自然発生した敬愛を神社フォーマットで表す! 「コンセプト神社」の数々

宗建イ

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    「なにごとの おはしますかは しらねども かたじけなさに なみだこぼるる」ーー 自然と信仰が集まった「神社フォーマットの場所」がある。コンセプト主体の神社は案外信仰の原型を示しているのかもしれない。

    自販機が神社になっている

     2024年5月某日に筆者は宮城県の名取駅にいた。タクシーに乗ってあるSNSで知った神社に向かったのだ。降りた場所にはズラッと自販機が並んでいる。そこには鳥居があり交通安全とともに自販機神社と書かれていた。正式名称を自販機神社with DRINK自販機ショップ名取愛島と言う。ドリンクが並ぶ自販機の中におみくじや御守りの自販機もあった。

     ここに自販機を設置したサンベンディング東北の公式サイトよれば名取に自販機の聖地をつくりたい、世界に向けて日本の自販機文化を発信したいという思いから観光スポットとして鳥居を設置したという。ある意味では現代の神社縁起としても読めるかもしれない。

     私は感慨深く自販機の飲み物を飲みながら自販機神社をあとにした。

      写真提供=株式会社サンベンディング東北。
      写真提供=株式会社サンベンディング東北。
      写真提供=株式会社サンベンディング東北。
      写真提供=株式会社サンベンディング東北。

     このような現代的な神社をモチーフにしたスポット、あるいは神社スポットは他にもあるのだろうか?

     それがあるのだ。いくつかご紹介したい。

     たとえば、栃木県栃木市の「岩下の新生姜ミュージアム」内にあるジンジャー神社。
     ミュージアム内に拝殿の柱が新生姜の形をしたジンジャー神社が建立されている。御祭神である鹿角生姜命は岩下食品が台湾で発見した本島姜(ペンタオジャン)に由来する。社屋で祀られていたが2012年の岩下の新生姜ミュージアム開館をきっかけに御神体としてこの神社に祀られた。
     狛犬がいるところには岩下の新生姜および岩下食品の公式キャラクターであるイワシカが並び全体的にポップな印象の神社である。ご利益は生姜の効果になぞらえて夫婦・恋人の仲が温まるという。

    「岩下の新生姜ミュージアム」内にあるジンジャー神社。

     そして、宮城県気仙沼市にある「気仙沼「海の市」」内の海の子神社。
     狛犬に当たる台座にはご当地キャラのホヤぼーやが対になっている。神社はホヤぼーやショップの隣にあり絵馬をかけれる。お賽銭は災害義援金として使われる。

    「気仙沼「海の市」」内の海の子神社。

     お次は、横浜市都筑区にある「げんき大明神本殿」。
     サードプラネットが運営するサープラ横浜あそびタウン内にあるコーナーであり四種類祈願が出来るようになっている。げんき大明神本殿のご神体のようでもある招き猫ペリー(同施設のマスコットキャラクター)と、参拝者を囲むように鎮座する「青龍」「朱雀」「白虎」「玄武」の四神(ビッグクラッピー)が、参拝者の名前を呼んで手を叩きながら数分間喋り祈願と励ましのメッセージをくれる。
     ご利益としては学業成就や家族の開運を応援してくれるという。また店内で引ける「おみくじ」は年一回、下関市にある赤間神宮に奉納される。

    げんき大明神本殿。写真提供=株式会社サードプラネット。

     もっとある。
     横浜市鶴見区にある「ファンタジー&スパおふろの国」の熱波神社。
     御神体はプロレスラーであり日本ロウリュ熱波ワークの親方でもあるアブドーラ・小林氏の顔をモデルに漫画家のメソポ田宮文明氏がつくったものである。熱波神社のご利益は血行促進、免疫向上、ストレス解消という。ちなみにロウリゥとはフィンランド発祥のサウナ入浴法で、熱波とは蒸気など熱い空気を指し、それを送る人は熱波師と呼ばれる。

    「ファンタジー&スパおふろの国」の熱波神社。

    神社というフォーマットの信仰スポット

     また年末年始にかけてショッピングモールなどで鳥居のPOPが置かれたりするのを知っている方もいるのではないだろうか。また他の現代の神社スポットを知っている方や訪れた方もいるかもしれない。

     なぜ商業施設はじめ色々な場所で神社が建立されるのだろうか。
     目的は様々であるが語弊を恐れずに言えば、多くの日本人にとって神社は親しみ深くかつご利益がありそうと感じるからではないだろうか。

     神社形式は参加の作法(参拝・賽銭・祈願など)が共有された馴染み深いフォーマットに他ならず神社の構成要素と合わせて縁起が良さそうな雰囲気を喚起すると考えられるからだ。イベントに合わせて神社風フォトスポットやPOPの鳥居が設置されるのもこの理由ではないだろうか。

     これらの神社の特徴として名前はコンセプトを冠した神社も多いので(気仙沼市にあるホヤぼーや神社、名取市にある自販機神社など)、筆者は便宜上、これらをコンセプト神社と呼んでいる。

     コンセプト神社は神社のシンボル(鳥居、拝殿、御神体など)を現代的な文脈で再解釈している点が面白い。狛犬の代わりにマスコットキャラクターがいたり、フォーマットに準じつつも、あくまでも「神社風」「神社っぽい」に留まる。げんき大明神本殿などではおみくじが奉納されているが、これも様式美といえる。伝統的な神社のフォーマットが、現代において敬愛や親密感を表現する場として採用されている。そう言えば軽薄にも思えてしまうが、すべて純粋な気持ちの表れである。古来の磐座信仰もそんな素朴な思いから始まったのかもしれない。

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