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ムーでもおなじみ、芸人・松原タニシ氏が原作の“事故物件映画”「事故物件ゾク 恐い間取り」がいよいよ公開! 原作者自らがその魅力を語るインタビュー。
目次
日本全国の事故物件に住み続ける芸人・松原タニシ。彼の実体験を綴ったエッセイを原作とした実写映画「事故物件ゾク 恐い間取り」が、2025年7月25日(金)から全国で公開中だ。
あの「リング」の巨匠・中田秀夫が実写化した2020年の第一作「事故物件 恐い間取り」から5年を経て制作されたシリーズ最新作となる。手がけるのは前作と同じ中田監督だが、今回は続編ではなく、事故物件を軸にしながら登場人物とストーリーを刷新した、新たな恐怖の物語が描かれている。
主演にはSnow Manの渡辺翔太を迎え、その他にも畑芽育、吉田鋼太郎、滝藤賢一ら個性豊かなキャストが集結。本記事ではその見どころを紹介しつつ、後半で原作者・松原タニシ氏のインタビューをお届けしたい。
「事故物件ゾク 恐い間取り」の物語は、主人公・桑田ヤヒロ(渡辺翔太)がタレントになる夢を諦めきれず福岡から上京し、“事故物件住みますタレント”になるところから始まる。彼が訪れるのは、必ず憑りつかれる部屋、いわくつきの古旅館、降霊するシェアハウスなど、どれも実在の恐怖譚をモチーフにした物件ばかり。好奇心と仕事のために事故物件を渡り歩くうち、ヤヒロは次々と怪奇現象に巻き込まれ、やがて想像を絶する恐怖と“ある真実”に辿り着く―― 。
シリーズ2作目となる今作も、主人公が様々な事故物件を渡り歩き、コミカルさを交えながら怪異に迫っていくフォーマットは前作から継承。それに加え、「リング」「仄暗い水の底から」など中田監督の従来作を彷彿とさせる“オーソドックスな恐怖表現”が、前作より増えているのが見どころだ。Jホラーファンは「おお、キタキタ」という感じになるだろう。
実話ベースのストーリーの中で、渡辺翔太はどこか飄々とした雰囲気の主人公・ヤヒロを好演していて、事故物件にまつわる“いわく”が完全には解決しきらず話が進んでいくのも絶妙にリアルで良い。
ヒロイン役の畑芽育は、大きな目がギョロリと動いた時のルックスがホラー映えしていて、中田監督の過去作「らせん」「リング2」の中谷美紀や「貞子」の池田エライザなんかを彷彿とさせる。
Jホラーファンはもちろんオカルト民にとっても、事故物件にまつわる最新映画として見逃せない一作だ。
ということで、いよいよここからは、ムーでもおなじみの原作者・松原タニシ氏にインタビュー。完成した映画の感想や、撮影裏話、ご自身と作品との距離感までたっぷりと話をうかがった。
―― まずは映画「ゾク」の完成、おめでとうございます。今回もタニシさんの体験をベースにした物語になっていますが、完成した映画をご覧になって、率直な感想はいかがでしたか?
松原タニシ氏(以下、タニシ):ありがとうございます。いやー、面白かったですね。ホラーとしての見せ方も前作からさらに進化してて。でも一番はやっぱり、主人公のヤヒロがすごく“いる”感じがして、リアリティがありました。
―― 前作で亀梨和也さんが演じた主人公・ヤマメは、まさにタニシさんをモデルとした“事故物件住みます芸人”でした。対して、今回の渡辺翔太さんが演じた主人公・ヤヒロは、芸人ではなく“事故物件住みますタレント”ですね。どちらも若手でお金がないという設定は共通で、「もし自分がヤマメやヤヒロの立場だったら事故物件に住むかな……」と視聴者が想像を膨らませやすい絶妙なラインを突いてきます。
タニシ:今回の主人公・ヤヒロのキャラクター、本当によくできてるんですよ。優しくて飄々としていて、「優しすぎるから幽霊が寄ってくるんだろうな」と思わせるんだけど、決してそこに取り込まれない強さもあるっていうのがね。僕にはすごいリアルで。
というのは、自分もそうだと思ってるんですけど、そういう“取り込まれそうで取り込まれない”ギリギリの人って、事故物件と相性が良いんです。
普通の人は、自分から事故物件に住む選択をしないでしょうし、住んだとしても一軒めでやめてしまう人が大半でしょう。でも、取り込まれそうで取り込まれないヤヒロみたいな人間は、そこに踏み込んだ後に住み続ける選択ができちゃう。「あ、この人だったら住み続けるな」って思える説得力のあるキャラクターでした。
―― なるほど。ヤヒロの性格からして、事故物件を何軒も渡り歩くというストーリーの流れは自然なわけですね。怪異と遭遇するんだけど、無事に住み続ける強さも持っているという。
タニシ:そうです。そういう意味で、実は前作の主人公・ヤマメより、今回の主人公・ヤヒロの方が自分に近いなと思いました。その絶妙なキャラクターを演じ切った渡辺翔太さんは凄いです。何なら渡辺さんはほぼ僕だと思ってます。
―― ほぼ僕……! 芸人が主人公である前作の方が一見近いように思えますが、本質的な人間性の面では、今回のヤヒロの方がタニシさんと近いというのは興味深いですね。
タニシ:あと、ヒロイン役の畑芽育さんも凄かったです。初登場のシーンから、女優さんとしての貫禄が半端なくて。そしてとにかく怖い! 個人的に、今作で最も怖いのは畑芽育さんの表情だったので、そこは見どころとして推したいですね。
ちなみにここだけの話ですが、畑さんは金縛り経験があるそうです。
―― ええ! まさか、実はムー的な方……? そう聞くと、今作での存在感の高さも納得なような。
タニシ:しかもご本人は金縛りを怖い経験と思ってなくて。「いや、それ怖い話ですよ」っていう会話をしました。
―― 正直、それは別途深く掘り下げたい情報ですね。ちなみにキャストでいうと、タニシさんご本人も本編に出演されていますね。さらに、田中俊行さんや大島てるさんなど、ムーでおなじみの面々も。
タニシ:はい。まあ、なぜか僕より田中俊行さんの方がセリフが多いのだけは解せないんですけど……。それはそれとして、今回も自分が出演しているシーン以外も合わせて6〜7回は撮影現場に行きました。前作では撮影現場で色々なことが起きたので、今回も何かあるんちゃうか? と期待して(笑)。
実際、渡辺さんの撮影シーンでひとりでに照明が消えたか割れたかってことがあったらしいです。残念ながら僕がいなかった日に起きたんですけど、その噂を聞いた時には「よし、今回もきたか」って思いました。
―― 今回は登場人物や設定を刷新した新作ということで、タニシさんとしても、原作がどう再現されるか気になるところだったのでは?
