アラハバキは義経だった!? 青森・松尾神社からたどる古代英雄信仰
数十年前、未知の東北王国の神として大きく注目を集めた謎の神・アラハバキ。その正体は現在も未解明だが、東北に謎を解くカギとなる神社があった!
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北海道余市の「フゴッペ」には、心霊スポットとなった洞窟、最古の龍神神社、宇宙人を描いたような壁画がある。それらの関連は古代からの聖地であることを示唆するのか?
私は普段、北海道札幌市の繁華街、”ススキノ”にある『怪談ライブBAR スリラーナイト』というバーで怪談をしている。ここは1時間に1回、15分間の怪談ライブがあり、お酒を飲みながら生の怪談が聞けるという、怪談好きには嬉しいコンセプトバーだ。
ここで仕事をしていると、来店したお客様から怪談話が舞い込んで来ることも多々ある。その後の取材や、頂いた情報を通じて、自分が既に知っている話でも突拍子もないところから新たな肉付けがされることもあり、私がこの仕事におもしろさを感じる部分でもある。
そんな中から今回は、私の地元にある ”とある神社” に纏わる話をさせて頂きたい。
私の出身は、札幌から車で1時間半程走ったところにある、余市町という町だ。ウィスキーとリンゴの町、と言えばわかる方がいるだろうか。10年前くらいに某ウィスキードラマの舞台にもなった、まぁ田舎町だ。
札幌から小樽方面へと向かい、海沿いをずーっと進むと余市に着くのだが、この小樽と余市のちょうど境目に「フゴッペ(畚部)トンネル」というトンネルがある。
この「フゴッペ」というのはアイヌ語で、今でも付近の岬や川にその名前が残っているのだが、現在でも語源はよくわかっていないらしい。明治初頭、このフゴッペトンネル一帯は二つの町をまたがるようにして「フゴッペ村」と呼ばれていて、アイヌ民族とは別の民族が住んでいた……とか。
これだけでもなかなか興味深いのだが、実はこのフゴッペトンネル、地元では30年以上前から色々と噂がある心霊スポットなのだ。
都市伝説で有名な「首なしライダー」が出たとも言われているこのトンネルは、昔から付近では交通事故が多い場所として有名だった。近くのバス停周辺には花束が添えられてるのが目に入ることも多く、深夜のバス停に小学生ほどの男の子が立っているのを目撃した人の話が後を絶たない。
数年前に新道としてもう1本トンネルを増やしてからは事故も少なくなったと思うが、私が住んでいた頃は、トンネル付近で不審な人影を見かけて事故を起こすという話が定着していた記憶だ。
また、近くには蘭島海水浴場があり、夏場は海水浴客で賑わう場所でもあるのだが、そこに訪れた方が実際に体験した話を聞いたこともある。
しかし今回はその話ではない。
トンネル脇にある民家を山の方に向かって抜けると、立入禁止の看板と柵、そして奥には赤い鳥居が見えてくる。
この先には「金吾龍神社」という神社がある。
実はこの神社、2015年頃の台風で本社が倒壊してしまい、以降現在まで立入禁止となっている。しかしそれを機に、本社を東京新宿・代々木のビルの一室に移し、現在では「室内型の神社」として、参拝や御朱印の購入ができるようになっている。最近ではメディアでも取り上げられたり、金吾龍神社の公式SNSアカウントが積極的に活動していたりで、名前を聞いたことがある方もいるかもしれない。
さて、現在は一風変わった場所にあるこの神社だが、実は “最古の龍神” が祀られているという日本有数の神社なのだ。
この神社の前身となる祠がこのフゴッペに建てられたのが15世紀頃と言われている。
金吾龍神社からすぐ近くに「フゴッペ岬」なる岬があるのだが、日本海側に向かって細長く伸びるその岬を龍神の姿とし、それ自体を御神体とした自然崇拝がここで行われてきたという。この御神体であるフゴッペ岬を中心とした一帯は、縄文時代の頃からアイヌ民族にとって聖地として栄えていたのだ。
それを物語るのが、これまたすぐ近くにある「フゴッペ洞窟」だ。
1950年頃に札幌市内から海水浴に訪れた当時中学3年生によって発見されたというこの洞窟なのだが、その内部には縄文時代の人たちが残した壁画が数多くある。
