仮想通貨ビットコインは“宇宙共通通貨”になる!? プログラム解析でわかった発明者「サトシ・ナカモト」の真実/嵩夜ゆう

文=嵩夜ゆう

    数多くの「億り人」を生みだした暗号通貨のビットコイン。だが、その開発者は謎に包まれている。 一説に日本人ではないかとの噂もある、ビットコイン誕生の背景と未来を探る! (月刊『ムー』2023年9月号より)

    世界を変えた暗号資産ビットコインの発明

     仮想通貨(暗号資産)については、読者もよくご存じのことだろう。
     インターネット上でやりとりできる財産であり、代金の支払いはもちろん、日本円や米国ドルといった法定通貨との交換もできる通貨システムだ。その代表が、有名なビットコインである。

     この画期的な通貨システムが世界に提案されたのは、2008年のこと。
     以来、ビットコインの価値は異常なほどの高騰を続け、現在ではもっとも世界に流通し、もっとも高額な仮想通貨という地位に君臨している。

    ビットコインの価格上昇グラフ。現在では金と同じような、有事の際の避難資産としても注目されている。

     実際、2023年現在、その価格は1ビットコイン=400万円超。
     だが、これはコンピューターというシステムを考えると、きわめて異常な事態といわざるを得ない。
     どこが異常なのか。

     たとえば読者は、2008年に製造されたコンピューターなり、ソフトウェアをいまだにメインで使っているだろうか。プログラムの世界は数年で価値が劣化する。2008年に作られた携帯電話は使い物にならないし、当時のパソコンもマニアでもない限り保有さえしていないだろう。

    2008年に発表されたiPhoneとiPhone 3G。この時代のスマートフォンを現役で使用している読者は、はたしているのだろうか。

     コンピューターの世界では、10年先を見通すのはほぼ不可能だとされている。あまりにも成長速度が速すぎるためだ。極端なことをいえば、今日まで最新機能だった製品が、明日には骨董品になってしまうことも珍しくない。

     近年では、対話型AIがそのいい例だろう。数年前はワトソン(IBMによって開発された質問応答システム)が最新だったが、今ではチャットGPTなどの自然言語学習方式によるAIが最先端になっている。
     その結果、今ではだれもがAIの恩恵を受けることができるようになった。頭のよさは記憶力ではなく、発想力だという価値観の変化さえ起きている。

     ポイントは、両者は根本的な概念が異なっているので、ワトソンの開発者がチャットGPTのようなAIが世に出ることを予見することはできなかった、という点にある。これほどまでにITの業界というものは、たった数年で技術的進歩がなされるものなのだ。

     こうして古い技術は廃れ、だれも使わなくなる。

     ところがビットコインだけは、そうではなかった。使う人間が減るどころか、むしろ増えている。セキュリティの強度も、使う人間が増えることによってより強固になっている。今ではいかなる国家が決算能力を無力化しようと思っても不可能なほどに、だ。
     わかりやすく説明すれば、ビットコインのセキュリティ網は、すべての1万円札に個々の流通ルートをリアルタイムで書きこんでいくことに等しい。流通がくり返されればくり返されるだけ、セキュリティ能力が上がるという特別な仕組みをとっているのだ。

     思想自体が異次元なのである。

    サトシ・ナカモトとはいったい何者なのか?

    サトシ・ナカモトを称賛して、ブタペストに建てられた記念の像 画像は「Wikipedia」より引用

     そのビットコインの生みの親とされるのが、サトシ・ナカモトなる人物である。ところが当時から詳細な人物像は不明で、いまだにだれひとりとしてサトシ・ナカモトの正体にたどり着いた者はいない。サトシ・ナカモトとは何者なのか、という疑問が出てくるのは当然のことといえるだろう。

     今回、本稿執筆のために筆者は、独自に複数のシステムエンジニアにビットコインのすべてのコード解析を依頼した。というのも、どのようなレベルのプログラマーが何人で(どれほどの労力で)組み上げたプログラムなのかを知りたかったからだ。
     分析結果は、異様なものだった。ほぼ確実に、たったひとりの人間がこのプログラムを完成させた、というのだ。しかもその人物は、どのIT企業でもトップエンジニアとして働ける能力を持ち、地球上に10人といないレベルだというのである。
     しかし、そんなことがあり得るのだろうか。だとすればそれほどのプログラマーが匿名で、ほぼ何の利益もなしにたったひとりでプログラムを組みあげた、ということになってしまう。

