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台風の大型化は一時的なものではなく、地球全体の温暖化による。激甚化必至の台風災害と農業・漁業の危機は既定路線なのか?
台風シーズン、天気予報では観測史上初、観測史上最大クラスといった言葉が連呼されている。近年、台風の大型化が進んでいるのだ。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)がスーパーコンピューターを使って、過去60年間の気象データ(1979年から2008年)を分析、21世紀末(2075年から2104年)の気象状況を予測した。それによれば、強風域の半径が10.9%程度拡大した強い台風が、現在より6.6パーセント増加、それに伴い降水量は11.8%増加するという。
世界の気象シュミレーションを比較・平均化した場合でも、強い台風の発生割合は13%増加、平均降水量は12%増加するという。
あと50年から100年は、今より大きい台風が、さらに多く生まれ、降雨量が増えるらしいのだ。
これは地球温暖化の影響である。地球温暖化によって、台風は大型化する。なぜかといえば、海水温が高ければ高いほど大きな台風が生まれるからだ。
19世紀の産業革命以降、地球の平均気温は上昇している。気温の理由として考えられるのが産業活動だ。
石油や石油を燃やすことで出た二酸化炭素などの温室効果ガスが地球の上空を覆ってしまい、熱が宇宙へ逃げずに温室のように地球が暑くなる。ではどのくらい温度が上昇したのか。
環境省によれば、産業革命が起こった1750年代以降から2019年までに大気中の二酸化炭素量は47パーセントも増加しているという。そしてそれに合わせるかのように世界の平均地上気温も上昇、1880年から2012年までに0.85度上昇し、北極の氷が減少しつつあるという。
たった0.85度である。
毎年のゲリラ豪雨に超大型台風、日本の気候は温帯から亜熱帯性気候のように激しいものへと変わってしまった。春と秋はどんどん短くなり、熱中症で倒れる人は増え、海ではサンゴが真っ白に死に絶え、魚の旬も漁獲量も変わっている。その原因が150年弱でたった0.85度の気温上昇なのだ。
気象に関するIPCC第5次評価報告書の長期の変動シミュレーションによると、このまま地球温暖化が進むと最悪のシナリオでは2100年に世界の気温が4.8度(日本の場合、5.4度)上昇する。
0.85度の気温上昇で今のように大騒ぎをしているのに、5度前後の気温上昇では何が起きるのだろうか。
水温上昇で海面が0.52~0.98メートル上昇する。堤防は50~70センチのかさ上げが必要になる。台風や大雨が急増し、水害の被害が増大する。しかも風速67メートルを超えるスーパー台風が増えるという。被害がどう広がるのか、想像もつかない。
さらに亜熱帯化した日本ではマラリアなど熱帯性の風土病が流行する。また熱中症による死亡者数が増加、2050年代には1981~2000年に比べて約0.8~2.2倍、2090年代には約2.1~3.7倍の人が死ぬ(気温が2.1~3.8度上昇のシナリオの場合。4.8度の場合、さらに悪化するだろう)。
現在、世界の穀物生産の大部分が中緯度地域で行われているが、気温の上昇で収穫量は激減、穀倉地帯は高緯度に移動する。そのため、全体的な食料減産が懸念される。さらに水害と干ばつがそれに追い打ちをかける。
二酸化炭素が海面から吸収されることで海水が酸性化し、海の生態系が大きく変わる。海温の上昇に伴って魚群が高緯度に移動したり、深海に逃げることが予想される。現在の漁業海域でそれまでと同様の操業は難しくなるだろう。
暗澹たる未来の、私たちは入り口に立っているのだ。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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