聞いてキイテ…清水崇『ミンナのウタ』の謎映像が公開される
『呪怨 』や『犬鳴村』を手掛けた、Jホラーの巨匠・ 清水崇監督の最新作が情報公開された。タイトルは、『ミンナのウタ 』 という……。
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、ギザの大ピラミッドと並び、古代エジプト文明をめぐるミステリーの代名詞的な存在である巨大な彫像を取りあげる。
ギリシア神話においてスフィンクスは、上半身が美女で下半身がヘビである怪物エキドナが、自らの子であるオルトロスと交わって生まれたとされる。その姿は、ライオンの身体に人間の女性の顔と翼を持って描かれる。
このライオンの胴体に人の顔を持つスフィンクス像は、古代エジプトの遺跡からも数えきれないほど出土しているが、それらの中で格段に巨大で最も古く、名高く、さらに今になっても多くの謎に包まれているのが、ギザの三大ピラミッドの近くにあるスフィンクス、通称「大スフィンクス」だ。
これは、ギザにある岩盤を削って造られた高さ20・22メートル、長さ72・55メートルという巨大な彫像であるが、文字で書かれた記録はいっさい見つかっていないため、いつだれが建てたのか、建造当時には何と呼ばれていたのか、正確なところはわからない。
ただ、エジプト学者の大多数は、古王国第4王朝時代、ギザの第2ピラミッドを建てたカフラー王が、自分のピラミッド・コンプレックス(複合祭祀施設)を建設したのと同時期に、この大スフィンクスを彫ったとする説を支持してきた。
大スフィンクスの顔も、カフラー王に似せたものだとされる。この説の大きな根拠となっているのが、カフラー王から1000年以上後になる新王国第18王朝時代のファラオ、トトメス4世が残した「夢の碑文」と呼ばれるものである。
古王国時代、巨大なピラミッドをいくつも建造した強大な王権にもやがて陰りが生じ、エジプトは紀元前2180年ごろから混乱状態に陥ってしまった。大スフィンクスもいつしか忘れ去られ、新王国第18王朝時代にはすっかり砂に覆われていたようだ。
そんなある日、まだ王子のひとりにすぎなかったトトメスは狩りに出かけ、スフィンクスが埋まっている砂丘の上で居眠りをしていた。すると夢の中に大スフィンクスが姿を現し、自分を掘りだしてくれたらお前を王にしてやると告げたのだ。
トトメスには兄がおり、当然この兄が王位を継承するものと思われていたが、結局トトメスが父アメンヘテプ2世の後継者として即位した。晴れてトトメス4世となったとき、彼は大スフィンクスの前足の間に、事の顚末を記した碑文を設置した。
この碑文は1818年、イタリアのエジプト学者であるジョヴァンニ・バッティスタ・カヴィグリアによって発見された。そして、その拓本を解読したイギリスの物理学者トーマス・ヤングは、碑文の中に「カフ」と読める文字を発見し、これをカフラー王のことと解釈したのだ。
さらに、大スフィンクスがカフラー王のピラミッド・コンプレックスと一体化していることも、これらが同時期に造られたことを推定させるし、アメリカの考古学者マーク・レーナーは、写真測量データとコンピューター・グラフィックスを使って調査した結果、大スフィンクスの顔がカフラー王の肖像と一致すると述べている。
他方、大スフィンクスがカフラー王によって建造されたという説に対しては、エジプト学者の間にも異論がある。
まずトトメス4世の「夢の碑文」であるが、現在は問題の部分が剥げ落ちて残っておらず、確認することができない。
大スフィンクスの顔がカフラー王の肖像に似ているという点に関しては、1993年、ニューヨーク警察のベテラン法廷画家フランク・ドミンゴ警部補がカフラー王の彫像と大スフィンクスの写真数百枚を比較し、「大スフィンクスはカフラーではない」と結論している。
1858年、エジプト考古学博物館初代館長でもあったフランスのオギュスト・マリエットがギザで発見した「インヴェントリー碑文」と呼ばれる石盤には、「クフ王がスフィンクスを見た」と記されている。この記述が正しいなら、大スフィンクスはカフラー王の父であるクフ王の時代にはすでに存在していたことになる。
さらに第2代エジプト考古学博物館館長を務めたガストン・マスペロもまた、大スフィンクスは「ホルスに従う者たち」の時代、つまり先史時代から存在したのではないかと唱えたことがあり、2000年にカイロで開催されたエジプト学国際会議では、ドイツのエジプト学者ライナー・シュタデルマンが、大スフィンクスはクフ王が建てたという説を披露した。
エジプト考古学では日本随一の権威である吉村作治もまた、ギザに3つのピラミッドが造られる以前から、大スフィンクスは存在したと主張している。
そして地質学者の中には、大スフィンクスの浸食状態から、考古学の常識を覆すほど古い時代に造られたと唱える者たちもいる。
大スフィンクスの浸食に最初に注目したのは、フランスの錬金術師ルネ・アドルフ・シュワレ・ド・リュービックであった。シュワレ・ド・リュービックは本来化学者であったが、神智学協会会員でもあり、エリヤ兄弟団という秘密結社にも属し、1926年にユジェーヌ・カンセリエとともに『大聖堂の秘密』を著したジャン・ジュリアン・シャンパーニュとは友人でもあった。
