UFOアブダクション現場で続く発光飛翔体と獣人UMAの遭遇……米アパッチ・シトグリーブスの謎
アメリカ最大のミステリースポットは先住民の聖地にして米軍が暗躍する禁足地だった!?
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UFO、UMA、超常現象など、世界にはびこる謎を、並木伸一郎が鋭く切り込む。今回は事件後から約40年が経過した今、新事実が明らかになったUFOアブダクション「トラヴィス・ウォルトン事件」に迫る。
近年、元政府高官によるUFO情報のリークが相次いでいる。たとえば2005年9月25日にカナダで開催された「地球外生命体シンポジウム」では、同国の元国防相ポール・ヘリヤーがUFOと異星人の存在を各国政府が積極的に隠蔽している事実を公表。ビル・クリントンの首席補佐官を務めたジョン・ポデスタは、国家機密にアクセス権限があった当時、UFO関連文書を公開できなかったことをツイッターで悔悛している。
加えて2018年7月に開催されたMUFON(Mutual UFO Network=相互UFOネットワーク)のシンポジウムでは、米国防総省の極秘UFO調査チーム「先端航空宇宙脅威別プログラム」を率いたルイス・エリゾンドが登壇し、政府の秘密主義を糾弾した。
情報隠蔽に反発する動きに呼応するように、隠蔽の介入によって捏造と結論づけられた事例が埋もれている可能性があるとして、過去のUFO事件に対して再評価する機運が高まっている。
その最中にある2015年、かつてアメリカで起きたアブダクション事件のひとつ「トラヴィス・ウォルトン事件」の現場検証が改めて行われた。当事者の証言の信用性が高いにもかかわらず、真偽を問う大論争が展開されたこの事件の再検証結果はいかなるものだったのか?
事件を振り返りながら、40年を経て提示された新たな証拠を見ていこう。
1975年11月5日、アリゾナ州に広がる国有林アパッチ・シトグリーブスで事件は起きた。
一日の作業を終えた森林作業員のウォルトン青年(当時22歳)と同僚5人が現場監督のマイケル・ロジャースの運転する車で帰路についていたときのこと。通りかかった空き地に、UFOらしき物体が滞空しているのを目撃した。2枚のパイ皿を重ねたような形状で、直径は推定5メートル。窓はなく、光を遮る格子状のフレームが全体に走っている。
好奇心に駆られたウォルトンは車を飛び出すと、UFOめがけて走り出した。だが、その前方まで達したとき、物体が激しく揺れ動き、底部から青緑色の光線が放たれた。彼はとっさに身を隠そうとしたが、光線の直撃を受け、そのまま地面に叩きつけられた。
動転したロジャースは車を急発進。ウォルトンを残したまま、現場から走り去ってしまう。そして15分後、思いなおして戻ったときには、UFOもウォルトンも消えていた。ロジャースは警察に報告し、ヘリを動員した大がかりな捜索が展開されたが、UFOの痕跡はおろか、ウォルトンの遺留品も発見されることはなかった。
事件はたちまち全米に拡散し、メディアに加えてMUFONやGSW(Grand Saucer Watch)といったUFO研究団体の調査員も現地に押し駆けた。現場調査で高い放射能が検知されるなど、有効な証拠が得られる一方で、さまざまな憶測も飛び交った。
現場にいた6人にはウォルトン殺しの嫌疑がかかり、ウソ発見器によるポリグラフ・テストが行われる事態にまで発展した。
だが、テスト当日の11月10日から日付が変わった直後、事態は急転する。ウォルトンの妹夫婦の家に、本人から電話がかかってきたのだ。兄弟たちが指定された場所に駆けつけると、電話ボックスでうずくまるウォルトンの姿があったのだ。
生還したウォルトンは憔悴しきっており、十分な休養と信頼のおける医師の診断を必要としていた。それゆえ、彼は警察の聴取を終えると姿を隠し、ポリグラフ・テストにも現れなかった。すると、当初は好意的だったマスコミやGSWは一転して疑念を示すようになる。
だが、同じくUFO研究団体のAPRO(Aerial Phenomena Research Organization)は支援の姿勢を貫き、彼に信頼できる医師の診断を受ける場を与え、彼の精神が正常であり、薬物やアルコール摂取の形跡もないことが証明されたのである。
事件から11日後、ウォルトンはAPRO会長のコラル・ロレンゼンとともにテレビに出演。ロレンゼンは事件の3か月前の8月、アリゾナ州に隣接するニューメキシコ州のホローマン空軍基地で、チャールズ・ムーディ軍曹がアブダクションされるという事件が起きていることと、事件を報告した軍曹が描いた異星人のスケッチが、ウォルトンが遭遇した異星人と酷似していたことを報告した。
この事件は軍上層部とAPROしか知り得なかったことから、双方の事件に関連性があり、同時に信憑性の高さの証明でもあると強調した。そしてその後、ウォルトン自身の口から驚くべき体験が語られた。
病室のような部屋で意識を取り戻したとき、ウォルトンはテーブルの上に仰向けに寝かされていた。痛む頭を振りながら見回すと、3人のヒト型生物が立っていた。身長は150センチほどで、無気味なほど白い肌をしている。頭部に髪はなく、異様に大きい目にもまつ毛は認められない。口や耳、鼻は驚くほど小さかった。指は人間と同じ5本あるが、指先には爪がなかった。
