怒れる母性を宿す人面の女獣「スフィンクス」/幻獣事典
世界の神話や伝承に登場する幻獣・魔獣をご紹介。今回は、エジプトとギリシアにまたがる「スフィンクス」です。
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ギザの大ピラミッドの前にそびえる巨大な獣神像──スフィンクス。そこに秘められた階層的な謎とは? CS放送「ヒストリーチャンネル」の人気シリーズ「古代の宇宙人」から、注目の番組を厳選紹介!
「朝は4本足、昼は2本足、夕方は3本足の生き物は何か?」──その昔、自分の前を通る旅人にスフィンクスが投げかけたという、有名ななぞなぞだ。今回の番組の主役は、そのスフィンクス。だれもが知っているが、本質を知る人はいない。まさに不思議という言葉を形にしたような謎の古代建造物ということができるだろう。
スフィンクスの謎は、階層構造にたとえることができる。最初の謎は何といっても建造年代だ。主流派科学の枠組みの中では紀元前2500年に建造されたというコンセンサスができあがっているが、これをそのまま鵜呑(うの)みにするわけにはいかないようだ。
スフィンクスに対する集約的な検証を20年以上にわたって行っている地質学者ロバート・ショック博士は、スフィンクス本体を囲むようにして建てられている壁状構造に注目する。この構造に残された水分=雨による浸食痕(しんしょくこん)を基準として考えた場合、スフィンクスが建造された時代は1万〜1万2000年前になるというのである。
実はこの仮説はかなり長い間語られているのだが、そこから先が一向に進まない。科学的なファクトがあるにもかかわらず進展がないとなると、何か裏があるのではないかという気になってしまうのは筆者だけではないはずだ。
またスフィンクスの足下には、“夢の碑文”と呼ばれる石板に記された文書がある。砂に埋まった状態だったスフィンクスの本体を掘りだしたトトメス4世が残した記録だ。
ある日トトメス4世は、首まで砂に埋まるスフィンクスの横で寝ていた。すると夢の中にスフィンクスが出てきて、
「掘りだしてくれたら王にする」
と語りかけてきたという。トトメス4世は王の息子ではあったが、正当な王位継承者ではなかったのだ。ところが、夢の通りにトトメス4世が砂を取りのぞくと、本当に王位に就くことができたというのだ。
この番組ではさらに、3大ピラミッドとスフィンクスがあるギザ台地と、火星のシドニア地区の地理的類似性が語られる。1997年7月に火星表面への着陸に成功した探査船マーズパスファインダーは地球に多くの画像を送ってきたが、その中に大ピラミッドを思わせる巨大な山をバックにした、横向きのスフィンクスにしか見えない物体の映像があった。しかもこの物体の頭と思われる部分は、火星の日の出の方向を見据えていた。ギザのスフィンクスの視線の先にも、日の出がある。この一致は何を意味しているのか?
他にもスフィンクスについては、どうしても触れておかなければならない事実がある。
2018年8月、エジプト、ルクソールの道路建設現場で、“第2のスフィンクス”と思われる遺物が発見されたというニュースが報じられた。場所は王家の谷からわずか10キロの地点だ。
第一報以降はそれほど大きな動きはないものの、このニュースが本当ならあの夢の碑文の信頼性が上がることになる。碑文の最初の部分に、背中を向かい合わせる形で2頭のスフィンクスが描かれているからだ。これについて、「やはり」と感じているエジプト学の専門家は意外に多いという話も聞く。
スフィンクスが2体一組の建造物であるという仮説は昔から根強くあった。古代エジプトでは陰陽の対極構図が重んじられ、スフィンクスも同じ思想のもとで建造されたものであるという仮説を支持する研究者は決して少なくはないからだ。
ただ、高名なエジプト学者バッサム・アル・シャマー博士は、その2体目が完全な形のままどこかに埋まっているとは思っていないようだ。だが、その痕跡がカフラー王のピラミッドの付近で見つかる可能性なら、きわめて高いとしている。博士がいう通りの位置にあるとすれば、ギザのスフィンクスとそれは、日本の神社の狛犬のような形で並ぶことになる。
番組のチーフナビゲイターを務めるジョルジオ・ツォカロスは、太古の地球を訪れた地球外生命体と古代エジプト人との共同作業を通してスフィンクスが建造された可能性を語る。これがほんの一部でも事実なら、人類の発展に地球外生命体が関わっていたとする“古代の宇宙飛行士説”の正当性が証明されることになるだろう。
夢の碑文には、2頭のスフィンクスの頭上に輝く円盤状の物体が描かれている。前述の通り、この碑文はトトメス4世に関する記録だ。その子孫にあたるアメンホテプ4世は、古代エジプト史上初めて一神教を確立した王として知られている。崇敬対象となったのは、アテン神という神格だ。ところがこの神格は具象的な姿を持たず、光る円盤として描かれていた。もしかすると1000年を隔てて王位に就いたふたりの王、トトメス4世とアメンホテプ4世は、同じ存在を同じように感じ取っていたのかもしれない。
建造年代さえも特定できないスフィンクスの階層的な謎──そのすべてが解き明かされるのがいつになるのか、筆者にもわからない。だがそのときには、地球史における人類と地球外生命体の具体的な関わりが認識されることだろう。
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(ムー2020年5月号掲載)
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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