幽霊が生者を怖がらせるのは「犯罪」!?/死者と語る人たち-File01:秋山眞人

文=文月ゆう

関連キーワード:

    死者の姿が見える、死者と語りあうことができる——そんな能力を持つ方々に話をうかがい、この世ならぬ世界をかいまみる連載の第1弾。サイキックとして生まれ、1970年代に「超能力少年」として注目を集めて以来、半世紀にわたって精神世界を牽引している秋山眞人氏にご登場いただく。

    死者はこの世に干渉してはならない!

    「死者とはけっこう会話をしますよ。遅い時間に、私がひとりで事務所にいて仕事をしていると、申し訳なさそうに、後ろから指でツンツン、みたいに合図を送ってきます。そのくせモジモジして、なかなかいいたいことをいわないの」
    
     死者の霊は怖いもの。ほとんどの人がそう思っていることだろう。だから、よほどの物好きでないかぎり「幽霊」と聞けば後ずさりするし、奇妙な気配を感じようものなら脱兎のごとく逃げだす。しかし、秋山氏が語る幽霊の様子は、どこか優しい。
    
    「いや、向こうも怖がっているんですよ。というのも、霊界にはルールがあって、生きている人間に干渉することはタブーだから。あまり干渉すると、見回り天使みたいなのがフワーッと上から降りてきて、幽霊の首根っこをつかんで連れていっちゃう。そういう場面を何度も見てきました」
    
     秋山氏は、しばしば除霊を依頼され、現世をさまよう幽霊たちと対峙する。そのときに、このルールを知っていることが大いに役立つそうだ。
    
    「あちらがなんだかゴネてきたら、『生きてる人間を怖がらせちゃダメだよね。悲しませてもダメだよね?』といってみる。そうすると、向こうはハッとします。してはいけないことをしている、この世でいえば犯罪行為だと、彼らもわかっているから。そこを突くとビックリして『それはいわないで』という様子を見せます」
    
     生きている人間に干渉してはいけない。それを知っていながら姿を現す理由とは?
    
    「寂しい、わかってもらいたい。それだけなんです。だから基本的には、向こうのいいたいことを聞いてあげて、こちらができること・できないことをはっきり告げると、納得して消えていきます。ただ、そこで気をつけなくちゃいけないのは、メンタルが繊細で弱い人が幽霊に共鳴しちゃうと、似たような精神状態になる。そうすると、憑依だなんだという騒ぎになります」
    
     ちなみに幽霊たちからすると、彼らを「見る」能力のある人は、光の繭のように輝いて見えるという。死後、行くべきところへ行けないまま暗く寂しい場所をさまよっていたら、温かい光が見つかった。だから、吸い寄せられるように近づいてしまう。
    
    「霊能力のある人は、基本的にヒーリング能力もありますから、彼らにとっては心地よいんです」
    
    精神世界の長老、スーパーバイザーともいわれる秋山眞人氏。

    貞子のような女性・空中を飛ぶ首・合体した悪霊

     多くの幽霊に向きあってきた秋山氏だが、そのなかでもとくに印象的だったのは、どんなものだろうか。
    
    「知人と一緒に電車に乗っていたときに、貞子みたいに長い髪を垂らした女性に出くわしたことがあります。その女性は向かいの席に座っていたんですが、僕らを見つけると立ち上がって、車内がけっこう混んでいるのに、人と人の隙間を縫うようにして僕らのほうへグーッと身を乗りだして、顔を近づけてきたんですよ。あまりに鮮明だったので幽霊だと思わず、変な人がいるねえ、と知人と目配せしていたのですが、次の駅に停止する直前に、忽然と消えました。車内は相変わらず混んでいたけれど、奇妙なことに、彼女が座っていた席にはだれも座りませんでした」
    
     秋山氏が「見える人」だと察してデモンストレーションをしたのだろうが、何をいいたかったのかは謎である。
     また、秋山氏は超能力者の清田益章氏と交流があるのだが、ふたりが同じものを目撃したことがあるという。
    
