南米の古代遺物をシュメール文字で解読! クレスピ・コレクションは古代神がもたらしたオーパーツなのか?

文=遠野そら

    エクアドルのクレスポ神父が収集する謎の古代遺物はアトラティス由来のものだーー。議論に揺れる定説に新説が登場した。

    エクアドルのアトランティス・オーパーツ群

     世界のどの古代文明のものとも類似しない遺物のひとつに、「クレスピ神父の収集品」というものがある。

     これは南米・エクアドルの先住民が、ジャングル内部や地下遺跡で見つけたと称してクレスピ神父のところへ持ち込んだもので、そのほとんどがひと目でわかる稚拙なニセモノ——ではあったが、なかには起源不明かつ解読不能の黄金製の銘板や彫像品など、“どうみても本物”といえる工芸品が少なくとも50点以上紛れ込んでいたのだ。

     クレスピ神父はこれらを「ジャングルのどこかに眠るアトランティスの叡智を引き継いだ古代文明の遺物」と死ぬまで信じていたそうだが、もちろん正統派考古学会が認めるはずはない。今ではインチキ模造品として扱われているが、これには異を唱える声も多く、今回また新たな説が登場した。なんとクレスピ・コレクションは古代シュメール人の南米植民都市『クガ・キ(Kuga-ki)』の遺物である可能性が浮上してきたというのである。

    56個のマス目に記号と文字が浮彫りされた純金製銘板「アンデスの黄金板」。刻まれた数文字は古代中東の北方セム語系祖語や出雲文字に共通点が指摘されているが、銘板自体、南米はおろかどの古代文明に類していないという。https://mru.ink/ja/priest-found-an-ancient-golden-library-thought-to-be-made-by-giant-beings-inside-a-cave-in-ecuador/

     世界で最も謎多き民族の1つとされるシュメール人。黄金を求め宇宙から飛来した神々「アヌンナキ」を信仰し、その高度な技術から古代メソポタミア文明の礎を築いた彼らであるが、来往経路や時期、言語系統など一切が不明。文明の衰退と共にどこへ消えたのかも分からない幻の民族である。

    「チチカカ湖周辺では、”南米のロゼッタストーン”と呼ばれるシュメール文字とティワナク文明の全身である古代プカラ文字が彫刻された石器などが出土していることから、シュメール人がこの地で文明の礎を築いたことは間違いありません」

     そう主張するのは米シカゴにあるセント・ザビエル大学教授であり、南米古代文字の専門家クライド・ウィンターズ博士である。氏によると、紀元前2500年頃の青銅器時代、一部のシュメール人が錫(スズ)などの鉱物採掘を目的に、ボリビア〜ペルー周辺に入植、巨大な鉱床を発見した。彼らはこの地を古代シュメール語で「西の錫(スズ)の国」を意味する『クガ・キ』と名付け、チチカカ湖を中心に都市を築いたのだという。

    クガ・キがあったとされる場所。チチカカ湖周辺はは謎多き遺跡が数多く点在するエリアだ。
    1982年に91才で亡くなった時には、延べ数千点もの工芸品が遺されていたという。https://hiddenincatours.com/ancient-sumerians-in-ecuador-the-father-crespi-mystery/

    南米のクレスピ・コレクションをシュメール文字で解読

     これまでも多くの研究者が、クレスピ・コレクションとシュメール文明の共通点を指摘していることは周知の事実である。だがそれを証明付ける決定的な証拠がないことから、あくまでも可能性の1つとして推測されていたが、ウィンターズ博士は実際に古代シュメール文字を用いて銘板の解読に成功。このことからクレスピ・コレクションが、シュメール人の南米植民都市『クガ・キ』の歴史を始め、シュメール人の行方を知る鍵になると主張しているのだ。

     まずこの板をご覧いただきたい。羽飾りが装飾された冠を被った男性の姿が彫刻されている。玉座のような椅子に座っていることから高貴な人物のようだ。男性は羽ペンを持ち何かを書き記しているが、この膝上の板に書かれている文字に注目してほしい。

     ウィンターズ博士はこれを古代シュメール文字で解読したところ、「強い力を持つ輝く神託を持つシャーマン。これは神の命である」という言葉が現れたという。また冠の部分には「尊敬する首長ミミビ」とあり、感謝と希望の対象として彫造されたようだ。ここでは現代語風に要約しているが、十分意味の伝わる言葉である。

    足元の文字もシュメール文字で解読することができるそうだ

     また他にも、当時の人々が宗教的儀式を行っていたことを示唆する碑文や、信仰の対象と思しき神の守護者などが彫刻されていたことから、博士はクレスピ・コレクションを神殿や寺院などに祀られていた可能性が高い、と推測しているようだ。

     まだ解読途中ということだが、もしこれが事実だとしたら貴重な文化的財産となることは間違いないだろう。となると気になるのがクレスピ・コレクションが発見された場所であるが、これはエクアドル・クエンカの「ロス・タジョス洞窟(Cueva de Los Tayos)」の奥深くに眠る古代遺跡から持ち出されたと信じられているようだ。しかし過去大掛かりな調査が実施されるも該当する遺跡は発見されておらず、今なお真相はすべて謎のままである。

    過去行われた洞窟調査。これには元宇宙飛行士のニール・アームストロングも加わっている

     とはいえエクアドルでは無数の地下遺跡の存在が知られており、今年1月にもアマゾン地帯で約2500年前の大型都市遺跡が発見されたばかり。南米大陸の地下を無数に横断しているという地下道の存在も囁かれる中、ウィンターズ博士の主張通り、クレスピ・コレクションが古代シュメール都市「クガ・キ」の遺物だとしたら、ロス・タジョス洞窟からチチカカ湖が地下で繋がっている可能性も少なくはないだろう。

    「エル・ドラド」や「パイティティ」など数々の黄金郷伝説が存在する南米だけに、地下には伝説に由来する大きな秘密が隠されているように思う。今後の調査にぜひ注目していきたい。

    参考
    https://www.ancient-origins.net/artifacts-ancient-writings/representation-sumerian-elites-detected-crespi-gold-tablets-009920

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

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