山の死者が見せるのか? 「空に浮かぶ幻の十字架」現出譚/黒史郎・妖怪補遺々々
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アニメ「ダンダダン」に登場する呪われた存在「邪視」は、シリーズを通して屈指の人気を誇る妖怪だ。ここでは、そのモチーフとなったあの有名な都市伝説とともに、その魅力を探るべく深掘りしていきたい──。
アニメ「ダンダダン」は女子高生の綾瀬桃(モモ)と、オカルトマニアの同級生である高倉健(オカルン)がひょんなことから妖怪や宇宙人と対峙し、激しい戦いを繰り広げるオカルティックバトル作品だ。
現在、第2期を放送中だが、そのエピソードの中で登場するのがシリーズ屈指の人気キャラクターである「邪視」。今回はその邪視の魅力を深掘りしていくと同時に、その源流となったあの都市伝説にも触れていく。
「ダンダダン」に登場する邪視は、モモの幼馴染であるジジの目の前に突如として現れた怪異である。その容姿は異様に長く伸びた手足、耳元までつり上がった口角、そして巨大な両目と一目見ただけでこの世のものとは思えないほど不気味だ。また全身裸で白のブリーフ一丁だけ身にまとっているのもインパクト大。
その正体は、ジジの実家である円城寺家の地下深くに埋められていた少年の怨念だった。幼き頃から座敷牢に幽閉され、火山鎮火のための人柱として育てられるだけの存在。同じ年ごろの友だちたちが外で楽しそうに踊っているのをうらやましそうに覗くことしかできず、やがて牢の中で一人その踊りをくねくねと踊ることだけが喜びであった。そしていざ生贄となるその瞬間、不条理な人生を呪い、他人を憎み、すべてを破滅へと導く邪視が誕生する。
もともとサッカーが好きなジジはフィジカル面も強く強靭な肉体を持ち、さらにずば抜けた霊感の持ち主だったこともあり邪視にとっては格好の獲物だった。やがてジジの隙をついて身体を乗っ取ると、その姿は額に大きな紫の目を開き、両耳に光り輝くイヤリングを付けた完全体へと変化。邪念を球体化し、それをサッカーボールのように蹴って超速攻撃を繰り広げる。
ターボババアの力を持つオカルンとぶつかり激闘を繰り広げるも、お互いの力を認めあうとその後は頼もしい味方となってモモやオカルンを助けていくようになる。

邪視の源流となる元ネタはいくつか見受けられる。まず人柱となった子ども時代に踊っていた姿は、白い着物に両手をくねらせて動かすというもの。これは現代の都市伝説「くねくね」がモチーフとなっている。
「くねくね」は2003年頃にネット掲示板の2ちゃんねるに登場した怪談だ。とある兄弟が田舎に遊びに行き、家の窓から外を眺めていると遠くの田んぼでなにやら白いものがくねくねと踊っている。弟はそれがなんだかさっぱり分からなかったが、兄はそれが何者かを理解した。そして正体を教えてほしいと懇願する弟に対して「わからない方がいい」とだけいい、その後精神に異常をきたしてしまう──。
その後、このくねくねという怪談は転載を繰り返すうちにディティールがより細かくなっていき、さらに怪異を増していく。最終的にはその兄の姿を見た祖母が「うちに置いといて、何年か経ってから田んぼに放してやるのが一番だ…」と言い放つというなんとも後味の悪いエピソードが追加されている。
改めて「くねくね」と邪視の共通点を見ていくと、「白い身体」「くねくねと不思議な動きで動く」「視線があうと精神に異常をきたす」と多岐に渡る。ダンダダンではこのくねくねを「山の怪」と位置づけ、誕生エピソードを独自の解釈で描くことで共感性を持たせることに成功している。
ではこの都市伝説としての「くねくね」の正体は一体なんだろうか。一説には「妖怪の一反木綿だった」「命を奪うしょうけらだった」、また「自分の顔が描かれたドッペルゲンガーだった」など様々な考察が存在する。が、いずれにせよ「分からないほうがいい」という最後の台詞の通り、最終的にその正体を突き止めることをタブー化したがゆえに「永遠に解決しない恐怖」として現代まで語り継がれる都市伝説に昇華したのだろう。
また、邪視は邪念を球体化させたり、邪念を壁にして対象者を囲み、呪いの家に閉じ込めることができる。こちらの元ネタはホラー映画「呪怨」でもおなじみの呪いの家であり、いわゆる事故物件の類をモチーフとしているようだ。
怨霊たちが渦巻く密室内では手が付けられないほどの呪いが襲い掛かってくるのはホラー映画もダンダダンも同様。一歩その中に足を踏み入れてしまったら最期、二度と出る術はない…。
登場キャラの中でも無類の強さを誇る邪視。アニメ2期の前半で登場した際は絶望を覚えるほどの強敵として立ちはだかったが、後半は一転してオカルンやモモとの共闘が繰り広げられるはずだ。
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