突然消え去ったアナサジ文明の謎! 北米先住民を襲った異常事態と集団アブダクション疑惑

文=仲田しんじ

    千年以上繁栄した文明が、わずか20数年のうちに跡形もなく消え去った謎のケースがある。かつてアメリカ南西部で繁栄を謳歌しつつも一瞬のうちに姿を消したアナサジ文明の人々だ――。

    突如として姿を消した謎の古代文明

     どのような組織や体制にも“栄枯盛衰”があるが、そのストーリーはさまざまである。当時は誰が見ても揺るぎない繁栄を誇っていた文明が、ある時期を境にあっさりと姿を消すこともあるようだ。

     それまで千年以上の繁栄を見せていたアナサジ文明は、西暦1275年から1300年の間のたった20数年の間に謎の消滅を遂げた。彼らの居住地は、まるで“夜逃げ”をしたかのようにそっくりそのまま放棄されたのだ。この古代文明はなぜ、どのようにして突然消滅したのか。

     アナサジ文明は1世紀から13世紀までの間にアメリカ南西部で栄えた数千人規模の古代ネイティブアメリカン文明である。「アナサジ」とはナバホ語で「古代のもの」あるいは「古代の敵」を意味する。

     農耕民族であったアナサジの人々だが、どういうわけなのか12世紀頃からは断崖絶壁を掘って岩窟住宅を作り、まるで集合団地のような集落を築いていた。岩窟住宅は高いもので5階建てにもなっていた。なぜ岩窟住宅に居住するのようになったのか詳しくはわかっていないが、この時期に脅威となった敵対勢力の攻撃に備えた防衛策の一環とも考えられている。いわば住居の“要塞化”である。コロラド州南西部にあるこの集落跡は「メサ・ヴェルデ」と呼ばれ、世界遺産に指定されている。

    「メサ・ヴェルデ」の岩窟住宅 画像は「Wikimedia Commons」より

     アナサジ文明はコミュニティを維持するために農業に大きく依存する成熟した農耕社会であり、南西部の乾燥した気候を管理するために複雑な灌漑システムを開発していた。こうした彼らの驚くべき技術にもかかわらず、13世紀後半のアナサジ文明の謎の消滅は、今も歴史家や考古学者を困惑させている。

     アナサジ文明はなぜ、どのようにして消えたのか? そして人々はどこへ行ったというのか?

     クロアチアを拠点とするウェブメディア「Curiosmos」の記事では、アナサジ文明の突然の消滅を説明する5つの説得力のある理論を紹介している。

    壊滅的な干ばつと資源不足

     アナサジ文明の消滅の背後にある最も広く受け入れられている理論の1つは、西暦1275年から1300年の間に壊滅的な干ばつが発生したという説だ。長引く日照りで、農業生産と飲料水の確保が困難になり、人口の維持が不可能になった。さらに資源が減少するにつれ、社会的緊張と生存競争が増大し、最終的には文明の崩壊につながったと考えられる。

    画像は「Wikimedia Commons」より

    戦争と国内紛争

     別の理論では、アナサジ文明が戦争と内部紛争に悩まされていたことを示唆している。彼らの社会が成長し拡大するにつれて、資源をめぐる競争が異なる派閥間の争いや暴力につながった可能性があるのだ。遺跡調査では焼かれた村と集団墓地が見つかっており、アナサジの人々が最終的に自らの内部抗争で破滅を迎えた可能性が指摘されている。

    画像は「Wikimedia Commons」より

    アナサジの文化的変容と統合

     アナサジ文明は完全に消滅したのではなく、むしろ文化的な変容を遂げて近隣部族と統合した可能性もある。環境的および社会的課題に直面したアナサジの人々は、モゴロン族やホホカム族など、地域内の他のグループと協力しようとした可能性も考えられるのだ。時間が経つにつれて独特なアナサジ文化が他の社会の文化と融合して変容し、あたかも文明が消滅したかのように見えているのかもしれない。

    画像は「Wikimedia Commons」より

    謎の健康被害

     研究者の中には謎の健康被害がアナサジ文明の急速な衰退の一因となった可能性があると主張する専門家もいる。栄養失調と病気の形跡が一部のアナサジ人の遺体から判明している。この健康被害の正確な症状はまだ不明だが、栄養不良、突然の感染拡大、またはその他の健康関連要因の組み合わせが滅亡の一因となった可能性がある。

    画像は「Wikimedia Commons」より

    精神的および象徴的な移住

     一部の学者は、アナサジ文明の失踪は意図的かつ精神的な移住の結果だった可能性があると主張している。この理論によれば、アナサジの人々は祖先の土地を離れ、新しい故郷への精神的な旅に乗り出す必要があると信じた。この考えは、キバスなどの儀式用建造物の放棄や神聖な工芸品の移転によって裏付けられている。このシナリオでは、アナサジの人々はより小さなグループに分割され、最終的には他のネイティブアメリカンの文化と融合し、かつての偉大な文明を放棄したという。

    画像は「Wikimedia Commons」より

     以上が5つの有力な説だが、これを大規模な集団失踪事件ととらえれば「集団エイリアン・アブダクション」という超常現象的解釈もできるかもしれない。放棄された岩窟住宅の内部は、あたかも人々が明日にでも戻って来るかのように設備や食料などが備わったままであったということからも、突然の集団失踪であった可能性が高いということだ。

     普通は誰も住もうとは思わない過酷な環境にうまく適応した(それだけにライバルが少ない)文明は、短期的には見事な成果をあげて繁栄をもたらすケースもあるが、それに慢心していると環境や外部要因の変化によって文明の消滅にも繋がりかねない厳しい状況に置かれることになる。

     故郷を捨てたアナサジの人々はどこへ行ったのだろうか。時空を超えてある日ひょっこりと姿をあらわすことがないとも限らない!?

    【参考】
    https://curiosmos.com/the-mysterious-fate-of-the-anasazi-5-theories-that-will-keep-you-guessing/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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