顔のない怪談「むじな」と紀伊国坂/小泉八雲の怪談現場・赤坂
「ばけばけ」で注目の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、日本各地で怪談や民話を採集した。名作「むじな」の舞台は東京・赤坂の紀伊国坂だが、「顔のない」怪談は世界共通の不安として知られるようだ。
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ラフカディオ・ハーン/ササキタカシ/田辺青蛙 著
小泉八雲の世界を多角的に紹介する入門書
小泉八雲(Lafcadio Hearn、1850-1904)はギリシア生まれの文学者。明治23年に来日し、日本人女性・小泉セツと結婚して日本国籍を取得。『知られざる日本の面影』『怪談』といった、日本を題材とする作品で世界に知られるようになる。
日本の民話を元にした彼の「耳なし芳一」や「むじな」「雪女」などの怪談・奇談は、かねてより日本の人口に膾炙していたが、2025年現在、大阪万博の展示でも彼が取り上げられたり、妻のセツをモデルとするNHKの連続テレビ小説『ばけばけ』が放送されるなど、近年、改めて注目を浴びている人物である。
本書は、あまり八雲作品に触れてこなかった初心者にも、わかりやすく紹介する待望の入門書。
気鋭の作家・円城塔氏や、著者である田辺青蛙氏による八雲作品(原文は英語)の翻訳に基づくコミカライズ(作画はササキタカシ氏。なお、円城氏は田辺氏の配偶者でもある)およびその解題コラム、田辺氏による珍しい八雲作品の瑞々しい新訳とその解説、小泉八雲と、ドラマで脚光を浴びた「世界で一番良きママさん」小泉セツの知られざる素顔など、内容はまさに盛りだくさん。
八雲世界への案内書としても、TVドラマの副読本としても秀逸な出来栄えであり、また本書が爆売れすれば、ササキタカシ氏による八雲作品のさらなる漫画化にも期待が持てるという。読者の皆様は、こぞって本書を盛り立てていただきたい。

(月刊ムー 2026年01月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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