中は狐か狼か…?〝開けてはならない箱〟が秘めた呪術の威力/妖怪補遺々々
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八條忠基 著
圧倒的な情報量と、珍しく美麗な図版の数々! 科学と呪術に関する知見が集大成された異色作
「有職故実(ゆうそくこじつ)」とは、手許の辞書によると、「古来の朝廷や武家の礼式・典故・官職・法令・装束・武具などを研究する学問」とのこと。
著者の八條忠基氏は、有職故実や装束研究の専門家で、「綺陽装束研究所」主宰。『有職故実大全』『有職植物図鑑』(以上平凡社)や、『有職の色彩図鑑』『有職故実から学ぶ年中行事百科』(以上淡交社)など、その方面の著作多数。西早稲田の穴八幡宮近くに、だれもが実際に有職故実を体験することのできる施設「待賢殿」を運営しておられる。
本書はそんな著者が、有職故実に関するその浩瀚かつ深遠な造詣のすべてを惜しげなく注ぎ込み、日本古来の「呪術」の世界に斬り込んだ、異色中の異色作。この国の伝統的な科学と呪術に関するあらゆる知見が集大成されている。
まず驚かされるのは、本文が細かい活字で4段組という、その圧倒的な情報量(だいたい本誌と同じ判型で、各段の文字数は本書のほうが多く、それが220ページもある。改行も必要最小限で、凄まじいまでの文字密度である)。それと、見たこともないような、珍しく美麗な、おびただしい図版の数々。この贅沢ぶりには万金の価値ありと見た。
記述を裏づける文献資料の一覧は文字通り膨大であり、本文よりもさらに細かい活字が用いられていて、正直、評者の老眼には、もはやお手上げである。
主として、平安時代の朝廷公家社会における呪術とそれに伴う有職故実が、「宗教と信仰」「朝廷の官司」「『年中行事障子』に見られる宗教的行事」といったテーマに沿って縷々語られるのだが、そこに見て取ることができるのは、縄文・弥生時代から、脈々とこの国に受け継がれてきた、自然崇拝とアニミズム的精神世界である。
とはいえ、そうした世界観の下に緻密に構成された平安の呪術は、著者によれば「単なる荒唐無稽なファンタジーではなく、当時なりの〈科学〉であった」。平安時代においては、宗教(呪術)と科学は「渾然一体」であり、その背景には大陸から渡来した「高度な科学的知識」があったのだ。本書の白眉ともいえる「科学技術との融合」と題された章を見れば、そのことはおのずと腑に落ちる。
日本の歴史や呪術に関心のある人ならば、必ず座右に備えておくべき基本文献である。

(月刊ムー 2026年03月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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