当初ゴシック建築と錬金術の関係を研究していたシュワレ・ド・リュービックであったが、やがて古代エジプトの神秘思想に魅せられ、1938年から1952年にかけてエジプトのルクソールに移り住んだ。
ルクソール神殿をはじめ、エジプトに残る数々の古代遺跡の研究を行った結果、彼は「エジプト文明は伝統的なエジプト学者が提案するよりずっと古い」と主張した。また大スフィンクスの表面には大量の水による浸食の跡が見られることから、エジプトは今から1万2000年以上前に大洪水に襲われ、大スフィンクスはすでにその時代から存在していた、と述べている。
このシュワレ・ド・リュービックの主張を復活させたのが、アメリカの著述家ジョン・アンソニー・ウエストであった。ウエストはボストン大学の地質学者ロバート・ショックと連絡をとり、事の真相を確かめるべく一緒にギザを訪れた。じつはショークは当初、ウエストの主張には懐疑的だったのだが、地質学者としての彼の目からも、浸食が水によるものということは明らかだった。
ショークはこの水の起源を降雨によるものと考え、大スフィンクスに浸食を招く降雨があったのはカフラー王の時代より数千年前のことであり、したがって大スフィンクスは紀元前7000年から紀元前5000年に造られたと結論した。
この説をさらに発展させたのがジャーナリストのグラハム・ハンコックと建築家のロバート・ボーヴァルで、彼らは大スフィンクスの建造年代を、ショックの説よりさらに古く、紀元前1万年ごろに設定する。
さらに2008年には、ウクライナのマニチェフ・ヴィアチェフとアレキサンダー・G・パルコメンコのふたりが、大スフィンクスは今から80万年前に造られたと発表し、また火星の「人面岩」と大スフィンクスとの関係を指摘する意見もある。
もちろん正統派のエジプト学者たちは、こうした主張は疑似考古学にすぎないとして見向きもしない。大スフィンクスの浸食については、地下水の塩分によるものとする反論もある。
一方、透視能力によって、大スフィンクスが今から1万2000年以上前に造られたと述べたのが、世界三大予言者のひとり、アメリカのエドガー・ケイシーである。
ケイシーは特定個人の前世に関する、いわゆるライフ・リーディングを数多く残したが、その中で相談者の古代エジプト時代の前世について語っているものがいくつもある。
そうしたリーディングによると、大スフィンクスは紀元前1万500年、当時の知識の記録を保管した地下の保管庫を守るために作られ、その顔は当時のエジプト王アラーラートの第一顧問であったアズリエイオを模したものだという。
この記録保管庫は大スフィンクスとナイル川の間にあり、そこに通じる通路が大スフィンクスの右足にあるともいう。
この秘密の通路なるものに関連し、大スフィンクス周辺には、何らかの地下構造があることが確認されている。
大スフィンクスの側面やお尻の部分、さらに背中などにはいくつも縦穴が残っている。ただしこれは、紀元前500年ごろ、古代エジプトが衰退した末期王朝時代に、大スフィンクスに隠されたという財宝を捜すために掘られたとされている。
1982年には、アメリカのスタンフォード研究所が音響測定装置を用いて大スフィンクス周辺を調査し、3か所で空洞らしきものを発見した。
さらに1987年、吉村の率いる早稲田大学の発掘隊は、大ピラミッド南部や大スフィンクス周辺の電磁波レーダー探査を行い、大スフィンクスの前と左の肘の下に空間が存在することを確認した。
こうした調査結果については、地下水脈による空洞ではないかとの反論もあるが、早稲田大学の探査は、大ピラミッドの南側に埋められた2隻目の太陽の船発見にも結びついていることから、その調査結果はかなり信用できるだろう。
これらの発見に対し、なぜかいまだに詳しい検証が行われていないようだが、再調査が行われればケイシーのリーディングを裏づける証拠が見つかるかもしれない。
一部では、大スフィンクスの視線をたどると日本のある場所に行きつくという主張もある。大スフィンクスは北緯29度58分31秒の位置にあり、ほぼ真東を向いているから、同じ緯度をたどっていくと、日本のトカラ列島の口之島あたりになる。
しかし、地球は球体である。実際に、地球儀の上でスフィンクスの視線をまっすぐ延ばしていくと、日本ではなく太平洋の海上に達してしまう。どうやらこの話は、単なる都市伝説に過ぎないようだ。
●参考資料=『エドガー・ケイシーのエジプト超古代への挑戦』(マーク・レーナー著/中央アート出版社)、『ピラミッド・タウンを発掘する』(河江肖剰著/新潮社)、
『エドガー・ケイシーの予言』(マリー・エレン・カーター著/たま出版)、『超古代ピラミッドとスフィンクス』(吉村作治著/平凡社)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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