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仏滅から56億7000万年後に地上に降臨し、末法の世を生きる人類を救済してくれる──。 そう信じられてきた弥勒菩薩だが、「じつはすでに意外な姿をまとってこの地球に降誕している」 という都市伝説が最近広まっている。 提唱者は手相芸人にして都市伝説テラーの島田秀平氏だ。
弥勒というと、京都・広隆寺に安置されている国宝、弥勒菩薩半跏思惟像─みろくぼさつはんかしゆいぞう─(宝冠弥勒菩薩半跏思惟像)のことを思い浮かべる人が多いだろう。台座に腰を下ろし、右足を曲げて左腿の上に置き、右手で頬杖をつき、深い思索にふける崇高な表情をみせる。この姿を見て、かつてドイツの哲学者カール・ヤスパースは「人間実在の最高の理念が表現されている」と激賞し、作家の稲垣足穂は「『宇宙的郷愁』に目ざましめる」と評した。
この広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像は飛鳥時代(7世紀頃)の作とされていて、聖徳太子が側近の秦河勝にこれを授け、河勝はこの尊像を安置するために広隆寺を創建したのだといわれている(異説あり)。もともとは弥勒信仰が盛んだった朝鮮半島の新羅で制作されたもので、そこから日本の聖徳太子に贈られたとする説もある。
経典によれば、弥勒菩薩(マイトレーヤ)は釈迦在世中(紀元前6〜前5世紀ころ)にはインドのバラモンもしくは大臣の子として生まれたが、釈迦から「あなたは将来、生まれ変わりをへて完全な悟りを得、ブッダ(仏・如来)となる」という予言(授記)を受けたという。つまり、弥勒は現世では悟りをめざして修行にはげむ僧侶であり、「菩薩」という段階にあるが、いずれ来世では、釈迦と同じように成道を遂げ、「如来( 仏)」となることが約束されているというのだ。
この伝承が発展すると、弥勒をめぐってこんな信仰が芽生えた。
「弥勒菩薩は死後、天上の兜率天(とそつてん)に往生し、今現在はそこで神々に対して説法をしているが、遠い将来には再びこの地上世界に来臨して受肉し、龍華樹(りゅうげじゅ)の下で悟りを開いて説法を行い、釈迦の説法から漏れた人々を済度(さいど)しくれるのだ」
兜率天とは、人間界のすぐ上に位置する六天(六種の天上界)のうち、下から4番目にある世界のことで、将来、仏となるべき菩薩が地上に下るまでの最後の生を過ごす場所とされ、弥勒が住まっていることから「弥勒浄土」とも呼ばれる。そして、いま説明したように、「兜率天に往生した弥勒菩薩が遠い将来、地上に姿を現し、この世の人々を救ってくれる」とする信仰を「弥勒下げ生しょう信仰(みろくげしょうしんこう)」と呼ぶ。「弥勒を人類の救世主(メシア)とみる信仰」といい換えてもいい。
こうした信仰を背景とするならば、弥勒菩薩半跏思惟像とは、はるか天上の兜率天にて、下生する時機を窺いつつ、衆生を優しく見守りつづける慈悲深い弥勒の姿を表現したものと理解することができるだろう。
(文=古銀剛)
webムー編集部
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