未来人の予言は必ず外れる! 時空を超えたメッセージが上書きを続ける新しい世界たち/未来人の肖像(5)
未来人ウォッチャーがネットを騒がせた未来人を独自の視点で振り返るシリーズ。シメの5回目は、未来人たちの目的や存在意義を考察する。予言はなぜ「外れる」のか?
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「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2025年7月号、第495回目の内容です。
フィンランドの首都ヘルシンキを拠点にインターネット上で活動し、すでにフォロワーが10万人超えして、なおも爆発的にどんどん増えつづけている自称26歳のインフルエンサー、ミラ・ソフィア嬢。
でも、その正体ーー実は生成AIすなわち人工知能が創りだした実体のない、要するにあくまでも架空存在にすぎない〝ロボット美女〟なんだとか。
でも、ネット上でのその見た目は、どこからどう見ても〝完璧にして非の打ちどころのない〟絶世の金髪美女なので、世界中から恋人志願者(?)が殺到している。
彼女が自撮りしたという触れ込みだが、実はあくまでも生成AIが勝手に創造した、例えばパリとかシドニー、サントリーニ島などなど、彼女が世界中を〝旅〟して歩く超リアルな自撮り画像や風景映像が、ネットを開けばだれでもすぐに覗き見できるのだ。
彼女のウェブサイトで、ソフィア嬢はこう宣言する。
「私は比類のない未来的視点を、そこがファッションショーのランウェイ上だろうとデジタル風景映像の中だろうとに関係なく、もたらすつもりです。私の情熱は最新のトレンドを展示し、たゆまぬ進化を続けるファッション業界の中で、その進化をさらに押し進めることにあります!」
ミラ・ソフィアが生成AIの生産物なのは明々白々であるにも拘わらず、男性フォロワーたちからは今もなお、セクシャルな思いが込められたコメントがぞくぞく寄せられている。例えば――
「貴女はどんな服を着ていても、いや、着ていなくても、天下一素晴らしい女性です!」
〝落ちそうで落ちない岩〟として内外に知られるミャンマーの観光名所、通称〝ゴールデンロック(黄金の岩)〟は、同国モン州マンダレー近郊の標高約1100メートルの山頂に近い断崖上にある高さ約7メートルの丸い巨岩で、その上に建立された同じく高さ7メートルの仏塔ごと金色に塗られているので、その名がある。
だが、今年3月28日の午後6時近く、そのマンダレー近郊を震源地とする巨大地震が発生し、同国内だけでも死者144人、負傷者は732人を数えた。
ところが、強い地震が起きたらきっと断崖上から転がり落ちるだろう、とこれまでだれもが危惧していたゴールデンロックは、なんとまったくその位置をピクリとも変えなかったことが判明したのである!
〝落ちそうで落ちない〟ゴールデンロックは、それ以来、仏教徒たちと観光客をますます集めるミャンマーきっての〝観光の目玉〟となっている。
米ユタ州のハイウエイをノロノロ・フラフラ運転中の車を発見した州警察のパトカーが、サイレンを鳴らして近づくと、路肩に車を寄せるよう指示した。
ドライバーは素直に従ったが、警官が近づいてよく見ると、なんと運転席に坐っていたのは、まだ5歳ぐらいの幼児だった!
幼児は警官に、片言混じりで腹立たし気に説明した。
「だってママったら、ひどいんだよ。パパと口喧嘩したあとで、ボクを叱るんだ。ボク、なんにもしてないのに!」
英国ロンドンのとある雑種の老犬ビリーが、ある日突然、前足の片方を地面につけないまま、引きずって歩くようになった。
心配した買い主のラッセル・ジョーンズさんが、獣医に300ポンド(約5万6000円)も支払って、レントゲン線検査をしてもらったが、ビリーは健康体そのもので、とくにどこにも悪い所はないと診断された。
獣医の話では、犬によっては買い主にもっと構ってほしい、もっと心配してほしいという気持ちから、痛くもないのにわざわざ足を引きずってみせるお利口なワンちゃんもいるという。
ジョーンズ氏にもあっと思い当たるふしがあった。ビリーを飼いはじめたころ、自分も片方の足を痛めて、しばらく引きずっていたことがあったのだ。
ビリーは狩猟犬種グレイハウンドのミックスで、とても賢い犬だから、飼い主におもねって足を引きずりはじめたのかもしれない。
それからしばらくして、やっぱり仮病だったことが証明された。ある日突然、くたびれたからか、うっかりミスだったのか、だしぬけにビリーの引きずる前足が、右足から左足に代わったからだ。
ジョーンズ氏は内心苦笑しながらも、健気な愛犬ビリーを力いっぱい抱きしめてやった。
SNSのプラットフォームTikTokのユーザー、イーノ・アラリック氏は、自称〝2714年の未来からきた時間旅行者〟で、2023年3月22日に〝敵意に満ちた凶悪なエイリアン種族〟が大挙して地球侵略に来るが、われわれは絶対勝てないと予言した。
だが、その日が何事もないまま無事に過ぎると、アラリック氏は平然とこう説明した。
「同じ邪悪なエイリアンに大昔、故郷惑星を滅ぼされた別の種族の僅かな生き残りが、密かに先手を打って、地球を恐ろしい破滅から救ってくれたのだ!」
アラリック氏はさらに、またもや平然とこう予言した。
「2023年3月23日、約8000人の地球人が、生存可能なよその惑星に移住することになる!」
でも、われわれの知るかぎりでは、そんな素晴らしい出来事は実際には起こっていない。
にも拘わらず、アラリック氏はまたまた、こう予言した。
「地球を周回するジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が、われわれの太陽を食い尽くす巨大なエイリアンを、今年の暮れまでに発見するだろう。また、35億の地球人が、来年、北極の融ける氷の中から発見される奇病のウイルスに集団感染するだろう!」
もっとも2023年3月22日付「デイリーミラー紙電子版」によれば、幸いなことに、以上に挙げた恐ろしい出来事は、現実にはすべて起きていないそうだ。当然といえば当然だけど。
南山宏
作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。
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