秦始皇帝はユダヤ人だった!/MUTube&特集紹介  2024年1月号

文=久保有政 イラストレーション=坂之王道

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    漫画「キングダム」では描かれない中国裏面史と渡来人「秦氏」の謎について、三上編集長がMUTubeで解説。

    『キングダム』のモデル始皇帝にまつわる謎

     若き日の秦始皇帝しんのしこうてい嬴政えいせいまたは政)と、その周囲の人物像を描く漫画、実写映画の『キングダム』が人気だ。
     始皇帝は、古代中国の戦国時代の秦(紀元前905〜全206年)の第31代君主である。彼は勢力を拡大し、周辺諸国を次々に攻め滅ぼし、紀元前221年に中国史上初めて天下統一を果たした。
     秦は「支那=China」の語源となった国でもある。中国の初代皇帝となった彼は強大な権力をふるい、万里の長城も造らせた。始皇帝はまた、死を恐れ不老不死の妙薬を求めたが、それはなんと毒性の強い水銀化合物だった。
    それがかえって彼の寿命を縮め、49歳の若さで世を去ってしまう。
     この秦始皇帝について、「イスラエル人だった」という説が研究者の間にある。にわかには信じがたいだろう。しかし古代中国というのは、われわれの想像を超えて東西民族の入り混じる大地だった。
     この説の主な根拠は、以下のとおりである。
    「始皇帝の実の父親と目される呂不韋りょふいは、ちょうの商人だったとされているが、じつは羌族きょうぞく(彼らの言葉ではチャン族)であり、その羌族は古代イスラエルの失われた10支族だったことが知られている」
     本稿では、その真偽を探ってみたいと思う。

    イスラエル由来の民族羌族に残された風習

     今日の中国は、人口の94パーセントが漢民族で、他は55の少数民族=非漢民族から成っている。だがかつては、その少数民族によって築かれた強大な王朝も存在していた。そして秦もまた非漢民族の王朝だったのだ。
     同様の非漢民族として、羌族の人々がいる。羌族は現在、中国南西部の四川省に住んでいる。そこは紀元前316年以降、秦の版図に編入されていた場所だ。だから羌族と秦は、もとから関係が深かった。歴史学者の翦伯賛せんはくさんは「秦は、東遷した羌族と、中原ちゅうげん人の末裔である」としている。
     羌族は、古代においては広く平地にも住み、とくに中国北西部に広がっていた。そこは西域にも近いところだった。羌族は、始皇帝のあと「五胡十六国時代」(304〜439年)に「五胡」(五大異民族)のひとつ、「羌」の国を作っていたこともある。
     しかしその後、国を失い、他民族に迫害されたため、山岳地帯に逃げこんだ。羌族には今では周辺民族の影響でアニミズム(精霊崇拝)も見られるが、その一方で古代イスラエル人由来の多くの風習・文化も多く残されている。
     彼らは、エルサレムのアミシャーブ(古代イスラエルの失われた10支族の調査機関)によって、「失われた10支族の出身」と認められている。
     古代イスラエルの10支族とは、紀元前721年にアッシリア帝国に捕囚され、その後に離散した人々である。 彼らの多くはおもにシルクロードを経てアフガニスタン、パキスタン、また東方の中国や、中央アジア、インド、ミャンマーなどへ向かった。今もそれらの地域には彼らの子孫が住んでいる。
     ラビ・トケイヤー著『日本ユダヤ封印の古代史』によると、羌族のいい伝えでは、彼らの先祖は西方の彼方の国から3年3か月の長旅を経てこの地域にやってきたという。彼らは唯一神教を信じていた。
     18世紀以降は周辺民族との同化が起こり、雑婚、宗教的混合等も進んだが、それでもいくつかの伝統や宗教的慣習は残っている。伝承によれば彼らはアブラハムの子孫であり、また父祖(ヤコブ)には12人の息子がいた。
     羌族にはイスラエルの律法を守る風習があり、イスラエル人由来の明らかな多くの特徴を持っている。彼らは悩みの日には神を「ヤハウェ」と呼ぶ。
     昔、羌族の人々は羊皮紙の聖なる巻き物を持っていたが、迫害された時代に失ってしまったという。今は口伝があるだけで、毎週祈りの言葉を唱えるが、古代語であるために自分たちでも意味がわからない。
     羌族の間でキリスト教の宣教活動を行ったトーマス・トランスは、1937年に『中国に来た最初の宣教師たち──古代イスラエル人』という本を出版している。彼によれば、羌族の伝統や風習は明らかに、古代イスラエルの失われた10支族出身を示すものだという。 筆者のもとにはまた、羌族について研究した中国の研究者エステル・チェンの論文もある。それを読むと、羌族が古代イスラエルの失われた支族の子孫であることは疑いようがない。

    (文=久保有政)

    続きは本誌(電子版)で。

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