     そもそもこのプログラムを無から開発した場合、どう少なく見積もっても数百億円のコストがかかる。2008年当時であれば、数千億円規模になっただろう。さらにテスト運用にも、特殊なイントラネット環境が必要になる。それらが用意できなければ、ビットコインのようなプログラムを組みあげることはほぼ不可能なのだ。仮にこれらの条件をすべてクリアできたとして、いったいだれが好き好んでこのようなプログラムを無償で作りあげるのか。才能と労力、経費に対し、対価が割に合わなすぎる。

    2010年にサトシ・ナカモトが作成したという、ビットコインのロゴ。ビットコインを金のトークンとして描いている。

     だが、現実にビットコインは今も運用されつづけている。だから、だれかがその神業をやってのけたということだけは間違いない。と同時に、そのような才能を世界中の企業や公的機関が見逃すはずもない。こうして世界中で、サトシ・ナカモトの正体捜しがはじまった。何人かの候補者が挙げられたが、残念ながらいずれも決定打がない。

     そこでここからは、サトシ・ナカモトに近いと思われた人物を紹介していこう。候補は次の4名である。

    最初にビットコインを受け取った人物とは?

     まずは、ドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモト氏だ。
     サトシ・ナカモトと検索すると、彼がウェブ上でトップに来る。そもそも名前が「サトシ・ナカモト」であり、ITエンジニアという職歴、さらに最初にビットコインを受け取った人物の住所から、わずか数キロの場所に住んでいたということがその根拠とされる。
     次に2008年当時において、プログラム暗号化のトップエンジニアだったハル・フィニー氏。彼はアメリカの企業で主に暗号化技術の研究を行い、引退。その時期とサトシ・ナカモトがビットコインの開発を終えた時期が符合しているという。

    2008年当時において、プログラムの暗号化などのトップエンジニアだったハル・フィニー氏。最初期のビットコインの受取人でもある。 画像は「Wikipedia」より引用。

     さらに、ドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモト氏との交友関係もあり、実は「最初にビットコインを受け取った人物」というのは、このハル・フィニー氏なのである。このことからデバッグ、つまり送金テストの段階で、ハル・フィニー氏がサトシ・ナカモトとコンタクトをとっていたことは、ほぼ間違いない。
     ではなぜ、彼は正体を明かさないのか。それは、自分が開発者であり、なおかつ受取人として巨万の富を得たことが周囲に知られれば、身に危険が及ぶ可能性があるからだという。旧知のITエンジニア、ドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモトの名前を借りたのも、IPアドレス追跡を受けた際に正体がばれないようにしたためだ、というのだ。
     だが残念ながら、彼を問いただすことはできない。すでに故人になっているからだ。

     オーストラリアの起業家クレイグ・スティーブン・ライト氏は、自ら「サトシ・ナカモトである」と表明した人物として知られている。そしてその直後、オーストラリアの国税局は脱税容疑で調査を開始した。
     というのも日本以外の多くの国では、所得税よりも資産課税、つまり不労所得への課税が厳しく、たとえオーストラリアドルに換金していなかったとしても、含み益は課税の対象になり得るからだ。
     現在、サトシ・ナカモトのビットコインの予備発券枚数と、彼自身が保有を表明しているビットコインの総額は、時価で25兆円を超えている。罰金と課税を考慮すると、おそらくは数兆円の資金が必要となるだろう。

    オーストラリアの起業家クレイグ・スティーブン・ライト氏。サトシ・ナカモトしか書きこむことができないフォーラムで、自らサトシ・ナカモトを名乗ったが、当局の捜査ののちに撤回している。 画像は「X – Dr Craig S Wright」より引用

     そのせいか捜査ののち、クレイグ・スティーブン・ライト氏は、自らの発言を撤回してしまったのだ。これは彼が課税を恐れたというよりも、国際的な金融事情が背景にあると思われる。
     もしも数兆円の資産が支払いのために換金、もしくは当局に押収された場合、突然、市場にそれまではなかった巨額の資金が出現することになる。これは、世界を金融恐慌に陥れるのに十分な金額なのだ。
     そこでオーストラリア当局は、脱税容疑を取り下げる代わりに、サトシ・ナカモトという発言を撤回させるという、司法取引を行ったのではないか、という疑惑が生まれた。この説はIT業界では広く支持されており、2ch創始者の西村ひろゆき氏も、彼こそがサトシ・ナカモトなのではないかと、SNSなどで語っている。

    4人目のキーマンは天才日本人だった!