その姿を見た彼はパニックに陥り、テーブルから飛び降りると、転がっていた筒状の物体を手に身構えた。3人は制止する仕草を見せたが、なぜか部屋から出ていったという。すかさず部屋を飛び出したウォルトンは廊下をさまよい歩き、先ほどとは別の人物と出くわした。人間に近い姿で、身長は180センチほど。長髪で褐色の肌をしていた。
“彼”に案内された別の部屋で、ウォルトンは酸素マスクに似た器具を口にあてられ再び意識を失う。そして気がついたときには、冷たいアスファルトに倒れ込んでいたという。
朦朧とした意識のまま、何とかガソリンスタンドにたどり着いた彼は、公衆電話から妹に連絡を取り、ようやく救出されたのだ。このとき、ウォルトンは自分が6日も行方不明であったという事実を知り、驚愕する。なぜなら彼にはほんの1〜2時間の記憶しかなかったからだ。
このテレビ出演に際して、さまざまな疑念を払拭しようとしたが至らなかった。しかし、翌年1976年2月7日、APROによるポリグラフ・テストが行われ、彼の証言にウソのないことが証明された。また、同年3月22日にはUFO研究の権威であるアレン・ハイネック博士と会見。博士はウォルトンに否定的な立場にあるGSWと関係が深かったにもかかわらず、会見後、彼の体験談には看過できない信憑性があると声明を出し、さらなる科学的調査の必要性を呼びかけた。
これをきっかけに事件は再び注目を集めるが、同時に真偽を巡ってAPROとGSWが対立し、大論争が巻き起こる。だが、正式な調査が行われることなく時は過ぎ、ウォルトンの体験はUFO事件の古典として記録されるに留まった。
だが、事件から40年を経た2015年、フィリス・バンディガーとブルース・バンディガーによる科学者チームが、事件現場の土壌調査に乗り出した。それもハイネック博士が望んだ科学的調査である。その調査結果はウォルトンの体験談を裏づける実に興味深いものだった。
2015年11月8日、フィリスとブルースは、14種の土壌サンプルを事件現場で採取した。
1998年から翌年にかけてロジャースが描いた再現地図をもとに、採取地点からUFOの浮遊地点、ウォルトンが光線を受ける直前と直後の場所、および光線の軌道が定められ、計7か所の土壌の表部(0〜5センチ)、および深部(5〜10センチ)から採取されたサンプル2種(それぞれカップ1杯程度)が検証の対象とされた。
検証は走査型電子顕微鏡によるエネルギー分散型X線分光法や誘導結合プラズマ発光分析法、赤外線分析、金属微粒子分析など、さまざまな手法で行われた。そのいずれにおいても、比較対象サンプルに比べ、事件現場で採取したサンプルが鉄分を含む微粒子濃度が高いことが明らかになった。
この結果は、UFOが飛行あるいは着陸した現場で採取された他のサンプルにも共通する特徴である。飛行物体の推進装置が強力な電磁場を形成し、地中にある鉄分を含む微粒子が引き寄せられ、表面に近い部分に集まったと考えられる。
事件当時の調査で、現場では10ガウスという異常に高い残留磁気が確認されていることから、40年後の土壌にまでその影響を及ぼすほど強い電磁場をUFOが形成していた可能性は極めて高い。
強い電磁場は、その影響下にある鉱物に対して化学的変化、とくにイオン化をもたらす傾向にある。たとえば、1971年11月にアメリカのカンザス州で起きた「デルフォス事件(親子3人がUFO着陸を目撃した事件)」では、着陸痕に残された謎の“光る物質”は、飛行物体から放出されたフルボ酸によって化学発光が何日間も続いた、という記録がある。
ただ、ウォルトンの事件では同様の現象は報告されていないものの、現場の土壌サンプルに含まれた交換性陽イオンの含有量は、比較対象よりも明らかに多かった。この事実は、現場のサンプルに化学物質組成の恒久的変化が起きていたことを明確に示すものなのだ。
なお、当地は2002年に大規模な森林火災に見舞われ、周辺の木々が“入れ替わって”いるため、検証対象とはなり得なかったが、1998年にロジャースが当地を訪れた際に採取した樹木サンプルからは、事件発生の1975年から15年の間に明らかに異常な成長を示していることが確認されていることも看過できない事実である。
事件から経過した歳月を考えれば、こうした結果が導き出されることに驚きを禁じ得ない。別の角度から見れば、40年を経た現代だからこそ得られた“新事実”といえるだろう。
もちろん、この結果は“原因”がUFOであることを完全に特定するものではない。だが、フィリスたちが獲得した過去の事例と複合的に判断すれば、その可能性が高いことはいうまでもない。
今回行われた土壌調査が、トラヴィス・ウォルトン事件の再評価につながり、より多くの専門家が加わった再調査のきっかけとなることを期待したい。
並木伸一郎
「ムー」創刊当初から寄稿するベテランライター。UFO研究団体ICER日本代表、日本宇宙現象研究会(JSPS)会長などを兼任。ロズウェルやエリア51をはじめ現地調査を重ねて考察し、独自の仮説を「ムー」や自身のYouTubeなどで発表している。
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