「呪術の世界史 神秘の古代から驚愕の現代」/ムー民のためのブックガイド
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構成=高野勝久
メキシコはUFO大国だった!ラテンアメリカ事情を知り尽くす撮影コーディネーターが明かす、メキシコの最新UFO情報。そしてメキシコの有名UFO研究家が持つ「妖精のミイラ」の正体とは?
目次
わたしたちがバラエティ番組などで気軽に海外の情報に触れられるのは、「撮影コーディネーター」とよばれる人たちが現地でさまざまな調整をしてくれているからだ。
集英社インターナショナルから発売された『マジカル・ラテンアメリカ・ツアー 妖精とワニと、移民にギャング』は、メキシコ在住の撮影コーディネーター、嘉山正太さんが書き下ろした現場体験記。華々しい番組が生み出されるまでの舞台裏での奮闘が楽しくも赤裸々に語られ、ラテンアメリカのおおらかさや明るさ、怖さなどリアルな「いま」が描写されている。
なかでもムー的に気になるのはやっぱり「マジカル」と「妖精」の部分。じつは本書には、メキシコのUFO大国ぶりと、謎の「妖精のミイラ」目撃体験談が記されているのだ。
著者の嘉山さんに、メキシコUFO事情のリアルな今を教えていただいた。
——『マジカル・ラテンアメリカ・ツアー』は、第1章が「UFO大国メキシコの妖精のミイラ」となっています。ムーでもメキシコのUFO情報はたびたび扱いますが、いま現在のリアルなUFO事情はどうなっているのでしょう? 実際、メキシコの人ってやっぱりUFOを信じていますか?
嘉山正太さん(以下同) メキシコ人はUFOを信じていますよ! 見たという人も周りにたくさんいますし、僕の妻もメキシコ人なんですが、UFOを見たことあるといっています。
妻はメキシコのグアナファト州サラマンカという街の出身なんですが、今このグアナファト州がUFO的にアツいんですよ。特にサラマンカの隣のバジェ・デ・サンティアゴという街。ここが「UFOが出るところ」としてかなり有名になっています。
バジェ・デ・サンティアゴは、「7つの発光体」と呼ばれる死火山のクレーターがあったり、奇妙なかたちの丘がたくさんあったりして、たしかにUFOが出てもおかくないなっていう不思議な雰囲気がある街なんです。
妻がUFOを見たというのもこの街で、高校時代にサッカーの練習試合でバジェにいったとき、帰り道のバスのなかから見たそうです。
最初は空で小さな光が変な動きをしているのを発見して、そのうち光がふたつに分かれた。それをバスに乗っていた30人くらいが一緒に目撃して、みんな驚いたんだと。しかも遠征帰りのバスなんてヒマなので、怖いというよりもUFOが出て全員すごく興奮したといっていました。
——ヒマつぶし感覚でUFOをみる街!
またバジェには「UFOおじさん」と呼ばれているおじさんがいます。
オスカルっていうんですが、街で写真屋をやっているんです。そこは、表は一見ふつうの写真屋なんですが、奥に入るとUFOの写真がめちゃくちゃ飾ってある(笑)。
バジェもサラマンカも、軍の基地があるというわけでもない、トウモロコシ栽培と出稼ぎがさかんなごく普通の農村です。そんな街でさえUFO研究家がいくらでもいるような土地柄なんですよ。
メキシコでいかにUFOがアツいかという例なんですが、今年2022年は11月11日から13日にかけて、テカテという街で「UFOフェス」が開かれるんです。メキシコの国内外からUFO研究家が集って、3日間も発表がおこなわれる。公演も1時間ごとにぎっしり予定が詰まっていてすごいんです。
職業柄、UFOネタはもう感覚がマヒするぐらい触れていますが、こんな大規模イベントは僕も今回初めてみました。このイベントに出るのはいわばアカデミックなUFO研究家。そこにも呼ばれない、オスカルのような在野のUFO研究家がいると思うと、とても層が厚いですよね。
——メキシコのリアルなアツさが伝わってきます。イメージしていた以上にUFO文化がさかんなんですね。
個人的な肌感覚からしても、純粋にUFOを信じている人が多いなと思います。国民性的にも、メキシコの人っていい意味でノリがシンプルなんですよ。
もちろん日本とおなじで「そんなのウソだよ」という人もいますよ。ただ実際にバジェにいってその地形の不思議さなんかを体験すると、UFOがいても違和感がない神秘的な印象はうけますね。
——最近の日本やアメリカのUFO論は、ほぼ陰謀論と一体化しているところがあります。軍が隠しているんだとか。そうではなく、単純に「ただ空に不思議なものが光っているぞ」という、古きよき……古典的というか、そんなUFO感覚が強いと思いました。
メキシコやペルーなどラテンアメリカの人には、国民性として不思議なものを不思議なまま受け入れるっていう感覚がありますね。
