見てはいけない神々をいかに描くか? 江戸・明治の神話絵巻に見る「日本の神さま」/鹿角崇彦
「神々の描き方」は昔から不変ではなく、時代によってさまざまに変化してきた。江戸、明治から現在にいたる神々の姿を縦覧することで、その豊かなイマジネーションの世界を追体験してみよう。
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新郷村のキリスト伝説を現地取材。『竹内文書』が伝える古墳の物語の背景とは? 南朝・長慶天皇の陵墓との関連は…?
青森県・新郷村の不思議スポットで最もよく知られているのは、なんといっても「キリストと弟イスキリの墓」に違いない。毎年6月には神主が祝詞を上げ、『ナニャドヤラ』という歌に合わせて地元の人たちが兄弟の墓を周回するように踊る。神学者の川守英二氏は、とても日本語には聞こえないナニャドヤラの歌詞はヘブライ語にルーツがあると唱えている。

実際に訪れてみると、名前のような「珍スポット」感はなく、地域史に丁寧に組み込まれた場所であることがわかる。
キリスト兄弟の墓から少し下ったところに、守り役を果たしてきた沢口家代々の墓所がある。すぐそばに建つキリストの里伝承館で展示されている数多くの資料の中、沢口家に関する説明パネルに紹介されている写真の男性は、かなり西洋的な風貌をしている。沢口家の人々はキリストの子孫であるという話もあるらしい。



キリストが日本に来ていたという話の背景と根拠には、あの『竹内文書』が深く関わっている。伝承館には『竹内文書』の資料も展示されており、竹内巨麿(きよまろ)が文書の記述を頼りに新郷村を訪れ、キリストの墓を見つけるまでの詳しい経緯が示されている。この地の空気がそうさせるのか、無理のない話としてすっと入ってきて、納得してしまう。




キリストの墓には「十来塚」(とらいづか)、隣のイスキリの墓には「十代墓」(じゅうだいぼ)という別名がある。イスキリは兄の身代わりとなってゴルゴタの丘で磔刑に処された。そしてキリストはかつて神学を学んだ日本に逃れ、新郷村にやってきて亡くなり、後の時代に兄弟並んで葬られることになった。『竹内文書』には兄弟墓の背景にある物語がこう記されている。
新郷村とユダヤ文化の関わり合いを具体的に示す資料もある。新郷村の旧家の家紋は、ダビデの星(六芒星)を基にしていた可能性が否めない。そして、新生児を初めて外に出すときは、額に十字架を描いた。さらには前述の通り、ナニャドヤラの儀式がある。兄弟墓の近くには、エルサレム市から2004年に寄贈された碑銘もある。理由は十分すぎるのかもしれない。



案内して下さったスタッフの方が、こんな話をしてくれた。
ある日、兄弟墓と沢口家の墓所の周辺に黒塗りの高級外車が何台も止まっていた。ダークスーツに身を包んだ男性が大勢いて、どう見てもお墓参りのようだ。「どういったご関係の方々ですか?」と尋ねると、適当にはぐらかされてあっという間に車に乗って走り去ってしまった。
ーーさまざまな想像をかき立てられるエピソードではないか。
今回の取材では十分なところまで掘り下げることはできなかったが、新郷村には長慶天皇の陵墓とされる「三婆羅塚」(さんばらづか)という古墳がある。キリストの墓から数キロ離れた場所だ。新郷村にキリストの墓があるという説の有力な根拠となっている『竹内文書』は、超古代文明時代から天皇家が存在していたことを語るものにほかならない。「三婆羅塚」(さんばらづか)と竹内文書、そして新郷村との関係性がここにもうかがえる。

長慶天皇は第98代の南朝の天皇とされているが、関連資料がきわめて少ない。宮内省(現宮内庁)が在位の事実を公認したのは1926年だった。一帯に「崩」(くずれ)という地名があるのだが、これは敵の追跡から逃れてきた長慶天皇が崩御した地であることに由来しているという説がある。この名が付けられた集落の住民たちは、竹藪の中の小さな盛土は高貴な人物の墓所なので、大切に守るようにという言葉を代々伝え続けてきたという。
南朝をキーワードにして深掘りしていけば、何か具体的なことがわかるかもしれない。キリストの墓と沢口家の墓所、そして長慶天皇陵。点的に知られていた超古代のさまざまな逸話が、ひとつの線になってまとまる気がした。

宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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