「超常現象体験児」が接続する霊の実在/宇佐和通・海外チャンネルレビュー

文=宇佐和通 協力=ヒストリーチャンネル

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    自らの意思とは関係なく「霊が視えてしまう」少年少女たち。望まず得た能力に翻弄される少年少女たちを、その苦悩から解放するべく行われる特別なチュートリアルにカメラが密着する!

    『パラノーマル・チルドレン~超常現象体験児~』

    “ギフテッド”という表現がある。直訳すれば恵まれた とか 才能があるという意味になるのだが、ギフテッドであることの方向性はさまざまだ。そして、本人が決して望まない形で〝才能〟が発現してしまうこともある。

     2008年から2010年に制作され、日本での放送が始まったシリーズ『パラノーマル・チルドレン~超常現象体験児~』で紹介される子供たちは、精神世界の住人の姿が見えたり、死者とコミュニケーションができたり、オーラから寿命がわかったりといった特別な能力を宿している。番組はこうした子供たちの日常を調べ、歴史的事実を明らかにしようとする。
     今回のシリーズで特筆すべきなのは、特殊能力を持つ子供たちを集め、家族ごと会わせるところまでが紹介される場面だ。幼い霊能力者同士を引き合わせるという企画を実験的にでも試みた番組は過去になかったと思う。淡々としたテンポとは裏腹に、想像を超える踏み込み方で視聴者を驚かせる。

     子供たちが強いられる苦しみはさまざまだ。
     まず、家族以外の人間に本当のことはいえない。どんなに親しい友人であっても、頭がおかしいと思われる不安は必ずあるだろう。
     そういった不利益は人関係的なものだけではない。最初のエピソードで紹介されるアリという11歳の女の子は、定期的に激しい頭痛に襲われる。苦しみを強いられるのは、両親も変わらない。子供のことを何とか信じて理解しようとするが、ギフテッドとそうではない者では、世界の見え方がまったく違う。だから、子どもの苦しみをわかってやれない苛立ちと世間の目との板挟みになる。

     番組のホストを務める霊能者チップ・コフィとコロンビア大学の臨床心理学博士リサ・ミラー、オーラ専門家のティファニー・ジョンソンなど、それぞれの分野のエキスパートが参加して行われる実験も興味深い。

    臨床心理士のリサ・ミラー(画像左)
    霊能者チップ・コフィ(画像右)

     それぞれの専門家が心理学の知識や霊能力、そしてオーラを見る力を持つ子どもたちに具体的なギフテッドとして生きる上でのアドバイスを与えていく。さらには、交信相手である霊がかつて肉体を持って存在していた人間であったことを示す出生証明書まで取得し、子供たちの能力が本物であることが明らかにされる。

    (上下)「霊が視える」という少女の証言を証明するため、あるときは古い文献にあたり「霊」が過去に実在した人物だったことを探し当てる。

    生い立ちから「霊といっしょ」の子どもたち

     番組で紹介される子供たちとこの世ならぬもののかかわり方はさまざまだ。声だけが聞こえたり、姿が見えたり、追いかけてきた犬を撫でようとすると、突然消えてしまったり……。気配だけしか感じない場合もあるのだが、共通しているのは、対峙する存在から喜怒哀楽の感情をストレートに受け取ることだ。
     大抵の場合は怒りと悲しみなのだが、向こうの世界で生まれるネガティブな感覚が悪いバイブス となって物質世界で共鳴を起こし、受信機のような働きをしてしまう子供たちに、たとえば激しい頭痛のような症状をもたらすのではないだろうか。

     幼いころに心臓手術を受けたときの臨死体験がきっかけになったり、遺伝のように母親から受け継いだりと、子供たちが特殊能力を宿すまでのプロセスも多様で興味深い。また、地縛霊的なものからも、憑依霊的なものからも影響を受けてしまう。よって、たとえば引っ越しをして環境を変えても、問題の本質的な解決にはつながらない。だからチップ・コフィは、相手が子どもであるのにこれ以上ないほど冷徹な口調で事実を伝える。

    「君は、呪われているんだ」

     しかし、ネガティブきわまりないこのひと言で、子供たちが置かれている状況が好転し始めるから不思議だ。

    (上下)予知夢を見たり、ヒーラーの素質を発揮したりと子供たちの能力はさまざま。専門家たちはその特性にあわせて解決策を模索する。

     特殊能力者である子供たちに対しては、彼らの目に理不尽に映る世間との関わり方を伝えるカウンセリングであり、理解しようがない事実を突きつけられて戸惑うばかりの親たちに対しては、ガイダンスでもある。各エピソードのラストに流れる”ベストフレンド”を見つけた子供たちの笑顔に救われる。

    パラノーマル・チルドレン~超常現象体験児~
    原題:Psychic Kids:Children Of The Paranormal

    「霊視」という特異な能力を持って生まれる子供たち。10代の若き彼らは、その強大な能力に翻弄され、友人関係や私生活が崩壊寸前になる者も多い。そんな彼らを救う術は、能力の消滅ではなく、霊との向き合い方を学ぶこと。専門家とセラピストによる、驚きの救済が始まる。

    Amazonプライムビデオ、Hulu、U-NEXTほか各種動画配信サイトにて配信中

    (「月刊ムー」2023年7月号より)

    宇佐和通

    翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。

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