月が地震を誘発する? 火山活動に影響も? 地球環境に及ぼす月の存在/並木伸一郎・月の都市伝説
衛星としては巨大な天体、「月」は地球の潮汐に影響しているのは周知のとおり。そのほかにも大きな変化を及ぼしているというが……。
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、ロシア南西部のヴォロネジ市で発生したUFOの着陸と異星人との遭遇事件を取りあげる。
1989年、旧ソ連でミハイル・ゴルバチョフ書記長が提唱したペレストロイカ(改革)、そしてグラスノスチ(情報公開)が推進されていたまさにその時期、ソ連国内ではUFOの集中目撃(ウェイブ)が発生し、異星人との遭遇事件も数多く報告された。
たとえば6月6日には、ヴォログダ州ハバロフスク市郊外にUFOが着陸、中から黒い生物が現れた。7月14日から21日にかけては、ウラル地方のペルミ州にある共産少年団キャンプ場で、多くの人々が光る目を持つ人間に似た生き物を見た。さらに7月30日、ウラル山中に出現した異星人が地元の新聞記者と会話し、「天秤座にある赤い星から来た」と答えたという。
こうした数々の事件が、国営紙「プラウダ」や共産党機関紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」、国営タス通信などで報道されたことは、グラスノスチが進展している証拠ともみなされた。
中でも、西側の研究家に最大の衝撃を与えたのが、9月27日、ロシア南西部のヴォロネジ市にUFOが着陸、中から異星人らしきヒューマノイドが姿を見せた事件だ。
ヴォロネジは、モスクワの南方500キロほどにあり、ドン川の支流であるヴォロネジ川の両岸に発達した町だ。その起源は16世紀、ロシア帝国の前身であるロシア・ツァーリ国皇帝フョードル1世が、クリミア・ハン国やノガイ・オルダといった南部の外敵に対処するため、ヴォロネジ川右岸の高台に作らせた木造要塞に求められる。
17世紀になると、ロシア帝国皇帝ピョートル1世の命令でヴォロネジ造船所が作られたこともあり、町は急速に発展、穀倉地帯の中心都市として、製粉、油脂製造、バター製造など食品産業が盛んになった。
第2次世界大戦中は毒素間の激戦の舞台となり、町は完全に荒廃したが、戦後は機械生産や化学産業などを中心とする工業センターとして復興し、ヴォロネジ州の州都ともなっている。
また、ノーベル賞物理学者パーベル・チェレンコフも学んだヴォロネジ大学のほか、ヴォロネジ農業建築大学、ヴォロネジ森林大学といった多数の大学や研究機関が位置する文化的中心都市でもある。事件が起きた1989年当時の人口は約89万人。ロシアではかなりの大都市である。
そのヴォロネジの市街地にUFOが着陸し、それを大勢の市民が目撃したというのだ。
地元紙等の報道によれば、9月27日の着陸事件は以下のようなものだった。
この日の午後6時半ごろ、市内の公園でヴァスヤ・スリン(11歳) とゲニヤ・ブリノフ(12歳)というふたりの少年がサッカーに興じていた。現場にはユリア・ショロコヴァという同年代の少女もいた。
少年たちがふと空を見ると、ピンク色か赤色のように見える、直径9メートルくらいの光点が浮かんでいた。この謎の光る球体は突然、暗い赤色に色を変えると、高さ12メートルほどの場所で旋回しはじめ、その後いったん見えなくなった。
しかし数分後、球体は再び姿を見せた。このときには、少年たち以外にも40人ほどの人々が現場に集まっており、彼らが見あげる中、空中に滞空する球体の下部にあるハッチが開いた。そして内部には、異星人らしきヒューマノイドの姿が見えた。
その異星人は身長が3メートルほどの巨人で、目が3つあり、銀色のオーバーオールにブロンズ色のブーツを履き、胸には円盤のようなものをつけていた。
ハッチは空中でいったん閉じ、球体は降下してきて地面に着陸した。すると、再びハッチが開き、先ほどと同じ異星人が出てきた。今度は、四角いロボットのような存在も一緒だった。
ロボットの胸にはつまみのようなものがいくつもついており、異星人がそのいくつかに触ると、ロボットは突然機械的な動きを始めた。
それを見て、現場にいた少年のひとりが恐怖のあまり叫び声を上げた。すると、異星人がその少年のほうを振り向き、その目から光が放たれた。次の瞬間、少年はその場で凍りついて身動きひとつできなくなった。
この光景に人々が騒ぎはじめると、球体も異星人もかき消すように消えてしまった。と思ったのもつかの間、5分ほどたった後に、球体と3つ目の異星人、それにロボットが再び現れた。
異星人は、脇に1.2メートルほどの長さの、銃のような円筒を抱えており、近くにいた16歳の少年に筒の先を向けた。すると、驚いたことに少年の姿が消えてしまったのだ。その後で異星人が球体に入ると、球体は次第にスピードを上げて飛び去った。同時に、消えた少年も再び姿を現したという。
