仏教と神道の根幹に関わる概念を創りだした歌人の謎に迫る「神を創った男 大江匡房」/ムー民のためのブックガイド
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端正な顔立ちを狐の半面で隠し、陰陽師・安倍晴明の母とされる狐の葛葉姫を想起するような"葛葉"の紋があしらわれた白い羽織袴姿をまとう……話題作『サイレントヒルf』には、狐に憑かれた男が登場する。彼に依り憑いて操る狐を、妄想を繰り広げて語っていこう。
本作の舞台"戎ヶ丘"では稲荷信仰が根づいている。稲荷神の神使は狐、となれば狐面の男に憑く狐も何らか稲荷信仰と関連がありそうなもの。
全国数多の稲荷神社を束ねる伏見稲荷大社は秦氏の氏神でもある。そして戎ヶ丘の稲荷信仰は"西"から"やってきたもの"と記載があり、京都やさらに海を越えた西方を連想する。じつはゲームを周回することで、狐面の男に憑く狐神"七尾の狐"の背後には九尾の狐と見受けられる神格が見え隠れする。九尾の狐はインドや中国で悪を振りまいた後に日本に渡来したという、まさに西から来た狐ではないか。

狐面の男はかなりの大金持ちで名家の家柄のようだが、もしかすると『サイレントヒルf』で稲荷神に化けて戎ヶ丘の信仰を支配する九尾の狐の眷属たちは、現実でも秦氏のように古代日本での神社の建設や土木事業などを担った重要な一族の末裔なのかも……などと妄想しはじめるとじつにおもしろい。
ちなみに、作中で狐神たちは五行説の五行相剋思想の"土剋水"に基づき、戎ヶ丘で水龍の力を封じているという。秦氏は川の氾濫が激しかった古代の京都における最重要課題だった治水工事を行っていた氏族でもある。現実と幻想的な伝承存在が入り乱れる『サイレントヒルf』なので、どこまで現実で、本当に狐神たちが跋扈しているのかなどの詳細は文字通り霧の中。狐面の男の背後にある狐神の眷属たちから感じる底知れぬほど旧くから連綿と連なる血族の柵は、古代日本から続く渡来の一族なのか?


本作の主人公の姉であり、謎に満ちた狐神たちに交じって"烏の面"をつけた人物、潤子も気になるところ。秦氏に近い烏となれば賀茂氏としか考えられない。稲荷山や太うず秦まさ、伏見周辺という秦氏の拠点の周辺には、賀茂氏の祖神である"賀茂建角身命"の孫神にあたる賀茂別わけ雷いかずちの神かみが多く祀られているが、賀茂建角身命こそ、『日本書紀』で神武天皇を導いた八咫烏の正体ともされる。
あるいは天狗の面だと考えれば、天狗の"狗"から荼枳尼天の眷属である"狗=ジャッカル"にイメージがつながる。狗=ジャッカルは冥界の動物としても知られ、エジプトの冥界神アヌビスもその頭部はジャッカルだ。潤子の面が烏天狗であるならば、それすなわち、死の領域のメタファーであると見立てるのも一興。
しかし狐面の男こと寿幸の姓は常喜(つねき)で、きつねのアナグラム。潤子の姓は絹田で、たぬきのアナグラム? そう見れば狐と狸の壮絶な化かしあいという線もあったりして。

(本作のムー民度 ★★★★☆)

サイレントヒルf
さびれたアメリカの観光地サイレントヒルを舞台に、主人公の内面世界の悪夢を描くサイコロジカルホラー「サイレントヒル」シリーズ最新作。本作は岡本基「SILENT HILL」シリーズプロデューサーにより、初めて舞台を昭和の日本へと移し、1960年代を生きた主人公の高校生・深水雛子の視点での新しい表現に挑んだ。ストーリーに『ひぐらしのなく頃に』の竜騎士07氏、クリーチャーやキャラクターデザインに『NG』『死印』のkera氏が参加。"美しいがゆえに、おぞましい。"というテーマを根幹に据えた、霧と彼岸花、そして内臓のような肉塊に侵食されていく蠱惑的な町からの脱出を目指す。
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https://www.konami.com/games/silenthill/f/gate
©2025 Konami Digital Entertainment
(月刊ムー 2026年01月号)
藤川Q
ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。
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