     4人目は、日本人プログラマーの金子勇氏だ。
     彼はかの有名なP2P技術の先駆である、ウィニーファイル共有ソフトの制作者として有名である。このプログラムはファイルを互いに共有する、つまり、どこかのサーバーにアクセスをするのではなく、個別に持ち寄ったものを統合すると欲しい情報が得られるという、ネットワークの概念を覆すソフトウェアとして設計されていた。その技術はツイッターを初め、今でも使用されるほど画期的なプログラムであった。
     だが彼は、このプログラムが権力構造の破壊につながることを恐れたある国家によって長らく収監され、現在は故人となってしまった。そのため、悲運の英雄としてビットコイン開発者に祀りあげられたのではないか……というと、そうではない。
     2008年当時、ブロックチェーンという、コンピューターが互いのデータの一部を共有しあう、あるいは監視しあうというプログラムは、金子勇氏以外には作ることはできなかった。また、ビットコインのプログラムソースの一部が、金子勇氏が書いたプログラムソースのコードとよく似ているという事実もあった。
     さらに彼が自由の身になった時期と、ビットコイン論文が発表された時期が符合するという点、彼が死去した時期とビットコインのプログラム開発をサトシ・ナカモトが終えた時期がまったく一致するという事実──これらが最大の根拠となっているのだ。

     ところで読者は、紙幣や硬貨をむき出しで持ち歩くだろうか。たいていの場合、財布に入れることだろう。
     ビットコインも同様で、この財布を「コールドウォレット」という。ただし、開発にはビットコインのプログラムや思想に対する完全なる知識が求められる。
     そのコールドウォレットの関連企業に対し、金子勇氏が何らかのプログラム提供を行った形跡があるのは興味深い。
     それは、彼の人生の晩年のことで、提供時期とコールドウォレットの開発時期もまた符合する。つまり、金子勇氏は、ビットコインの作り方のみならず、それに合う財布の適正な設計も知っていたということになる。

    ビットコインの決算プログラムの一部。このプログラムを開くことができない限り、コールドウォレットの設計は不可能なのだ。

     当然ながらこれらの知識は、開発に関わった程度では決して得られない。また、ビットコインのプログラム全文を解析したとしても、すぐに思いつくようなシステムでもない。
     なぜならビットコインは構想段階から、不正に流通させない設定が用意されていたはずなのだ。
     だから、ロック方法が後出しで公開されたのだとすれば、このやりとりはつじつまがあう。

    永遠に続いていく開発者をめぐる論争

     実際のところ、ほかにも数多くの名前が、サトシ・ナカモト候補として挙げられている。結論からいえば、この論争は永遠に続くだろうし、解答も存在しない。

     どういうことか。

     通常のプログラムには意味のない文字列として、プログラマーの署名や更新する際の注意事項などが記載されているものだ。しかしビットコインには、それが見当たらない。つまりサトシ・ナカモトは、自分の正体を完全に消し去ることを最優先にしたのだ。
     おそらく彼には、このプログラムは未来永劫の最適解である──完成形である──という確信があったのだろう。だからこそ、注意事項を書きこまなかったのだ。
     逆にここまでされてしまえば、サトシ・ナカモト本人であっても、自分が制作者であるという証拠を提示することは不可能となる。既存のアプローチでは、サトシ・ナカモトに近づくことができない理由はここにある。

     そこで筆者は、別のアプローチを考えてみた。

     それはプログラム全文を解読する際に、出来や精度ではなく「文書としてのプログラムコード」を、プログラマーで心理学の学位を持つ特殊な人物に、犯人の犯行声明のようにプロファイリングしてもらったのだ。

