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人魚の肉を食べた女性が不老長寿の肉体を得たがために、夫や知り合いとも死に別れ、ついには比丘尼となって旅に出る──有名な八百比丘尼の物語だが、全国を旅したとされる彼女は、最後に若狭国(現在の福井県)小浜市の空印寺にある「八百比丘尼入定洞」に入定したといわれている。
その小浜市に伝わる伝説を紹介しよう。
──斉明天皇の時代(654年ごろ)、小浜市の勢というところでひとりの女の子が生まれた。肌が白く顔形も整い、知性も徳も備わっていたので、人々からは神か仏の再来と崇められていた
彼女が16歳になったときのこと。父親が「竜宮のおみやげ」として人魚の肉を持ち帰ってきた。彼女がそれを食べると歳をとることがなくなり、いつまでも美しい姿のままいられるようになった。
周囲はますます彼女を崇めたが、本人にとってそれは、苦しみの始まり以外のなにものでもなかった。夫や友人が皆亡くなっても、自分だけ老いることができない。これは真の意味での孤独を意味していたからだ。
かくして120歳になると彼女は髪を剃りおとし、比丘尼の姿になって全国へ旅に出た。
道中は各地で何十年と定住し、神社仏閣などを建立。橋をかけ、道路をつくり、人々に正しい信仰と道徳を教えつづけた。そして800歳を迎えるころ、ようやく故郷に帰ってくる。そこで岩窟に入り、静かに入定したというのである──。
この岩窟は、今でも空印寺の境内に残されている。残念ながら落石の恐れがあることや、内部が水に浸っていることから、なかに入ることはできない。それでも八百比丘尼の霊験はいまもあらたかであり、入定洞の前で福徳長寿、病気回復、願望成就を祈ると、その加護を得ることができるといわれている。
ちなみに民俗学者の柳田國男によれば、八百比丘尼の伝説は北海道と九州南部以南を除く日本全国で見られるという。まさにそれは、彼女が「生きた」道筋であり、証拠なのかもしれない。
(月刊ムー 2025年7月号)
中村友紀
「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。
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