この事件が西側のUFO研究家に大きな衝撃を与えたのは、球体のUFOがロシアの大都市に着陸し、奇怪な形の異星人が姿を見せたということばかりではなかった。じつはヴォロネジのUFOの側面、そして降り立った異星人のバックルには、ウンモ星人が用いるシンボルとそっくりの図形が描かれていたのだ(ウンモ星人については、こちらの記事を参照されたい)。
当然ながら、ウンモ事件とヴォロネジ事件との間には、何らかの関係があるのではないかとの推測も生まれた。
フランスを代表するUFO研究家ジャック・ヴァレと、長年ウンモ事件について研究してきたマルティーヌ・カステロのふたりも、この観点から事件に興味をひかれた。そこでなんとかソ連を訪問し、現地の情報を知りたいと思ったのだが、当時もまだ、鉄のカーテンの向こう側へ赴くにはいろいろと困難が伴っていた。ところがそこへ、思わぬ幸運が舞い込んできた。ソ連のノボスチ通信社が、UFO問題に関し、フランスの雑誌「フィガロ」と共同調査を行いたいと申し入れてきたのだ。
こうしてヴァレとカステロは、「フィガロ」の手配でノボスチ通信から招待を受け、1990年1月、モスクワを公式に訪問することになった。
モスクワでは1月12日、ふたりを招いてUFO円卓会議が開催され、ロシア側からもウラジミール・アジャジャをはじめとする大勢のUFO研究家が参加した。しかもこの会議には、ヴォロネジで現地調査を行った地元の研究家4人も駆けつけていた。
こうしてふたりは、ヴォロネジの事件について詳細な情報を得ることができたのだ。
現地の研究家によれば、9月27日にUFOを目撃したのは、現場にいた人々だけではなく、同じ時刻に自宅から目撃した人物も大勢いるとのことであった。
たとえば、国営銀行コンピューター・センターの上級エコノミストであるヴァレンティナ・アレクセイエヴナと、その娘で地区の副検事であるタティアナ・アレクセイエヴナは、その日の午後7時ごろ、赤い球体が空に浮かんでいるのを自宅から目撃した。
ユーリー・ヴォクリメンコという人物は、その日の午後6時から7時の間、赤い球体がヴォロネジ川の左岸方面に飛んでいくのを見たという。
さらにヴォロネジ周辺では、9月21日から10月7日までUFO目撃が多発しており、UFOからビーム照射を受けるという奇妙な事件も発生していたことや、9月27日の事件を含め、少なくとも4件の着陸事件が報告されていることなども明らかになった。
報告によれば、UFOの着陸は、9月21日に最初に起きたようだ。この日の午後8時30分ごろ、27日とは別の少年たちが、市内のメンデレーエフ通りで球体のUFOが着陸するのを見たという。このときには、27日と同じようなヒューマノイドが2体と、そしてやはり四角いロボットが目撃されている。
ヴォロネジ地理学協会スペクトル分析研究所の物理学者、ゲンリク・シラノフ教授らは、こうした事件について詳細な調査を行った。
シラノフらが21日の着陸場所を調査したところ、現場では磁力異常が感知され、ダイヤモンド形に並んだ4つのくぼみが発見されたという。調査チームは、くぼみの深さから、着陸した物体の重量は11トンと推計した。また一連の着陸事件では、UFOから出てきた3種類の存在が確認されている。
最初のものは、21日や27日に目撃された身長3メートル、3つ目の異星人で、2番目が四角いロボットのようなものである。そしてもう一種類、灰色っぽい緑の顔をして、レインコートのような青いオーバーコートを着ており、目がふたつあるものも目撃されていた。
なお、現地の研究家は一連の調査を行うにあたり、「バイオロケーション」という技法も用いていた。
バイオロケーションとは、西側でいう「ダウジング」に対するソ連での呼び名である。ヴァレはその効果について疑念を抱いたようだが、現地の研究家はこの技術に確信を持っているということだった。
カステロの側からは、ウンモ事件について彼らに詳しい説明を行った。すると、地元研究家たちは、ヴォロネジ事件でウンモ・シンボルが目撃されたことを確認した。また、ソ連では1984年にこのシンボルの目撃報告があるとも述べた。
さらに、旧共産圏にまで話を広げると、ポーランドのワルシャワで、1979年5月22日にこのシンボルが目撃されていると主張した研究家もいたという。
カステロによれば、1979年はおろか、1984年においてさえ、旧ソ連圏にはウンモ事件の情報が伝わっていなかったはずだという。もしこの証言が正しいとすれば、ウンモ事件そのものについても再評価が必要になるだろう。
●参考資料=『図解UFO』(桜井慎太郎著/新紀元社)/「ムー」1989 年12 月号(学習研究社)/「今日のソ連邦」1990 年5 月号(新時代社)/『UFO
Chronicles of the Soviet Union』(Jacques Vallee / Ballantine Book)
(月刊ムー2021年1月号掲載)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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