    「もうずいぶん昔のことですが、ある取材で清田君と一緒に八王子城跡へ行ったとき、ふたりで堀をのぞいたときに見えたものが『バレーボールみたいだね』と話したことがあります。首だけがポヨンポヨンと、上がったり下がったりしながら飛んでいた。どうしたものかなあ、と思ったけれど、ものすごい数だったから『どうにもならないね』と」
    心霊スポットとして有名な八王子城跡。じつは筆者(文月)も、怖い体験をしたことがある。
     いちばん驚いたのは、中央線沿線の街で見た「もの」だそうだ。
    
    「真っ黒のかたまりです。そこから髪の毛のような、ウニのトゲトゲのようなものが突き出している。真ん中には目玉があって、開いたり閉じたり。悪霊が合体したものだとわかりました。恨みの果てにあるものが磁石のように引きあってひとつになった塊で、転がるように動くんです。自分の存在を僕に見せようしていたわけではなくて、ビルとビルの間をすーっと移動していきました。だれかを狙っていたんだと思います」
    
     それは「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる妖怪、バックベアードのような感じ?
    
    「そうそう! まさにバックベアードそのもののです。まあ、悪霊に取り憑かれるというのは、本当に稀なこと。そんじょそこらのチンケな悪人は相手にされませんから。悪を楽しみきっているようなヤツじゃないと」
    
     この世の圧倒的多数の人は、悪人になろうとしても小悪党がせいぜいだろう。したがって、悪霊に取り憑かれるようなことは、まずないと思ってもよさそうだ。
    取材中に秋山氏のオフィスへやってきた幽霊をスケッチしていただいた。鎌倉時代に井の頭公園の弁天池あたりで巫女をしていた女性だという。

    あの世とこの世の境界は穴だらけ!?

     じつは、秋山氏が目撃しているのは、人間の幽霊ばかりではない。動物の幽霊、妖怪、精霊のようなものにも日常的に遭遇している。
    
    「ニホンオオカミみたいなものを山で何度も見ました。でも、20世紀初頭に絶滅したといわれていますから、生きた個体はいるはずがない。ニホンオオカミの霊なんですよ。それが、でかいの。体長が2メートルくらいある。彼らは体をでかくしたいんでしょうね。
     あとは、妖怪みたいなものもやはり見えます。おそらく、この世とは時間の流れや進化体系が異なる空間があるんでしょう。だって、下半身は馬で上半身は人間みたいな進化はあるわけがないけれど、それに近いものが現れるのだから。龍なんて、たぶん顔と角は鹿で、体にはウロコがあって、足が4本。麒麟もいろいろな生き物が混ざりあっています。この世とはまったく違う進化を可能にする世界があり、妖怪たちはそこからこぼれ出てくる」
    
     秋山氏は、そうした世界のあり方が、理論的に解明できるときがくると考えている。
    
    「幽霊も妖怪も、意外と物理的なものだと思いますよ。塩をかけたら霊が消えるっていうけれど、それは塩が効くということでしょう? つまり、霊をモノとしてとらえているわけです。霊には明らかに物質的な側面があります。光が粒子にも波動にもなれるように、霊は物質にもエネルギーにもなれる。そういう柔軟性を備えた素材がたくさん交差しているのが地球だと考えています。
     人間は、死についてあまり考えたくないから、普段は死後の世界のことを横に置いて生活しています。でも実際には、この世とあの世の境界には穴ボコみたいな通り道がいっぱいあって、そこからいろんなものが出入りしている、ということでしょうね」

    文月ゆう

    ムー的ライター。とくにスピリチュアリズム方面が好物。物心つくかつかないかという年齢のころから「死」への恐怖があり、それを克服しようとあれこれ調べているうちにオカルトの沼にはまって現在に至る。

    関連記事

    おすすめ記事