そしてそこには、翼の生えた人間のような画や、角の生えた人間のような画も残されている。司祭やシャーマンがつける装飾品を表したものだとも言われているのだが、「ムー」的な視点で見るとどうしても「古代人と地球外生命体との接触を意味する明らかな証拠」にしか見えない……。
このフゴッペ洞窟の壁画は一般公開もされているので、興味がある方は是非とも一度「ムー」を片手に見ていってほしい。(*毎年12月中旬から4月上旬は冬期間につき閉館となっているので要注意)
さらに付近の山中には、環状列石群、いわゆるストーンサークルや貝塚も存在する。このストーンサークルは縄文時代のひとたちの “集団墓地” として機能しており、周辺を掘り返すと縄文時代の人骨や土器が数多く出土している。
石で囲った区画に亡くなった人を埋葬するのだ。これは当時ここにいた人たちが “生活の場” と “儀式の場” を分けて生活していたことを意味している。
さて、このように金吾龍神社がある一帯は、ここが縄文時代の頃から聖地として存在していたことを示す痕跡が今でも残っている。やはりこの神社は特別な神社なのかもしれない。
先に紹介した余市と小樽の境目にある「フゴッペトンネル」に話を戻そう。
このトンネルは、そんな数多くの古代人たちが眠る山を掘って作られている。心霊スポットとしてのトンネル、というのはとてもありがちなものだが、私が知っている限りでもここのトンネルは昔から交通事故が多いのは事実だ。
実は以前、心霊話としてこのフゴッペトンネル付近を取材する機会があり、その際に紆余曲折あって今回の金吾龍神社に辿り着いたのだが、その際に「フゴッペトンネル自体が大きな霊道になっている」という話をとある筋から聞いた。
これはまさに「縄文時代の墓地を掘って作られたトンネル」とリンクするような話ではないだろうか。縄文時代からの霊道となれば、だいぶ年季も入っていることだろう。このトンネルで度々起こる事故や怪談は、この聖地に手を加えてしまったことと何か関係があるのかもしれない。
さらには金吾龍神社の倒壊も、この土地の何かのバランスが崩れたことで起こったのではないだろうか、とまで考えてしまうのだ。
今回は金吾龍神社にフォーカスして紹介させて頂いたが、他にも幽霊・UFO・スピリチュアル系…と、余市には意外とオカルトネタが多い。しかし特にこの神社周辺に話が集中しているのは、歴史を知れば「そういう土地だから」ということなのだろう。
現在、金吾龍神社は再建に向けて活動中とのことだが、本来の場所に神社が戻るとき、それはまたフゴッペが聖地としての役割を取り戻すときかもしれない。
最後に込み入った余談だが、この金吾龍神社に祀られている「アラハバキ」についても触れておきたい。「荒ぶる神」を意味する、日本神話や民話から消された太古の神で、強大な祟り神だが正しく祀れば守護神となる、という。現代でも全国各地にアラハバキを祀っている神社があるのだが、その起源はよくわかっておらず、その姿は龍や蛇、または土偶で描かれたりと、アラハバキの解釈も諸説ある。
その中でもこの土地では龍神としてのアラハバキを祀っているわけだが、一説によると「ハバキ」は古語で「蛇木(ははき)」であり、樹木を蛇(龍)に見立てて古来の祭りの中枢に置いたとされている。
そして私の地元である「余市」だが、語源はアイヌ語の「ユーチ」また「イオチ」が転化したものとされている。
その意味は「多くの蛇がいる所」。ーーもちろんこちらも諸説あるのだが、これらのことから、元々この土地には信仰より以前に ”蛇” なるものがたくさんいたと考えられる。
アラハバキが日本神話から消されている理由はわからないが、祟り神ということを踏まえると、元々この土地は人が住みやすい土地ではなかったのかもしれない。それを鎮めるために、祟り神としてのアラハバキを信仰し始めたとは考えられないだろうか……。そしてアラハバキは守護神となり、後に聖地化していった、ということなのかもしれない。
”蛇“ は、世界各国の神話や民話に邪神として語られている。余市、蛇、リンゴ、フゴッペ壁画の翼人……と関連をたどれそうだが、そこはまた別の機会に残しておこう。
ダイ(藤田第六感)
怪談ライブBarスリラーナイトすすきの店の怪談師。怪談話だけではなく都市伝説も探求している。北海道の余市出身。
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