タニシ:脚本段階から内容を見せていただいていたので、安心感はありました。原作は文字なので読者に想像してもらえば良いですが、映画は読者の想像を超える映像を作るというハードルがありますから、それを実現しているのは本当に凄いと思いますね。
今回は中田監督が、過去作の「リング」「女優霊」などに通じる純粋なホラー表現も盛り込もうと思ったそうで、前作と比較して恐怖演出が2.12倍多いらしいです。制作さんに聞きました。
―― 2.12倍! 小数点まで計算されてるの凄いですね(笑)。
タニシ:あと今回、幽霊の出し方がまた徹底してるんです。実は本編には、普通に観ても見えないような、視力6.0くらいないと認識できないレベルの幽霊を登場させてるそうですよ。
―― そうなんですか! そういう“実は映ってる細部の演出”があるから、無意識の恐怖に訴えかけてくるのかもしれません。そういえば作中ではコックリさんをするシーンもあって、そういうオーソドックスなオカルト要素も記憶に残りました。
タニシ:あのシーン、“事故物件で3人の男がコックリさんをする”って、以前にムーの企画で全く同じことやってるんですよね。プロレスラーの高橋ヒロムさんと、僕と、ムー編集部の望月さんで。あの記事が、映画の制作陣に影響を与えた可能性が……。
―― まさか、タニシさんがあの記事の内容を中田監督にお伝えしたとか……?
タニシ:いや、してないんですけど。もしかしたら読んだかもねってだけです。
―― してないんですね(笑)でも、そんな偶然もシンクロニシティの一つということにしておきましょう。あと今回、作中に出てくる事故物件がすごくリアルだったのも印象的でした。撮影した物件選びについては、タニシさんが助言をしたとかではないんですか?
タニシ:いやいや、僕は何もしてないです。なので僕も、「ようこんなリアルな場所探してきたな」って思いました。事故物件って、みんながイメージする“ボロいアパート”じゃなくて、意外と小綺麗やったりするんです。前作も今作もそのリアルさがしっかり再現されてて、素晴らしかったですね。
そんな事故物件にまつわるエピソードが全て完全解決するわけでもなく、尻切れとんぼなまま次の物件に移り住む流れもすごく現実的で良いです。
―― 今作を観て、「自分も事故物件に住んでみたい」と思う人もいるかもしれません。そんな人に向けて、タニシさんなりのアドバイスはありますか?
タニシ:劇中でも出てくる話ですが、なんでも霊のせいにしないこと。何かが起きても、実は自分の生活や心の問題だったりすることも多いんです。あと事故物件って、踏み込みすぎると“ミイラ取りがミイラになる”けど、渡辺さん演じるヤヒロもギリギリ取り込まれない絶妙な距離感を保ってた。あれが大事ですね。
ちなみに僕自身は最近、「なぜ事故物件が生まれるのか」「なぜ人はそれを避けるのか」ってところに興味が移ってきてて。事故物件ってただの怖い場所じゃなくて、人の暮らしと死が染みついた空間なんで、そこに向き合い続ける覚悟をして生きてます。
―― まさに、そんなタニシさんが事故物件と向き合う原作本の最新刊「事故物件怪談 恐い間取り4 全国編」が、先日発売されました。ぜひ最後に新刊のアピールをお願いします。
タニシ:そうそう、ちょうど映画とシンクロして、新刊も舞台が福岡から始まるので、ぜひチェックしてほしいです。僕はこれまで、日本全国で通算24軒の事故物件に住んできました。新刊でも色々な土地の体験を書いてます。四国の話なんかは、ムー民が好きそうな土地の風習が絡んでる話もあるので、映画と合わせて読んでいただきたいですね。事故物件の不思議と面白さは、まだまだ尽きません。
「事故物件ゾク 恐い間取り」
https://movies.shochiku.co.jp/jikobukken-movie/
2025年7月25日(金)全国公開
配給:松竹
(C) 2025「事故物件ゾク 恐い間取り」製作委員会
https://x.com/jikobukken2025
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
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