワークス研究チームによって検証され、実際に推進力が生じているとの発表もあったが、2021年の独ドレスデン工科大学のより精度の高い研究によってこの装置から推力は検出できないことが確認されている。

    ※「Emドライブ」実験の模様 画像は「Wikipedia」より

     しかし、燃料不要の推進装置という夢は消え去ったわけではなかった。その夢は、元NASAケネディ宇宙センター所属の専門家、チャールズ・ビューラー氏が立ち上げた「Exodus Propulsion Technologies」社によって再び脚光を浴びることになる。

     ビューラー氏は、自身のチームが電場によって駆動される燃料不要の推力、すなわち「新しい力(New Force)」を発見したと主張。この力は重力に逆らうのにじゅうぶんな推力を生み出すことができるという。つまり、フリーエネルギーの“反重力”推進装置ということになる。

    「一般の人々に伝えるべき最も重要なメッセージは、重大な発見があったということです」とビューラー氏は2024年に海外メディア「The Debrief」に語った。

    「この“新しい力”の発見は、電場だけで物体に持続的な力を発生させ、質量を放出することなく物体の重心を移動させることができるという点で、極めて重要な意味をもちます」(ビューラー氏)

     ビューラー氏の研究はNASAとは一切関係がなく、「代替推進エネルギー会議(Alternative Propulsion Energy Conference:APEC)」を通じて行われているという。APECは、高い資格を持つプロのエンジニアと推進技術研究家の両方が集まる組織であり、かつて「The Debrief」が「世界で最も排他的で奇妙な反重力クラブ」と呼んだこともあるグループだ。

    ※チャールズ・ビューラー氏 画像は「APEC」より

    30~40グラムの物体を動かせる推進力

     APECの共同創設者であるティム・ベンチュラ氏との対談で、ビューラー氏は自身の静電気学のバックグラウンドがどのようにしてこの発見をもたらしたかを詳しく説明。NASA、ブルーオリジン、空軍の出身者から構成された彼のチームは、何十年にもわたって燃料不要の推進装置を研究してきたという。当初、彼らの装置はごくわずかな推力しか生み出さなかったが、改良を重ねるごとに着実に進歩していった。

     そして2023年、この「新しい力」の推進装置(単体で30~40グラム程度)が地球の重力に打ち勝つだけの推力を生み出すことに成功したというのである。

    「人類がこれまで成し遂げたことのないものです。今後1000年間、私たちが物体を推進するために使うのは、この力でしょう」(ビューラー氏)

     今年のAPECイベントでは「Exodus Propulsion Technologies」の共同創設者であるアンドリュー・アウリジェマ氏によって継続的な「テストと改良」が行われていることが明かされた。さらに2026年3月のインタビューでビューラー氏は約2000回の真空チャンバー実験を行ったと述べ、電源を切った後も持続するとされる推力の効果を説明している。そして現在、同社は交流会を設けて物理学者や投資家が同社の技術について議論する場も用意しているという。

    ※画像は「Exodus Propulsion Technologies」より

    第三者機関による厳密な検証が必要

     しかしながら、今のところこの「新しい力」は外部の研究機関による再現実験が行われていないか、あるいは行われていたとしても公表されてはいない。

     科学メディア「Popular Mechanics」によれば、ビューラー氏の主張は「もし本当なら驚くべきもの」だが、燃料を使わない推進システムの歴史は、一見すると好ましい結果が出ても、最終的には科学的現実という岩礁に打ち砕かれてきたと指摘。第三者機関による厳密な研究によって、その結果が何度も検証される必要があり、ビューラー氏とそのチームが物理学の未知の特異点に偶然遭遇した可能性はゼロではないものの、再現性が極めて低い「ありそうもないエンジン」であると結んでいる。

     APECも同様に、文書化されたプロトコルの公表と、外部の研究機関によって管理された条件下で「新しい力」を再現することを求めている。

     はたしてビューラー氏のこの「新しい力」は、今後どのような軌跡を辿ることになるのか。時の経過で自ずから答えが出るという顛末にはなって欲しくないものだ。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「Jesse Michels」より

    【参考】
    https://www.popularmechanics.com/space/rockets/a73405686/engineer-said-he-can-overcome-earths-gravity/
    https://thedebrief.org/nasa-veterans-propellantless-propulsion-drive-that-physics-says-shouldnt-work-just-produced-enough-thrust-to-defeat-earths-gravity/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

    関連記事

    おすすめ記事