一本足の奇妙な異星人に連れ去られた「パシエンシア事件」/ハイ・ストレンジネスUFO事件FILE 1

文=羽仁 礼 イラストレーション=久保田晃司

    世界中から無数に報告されるUFO事件。単なる目撃情報から、異星人との直接的なコンタクトまで、その内容は実にさまざまだ。中でも、特に奇妙で不可解な遭遇事件を「ハイ・ストレンジネス事例」と呼ぶ。奇想天外な7つの接近遭遇事例を紹介する!

    奇妙で不可解な第三種接近遭遇の事例

     UFO研究に「ストレンジネス」(奇妙度)という指標を導入したのは、「UFO界のガリレオ」とも呼ばれるジョーゼフ・アレン・ハイネックである。彼は科学的なUFO研究の基礎を整えた人物として知られ、UFO事件のうち遠距離からの目撃事例を「ノクターナル・ライト」(夜間発光体)や「デイライト・ディスク」、「レーダー・ヴィジュアル」という3種にケース分けした。
     近距離でUFOに遭遇する、いわゆる「接近遭遇」についても、「第1種接近遭遇」から「第3種接近遭遇」までの3種類を定めた。

     さらに個々のUFO事件を評価するために導入したのが、「プロバビリティ」と「ストレンジネス」というふたつの指標である。つまり、UFO事件が起こると、まずはどの形態にあたるか確かめた上で、その事例が本当にありそうなものか、そしてどの程度奇妙なものかを検討しようとしたのだ。
     ストレンジネス、つまり奇妙さの度合いは「S値」として何段階かで評価される。UFOとともに異星人らしき生命体が目撃される「第3種接近遭遇」の事例は、一般にS値が高くなるが、中でも特に奇妙で、不可解なものが「ハイ・ストレンジネス事例」と呼ばれる。

     こうしたハイ・ストレンジネス事例においては、生物かどうか判然としないような奇妙な姿の異星人が頻繁に登場し、われわれ地球人の常識では到底理解できないような不可解な行動を示す。ときには霊的実体であるかのように、突然姿を見せたり消えたりするという、まるで悪夢のように非現実的な出来事が起こる。
     S値がどれくらいであればハイ・ストレンジネス事例と呼ぶべきかについて明確な基準はないようだが、イギリスのマイク・ダッシュがハイ・ストレンジネス事例の代表例として取りあげたもののひとつが、1977年にブラジルで起きたアントニオ・ラ・ルビアの事件である。

    1977年9月15日、ブラジルのパシエンシアで奇妙な異星人に遭遇したアントニオ・ラ・ルビアが、その姿を描いた目撃スケッチ。

    一本足の奇妙な異星人に連れ去られた男

     事件は1977年9月15日、午前2時20分に起きた。場所は、ブラジルのリオデジャネイロ西部にあるパシエンシアというところで、このときバスの運転手をしていたアントニオ・ラ・ルビアは、仕事に向かうためパシエンシアのサッカー場付近を歩いていた。
     ふと見ると、サッカー場の上空に直径60メートル以上はあろうかという帽子形のUFOが浮いていた。恐れをなしたラ・ルビアが走ってその場から逃げようとしたそのとき、UFOから青い光線が発射された。
     光線を浴びたラ・ルビアは、身体が麻痺して動かせなくなった。と思った瞬間、彼のすぐそばに、3体の生きものが現れた。だが彼らの外観は、生物とは思えないほど奇妙なものだった。
     この3つの生きもの、あるいは存在は、いずれも同じような姿をしていた。身長はおよそ1.2メートルで、頭はアメリカン・フットボールのボールを縦に置いたような形をしていた。頭のてっぺんからは、長さ30センチ以上あるアンテナが突きだしており、その先端はスプーンのようになっていて高速で回転していた。
     額の真ん中には、小さな鏡のようなものが横一列に取り巻いており、それぞれの鏡の色は濃い青と薄い青という2種類の青色だった。体つきは全体にずんぐりしていて、服装あるいは皮膚は鈍いアルミニウムでできているウロコのようだった。
     さらに奇妙なのが、彼らの両腕と脚であった。2本の腕はまるで象の鼻のように細長くて先細りになっており、末端は人間の指くらいの太さしかなかった。そして指のようなものは見あたらなかった。
     丸っこい下半身の下からは、まるで支柱のような脚が1本だけ突きだしていた。しかもその最下部は、小さな丸い土台に乗っていた。つまり、道路標識などに見られる支柱のような形だったのである。
     腰のまわりにはベルトを締めており、そのベルトのフックには、何本もの注射器に似た器具が吊してあった。
     この3体の生きものは、最初ラ・ルビアのまわりを漂うように動いていたが、そのうち1体が彼に、腰の注射器のようなものを向けた。すると次の瞬間、ラ・ルビアはUFOの中にいた。いつ内部に連れ込まれたのか彼にはまったくわからなかった。もしかしたら注射器の作用で、一時気を失っていたのかもしれない。
     そこはUFO内部の広い廊下のような場所で、ピアノのような形をした機械装置がひとつあり、先ほど現れた3体と同じような生きものが、2ダースほどもひしめいていた。
     その場所でラ・ルビアは何らかの検査を受け、何枚ものスライドを見せられたという。
     スライドの中の何枚かは、ラ・ルビア自身が服を着ている姿のものと裸のものとで、ほかには田舎道を行く荷馬車、通行量の多い大通り、異星人に襲いかかろうとする犬などが写っていた。しかしこの犬は青く変色して溶けてしまい、それを見たラ・ルビアは恐れて震えあがった。ほかの1枚はUFO工場のもので、何百体ものロボットが写っていた。
     写真を見せられている間に、生きものの中の1体が注射器でラ・ルビアの血液を採取した。
     その後、突然機外へ放りだされたと思ったら、バス停留所の向かい側の通りにいた。近くにはロボットが1体立っていたが、ラ・ルビアが周囲を見ているうちにいつの間にか消えてしまった。見上げると、頭上には鉛色をした巨大な気球が浮かんでいて、上空に消えていった。時刻は2時55分になっていた。
     その後1か月の間、ラ・ルビアは吐き気や下痢、高熱に苦しみ、身体が熱く、ちくちくする感じがひどくて働くことができなかったという。

    UFO内で異星人たちに取り囲まれるラ・ルビアのイメージ(「Canadian UFO Report」より)。

    ●参考資料=「宇宙人大図鑑』(中村省三著/グリーンアロー出版社)、「UFOと宇宙」第18号/64号/66号/67号(ユニバース出版社)、『FLYING SANCER REVIEW』1994年8月号(FSR Publications)

    (月刊ムー 2025年1月号掲載)

    羽仁 礼

    ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
    ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。

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