    筆者が解析を依頼したバージョン1.0段階のビットコインプログラムの上文。素人目にも見やすく、几帳面な人物が書いたことがわかる。

     結果は、以下のようなものだった。

    これはサトシ・ナカモト論文の一部だが、画期的なブロックチェーンの説明にもかかわらず、控えめである。これも、彼の性格を表している。

    「このプログラマーはいっさいの妥協を許さない、とても几帳面な人物である。また、多くの人に気に入られるものには興味がなく、自身の価値観によって常に判断する人物である。
     具体的にいえば、彼はおすすめ品と店頭ポップがついている品物は、決して手に取ることはない。必要なのは、あくまでも彼の価値観に合う商品だからだ。その意味では、反体制的な思想の持ち主といえるかもしれない。もちろん、すべてのプログラムを書きあげたあとで、何度も読み返し、修正するという地道な作業を行える粘り強い人物でもあっただろう。
     2008年から2009年にプログラムが書かれたのであれば、サトシ・ナカモトは現在、30代後半から50代前半になっているはずである。几帳面すぎて、友人は少ないかもしれない。プログラムがあまりにも整然としすぎているのは、後世に多くの人がこのプログラムを見ることを意識したのか、それとも過去に大きな失敗をしたのか、それは不明である」

    同じサトシ・ナカモトの図解。ここには西欧文化圏では用いられない、フレームを多用した図が用いられている。

    サトシ・ナカモトは、数式もこの手の論文としてはあり得ないほどシンプルにまとめており、控えめで几帳面な人物であることがうかがえる。

     このプロファイリングにあてはめると、4人のうちではハル・フィニー氏と金子勇氏がもっとも有力な候補となる。両者はともに几帳面なプログラムを書いており、年齢もほぼ合致する。だが、いずれも故人であるため、これ以上の追跡は不可能なのが残念だ。

    宇宙共通通貨としてビットコインを使う

     本稿の最後にビットコイン最大の疑問である目的、すなわち何のために作られた通貨なのか、という点に注目してみよう。

     現在のところビットコインの使用用途は、決して好ましいものばかりではない。インターネットカジノや人身売買、国によっては違法になる物品や情報の取引などにも利用されている。これは、それほどまでに匿名性が強い通貨であることの証明なのだが、このような使われ方はあくまでも初期段階のものであり、最終的な着地点はサトシ・ナカモトが想定したようになるのではないかと、筆者は考えている。

     天才はしばしば、とんでもないところから新たな発見や発明を見出す。リンゴが落下するのを見て万有引力を発見したニュートンしかり、郵便局の窓から見える時計塔から、特殊相対性理論を思いついたアインシュタインしかり、例を挙げればきりがない。

     サトシ・ナカモトについても、彼が日本人だったと仮定した場合、ビットコインを制作した目的が理解できる可能性がある。

     ビットコイン論文が出される前年、つまり2007年に『機動戦士ガンダム00』という作品が放送されていた。
     物語は、イオリア・シュヘンベルクと名乗る匿名の人物が、ある日突然、戦争や紛争を根絶するために、機動兵器ガンダムを匿名集団で運用するというところからスタートする。これは、匿名の一般市民がどの政府にも頼らない通貨を持つことで、その国の地政学的リスクにさらされることなく、資産を守ることができるビットコインの構造とよく似ている。そして『機動戦士ガンダム00』に登場するガンダムという戦争兵器の理念は、戦争を行うのではなく、外宇宙との対話を目的としたものだった。

     そう、これこそがまさにビットコインの最終目標なのではないだろうか。
     近い将来、人類は宇宙に進出する。
     最初の交流はきっと、情報通信になるはずだ。それが一般化すれば、互いの国のコンテンツ交流のような現象が始まることだろう。

     そこで問題となるのが、決済方法である。戦争や紛争をくり返している惑星では、どこかの国が承認した通貨では価値を有さない。ビットコインのように、全人類が承認し、多くの人々が台帳を持っているブロックチェーンこそ、最大の信用になり得るのだ。
     まさにビットコイン以上に信用できる通貨は存在しない、といっていい。

     サトシ・ナカモトがどこのだれであったにせよ、全人類が自発的に承認する通貨を発明することこそが、真の目的だったのではないだろうか。少なくとも筆者は、そう考えたいと思っている。

    (初出:月刊『ムー』2023年9月号)

    嵩夜ゆう

    投資家。オカルティズム研究家。イルミナティカード予言研究にも詳しい。

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