というもの、ラテンアメリカというのは500年前で歴史がばっさり切れてしまっている地域なんです。そこでスペイン人の征服があったので。たとえばマヤ文字も、知識人的な階級が全員殺されてしまったために全く読めなくなってしまった。いまも少しずつ解明は進められているんですが、文字があるのに昔の文化がわからないという断絶がある。
日本なら古文書があってそれを調べて……とできるけど、ラテンアメリカではそれができない。セノーテ(生け贄の儀式にも使われたという陥没穴の泉)から人骨がでてきて、おそらくなんらかの儀式の痕跡だろうということまでは推測できても、具体的に何が行われていたのかはわからない。その先は想像するしかないんです。
だから、自らのアイデンティティを求めようとするときに、科学的に正確に解明しようという感覚以上に、もっと「物語」として回収しようとするところがあるんです。
そうした歴史や文化が、あるものをあるがまま受け入れる精神性の土台になっているのかもしれません。在野のUFO研究家たちなんて「見た、見た!」という話だけで、そこから考察とかしませんからね(笑)。
それから、ラテンアメリカの人たちは、外からやってくるものに対して寛容なんです。
今でも外国企業がたくさんやってきているし、グアナファト州も出稼ぎも多いし、移民も多い。だから「あいつらは俺たちとは違うやつらだ、くるな」という方向のナショナリズムは、そこまで強くない。
移民もいる、外国企業もきた、そこにUFOもきたぞ、と(笑)。それらがそんなに区別されていなくて、シームレスに受け入れられてるのかなとも思います。
——『マジカル・ラテンアメリカ・ツアー』には、サブタイトルにもなっている「妖精のミイラ」を見たエピソードが載っていますね。妖精って、具体的にどんなものでしたか?
これはメキシコでもっとも有名なUFO研究家である、ハイメ・マウサンの事務所で見せてもらいました。彼にインタビューをしていたら、自分から出してきたんです。写真は撮れなかったんですが、大きさは40センチくらいで、綿入りのガラス瓶のようなものに入っていて、干からびた焦げ茶色のミイラみたいなものでした。
羽が生えているんですが、羽毛ではなくて昆虫っぽい羽。一見コウモリにも見えるんですが、それにしては胴体と手足が長すぎる。マウサンは妖精だといってたんですが、どちらかというと妖怪っぽかったですね。
——江戸時代に日本で作られていたという、人魚やカッパのミイラにも通じる特徴のような……。もしかしたら過去に日本から輸出していた可能性も……?
メキシコには有田焼が出土する場所があるんですよ。かつてフィリピンとメキシコのアカプルコを結ぶ航海ルートがあったんですが、メキシコの貴族邸宅ではその航路で運んできた日本の有田焼が使われていた。
そんなこともあるので、「妖精のミイラ」が日本から流れてきた可能性もゼロではないかもしれないですね。マウサンは妖精のミイラを何体か持ってるらしく、テレビなんかでもいくつか出してます。
——その感じもますますカッパのミイラっぽい! お話をうかがうと、メキシコのUFOやミステリー周辺は、これからまだまだ盛り上がりそうですね。
そうですね。特にやっぱりグアナファト州です。恐竜土偶で有名なアカンバロもこの州で、バジェのすぐ近くなんですよ。
ただ、UFOもいるけど、ギャングもいます。むしろ治安のよくない荒れている場所ほどUFOが多く出ているかもしれません。逆にUFOフェスが開かれるテカテなんかはアメリカの国境に近いんですが、出るという話は聞かない。アメリカが近いから、ラテン的な「マジカル」な空気が薄まっちゃうのかもしれませんね。
UFOおじさんオスカルのような在野UFO研究家たちは、ひとに話を聞いて欲しくてしょうがないんですよ、家族にもあきれられてるような人が多いので(笑)。だからもし日本から取材がきたなんていったら大喜びで話してくれると思いますよ。
あとメキシコの在野研究家たちは、なにかしらブツを持ってます。そこが強みで、アメリカのUFO研究者のように、仮説や理論とかじゃないんです。これがUFOの写真だ!これがミイラだ!っていう、モノで押す強み。そこもメキシコらしさかなと思います。ただ僕にはその真偽の判断はできないですが……。
UFOから妖精、ギャングまで、日本人の常識を軽く乗り越えたことがおこる土地がラテンアメリカだ、ということなんじゃないかなと思っています。
『マジカル・ラテンアメリカ・ツアー 妖精とワニと、移民にギャング』(嘉山正太著、1,900円+税、集英社インターナショナル)
webムー編集部
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