UFOと人類の経済活動に意外な相関! 不況時に目撃件数が増える謎

文=仲田しんじ

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    時に空を見上げてみる心の余裕は、やはり懐の暖かさがあってのことなのか――。基本的に富裕な地域でUFO目撃が多く、不況時にはさらにUFO目撃件数が増えていたという興味深い最新の研究が報告されている。

    その地域の経済低迷期にUFOの目撃件数が増えていた

     スマホの普及によって世界各地で撮影されたUFOの画像や映像が即座に、続々と共有される時代を迎えている。これもまた社会現象の一つとするならば、UFO目撃について社会科学の観点からアプローチしてみることでさらに理解が深まるのかもしれない。

     イスラエルのへブライ大学をはじめとする研究チームが2024年12月に学術誌「Humanities and Social Sciences Communications」で発表した研究は、UFO(UAP)の目撃とアメリカ各地の経済状況との間にある意外な関連性を明らかにした興味深い内容になっている。

     同大学のオハド・ラベ博士とバル・イラン大学のネイサン・ゴールドスタイン博士は、全米で20年以上にわたってUFO目撃報告を収集・追跡している「National UFO Reporting Center(NUFORC)」のデータを社会経済指標と照らし合わせ、アメリカの郡、州、および国レベルでのUFO目撃数と経済状況を調査分析した。なお、分析の際にはその地域の気象条件と外部要因は制御され可能な限り取り除かれた。

    画像は「Nature」より

     分析の結果、UFO目撃報告は裕福な地域であるほど件数が増える傾向が明らかになった。時に空を見上げてUFOを気にかける“心の余裕”は、すなわち経済的余裕に立脚しているということだろうか。また経済的余裕があればUFO観測のための望遠鏡やカメラなどの機材も揃えられるだろう。

     地域の経済レベルに関係なく経済状況は変動するものだが、その地域内でのUFO目撃報告数には反循環的(counter cyclical)な傾向があることもまた突き止められた。

     反循環的という用語は主に経済政策で使われ、たとえば反循環政策(counter cyclical policy)とは、不況時の財政赤字を好況時の黒字で補填する政策のことだ。

     つまり、不況時に増える財政支出のように、その地域の経済低迷期にUFOの目撃件数が増えていたのである。

     研究チームによれば、不況時には人々の仕事が減り自由時間が増えることや、娯楽にあまり出費できなくなることでUFOへの関心が高まるのではないかと説明している。

    画像は「Nature」より

     また、これまでなら日々の仕事と生活が忙しくていちいち報告していなかったUFO目撃者が、自由時間が増えたことでこまめに報告するようになったり、UFOへの関心が高まったことで目撃願望がエスカレートし、誤認や見間違いを報告する者が増えていると指摘する声もあるようだ。

     軍事系メディア「The Debrief」によれば、元諜報員で神経科学者のエリック・ハゼルティン博士は「パンデミック、戦争、不況などの激動の時期には、2つの理由で陰謀論があふれている」と指摘している。その2つの理由とは以下の通りだ。

    「人間は不確実性を嫌う。不確実性は大きな不安を引き起こすため、起こっていることの意味がわかるものに惹かれる」
    「人間は、混乱時に起こるような制御不能な感覚を嫌うため、理解、予測可能性、制御可能性の幻想を生み出すものに惹かれる」

     経済的低迷や不況の下で人々は何らかの救いを求めたくなるのは人情であるともいえる。第一次大戦後のドイツの不況が独裁者ヒトラーを生み出す一因になったともいわれているが、現代人がそこにUFOの影を見たとしても致し方ない面があるのかもしれない。

    画像は「The Debrief」の記事より

    ロックダウン中にUFO目撃報告が増加

     今回の研究では、COVID-19パンデミックによるロックダウン中のUFO目撃報告についても分析している。

     ロックダウンによって移動が制限されている期間中、UFO目撃報告が増加し、UFO現象への注目が高まっていたこともまた今回の研究で浮き彫りになった。

     ロックダウンによって仕事が減り、手持無沙汰になる自由時間が増えたことで人々が空を見上げる機会も増えていたのだろうか。

     研究チームによると、仕事をはじめとする日常的なプレッシャーが緩和されると人々の関心はUFOなどの超常的な出来事に向けられることが示唆されてくるということだ。

     今回のコロナ禍は結果的に“社会実験”となった側面が否めず、パンデミックという不測の事態によって、世間の関心が時間の経過とともに、また地域によってどのように変動するかについて独自の洞察が得られる可能性があると研究チームは言及している。

    Frank RietschによるPixabayからの画像

     研究チームは、政策立案者が今回の研究から得た知見を活用することで、ストレスや不確実性が高まった時期の国や地域の経済反応をより深く理解するのに役立つと考えているようだ。

     パンデミック、あるいは不況などによって社会不安が高まり、その一方で人々の可処分時間が増えた状態では、UFOなどの超常的な現象への注目が高まることが今回の研究で示唆されることになった。

     しかし穿った見方をすれば、不確実性の高まった状況において、為政者が意図的に人々の関心の向かう先を用意する可能性も考えられなくもない。

     地震や火山噴火などの自然災害ならいざ知らず、起きてしまったあり得ない出来事である“ブラックスワン”の中には、人為的に引き起こすことができるものもある。不測の事態が起きた時にはその対処にかかりきりになってしまうものだが、実はその裏で何かが進行していないか疑う視点を常に持つべきかもしれない。

    【参考】
    https://thedebrief.org/surprising-link-between-uap-sightings-and-economic-conditions-revealed-in-controversial-new-research/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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