隕石の回収確率を高める方法の話など/南山宏のちょっと不思議な話

文=南山宏 絵=下谷二助

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    「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2025年2月号、第490回目の内容です。

    ロボドッグ

     中国浙江省杭州市の高性能ロボット開発会社「宇樹科技」(英名ユニトリーロボティックス)は、このほど〝Go2〟の通称で知られるペット用ロボット犬の製作販売に乗りだした。
     同社はそれを〝ロボティックスの分野における革命〟と位置づけて、大宣伝を展開している。
     ロボット犬Go2は、AI(人工知能)を有する4足歩行ロボットなので、動物の犬より遥かに高い知性と運動能力を備えていて、階段の昇降や高速走行や跳躍前進など自由自在にやってのける。
     内蔵スピーカーで人間と会話したり音楽を流したり、顔面に相当する部分に備えたカメラで撮影した映像を、飼い主(所有者)のスマホに送信したりもできる。
     ダンスも逆立ちもできるし、逆立ちのまま後ろ足を小刻みに振ることさえできる。飼い主に駆け寄って出迎え、飛び跳ねながら「お帰りなさい」もいえる。もっともその声は、いささか無気味な機械じみたものだが――
     市場公開の際に発表されたプロモーションビデオでは、ロボドッグGo2は本物の犬と並んで走り回り、入り組んだ岩場をぶつかることなく走り抜けたり、庭の迷路を迷わず辿ったりしてみせた。
     Go2はまた、背中に伸縮自在の爪付きアームを備えていて、必要に応じて地上の物体を拾い上げたりもできた。
     そうした反応や行動はすべて、内蔵AIがレーザー光の照射と反射で得た情報に基づいてやってのけるのだが、それ以上の詳しい情報は国家機密に抵触するとして、現段階では公けにされていない。
     2023年7月21日付「デイリーメール」紙によれば、似たようなロボドッグを現在研究開発中のアメリカのライバル企業「ボストンダイナミクス」でも事情はほぼ同様で、販売予定価格が中国版よりだいぶ下回るらしいということ以外、詳細は一切不明だ。

    不発弾

     英国グロスターシャー州内のとある病院に、軍の爆発物処理班が緊急通報を受けて急行した。
     その男性患者(匿名、年齢不詳)は、なんと臀部のド真ん中に不発弾がめり込んでいた。
     趣味の軍用品コレクションを整理中に誤って尻もちをついたら、運悪く砲弾の尖ったほうが突き刺さってしまったのだとか。
     長さ17センチ・幅6センチの不発弾は、つつがなくお尻から抜き取られて処理され、男性は手当てを受けて無事に退院した。

    色分け蟻

     インドの生物学者モハメッド・バブー博士が、自宅の庭にいる黒蟻の奇妙な生態について、このほど興味深い研究結果をインターネットのSNSで公表した。
     同国カルナータカ州の人気観光地マイスールにある博士宅の中庭に棲息する、学名タピノマ・メラノセファルムという体長わずか2ミリの小さな蟻たちがそれ。
     東南アジア原産のこの小蟻は、体部の後ろ半分が半透明なのが特徴で、そのため色つきの水を吸収すると、後半身がその色になる。
     そこで博士が同一成分だが赤・青・黄・緑の4色に分けられた砂糖水を、白いプラスチック板上に垂らしてこの小蟻たちを解き放ったところ、最も数多くの蟻が群がったのは黄色の水で、以下、緑・青・赤の色水の順となった。
     五感(視・聴・嗅・味・触)のいずれが関係するのかは判然としないが、バブー博士はそれを次の段階の研究テーマにしたいとして目下、その分析方法を熟慮中だ。

    大豆雨

     2021年12月下旬のある朝、カナダはオンタリオ州ハミルトンの住民が目覚めると、あたり一面に不思議な雨が降っていた。
     白っぽい半透明の雨粒で、まもなく判明したその正体は、食品工場のフィルターの故障で、煙突から排出された大豆の皮だった。
     工場長は住民にこう弁明した。
    「近隣にお住みの皆様、幸い完全に無害・安全なのでご安心を!」

    隕石ハンター

     世界の天文学界では、毎年、地球の大気圏内に突入して摩擦熱で消滅せずに地表まで到達する隕石ないし流星体の数は、だいたい500個前後と推定されている。
     大多数の隕石は最終的にはごくごく微小化して、たとえ寝室の枕辺に落ちてきたとしても、だれにも気づかれないほどになる。
     そうした隕石の破片が再発見されるのは、落ちた隕石全体のうちたった2パーセントほどで、その発見・回収作業には、平均約100人時(マンアワー)を要する。
     だが、米カリフォルニア大デーヴィス校のロバート・シトロン教授の研究チームは、結果的には隕石を再発見して回収する確率を劇的に向上させる方法を、このほど編みだすことに成功した。
     シトロンのチームは複数のドローンを使って、まず隕石が落下した可能性の高い一帯の上空をグリッドパターン(格子図形)状に飛行させ、地表の組織的な高解像度映像を作成した。
     次にその映像データを、あらかじめ過去の隕石落下例の画像データで訓練されたAIに解析させて、捜索地域内のどのあたりに当該隕石やその破片が散らばっていそうか、可能性をピンポイントで指摘させたのだ。
    「ユニヴァーストデイ・ドットコム」2021年7月9日付によれば、この探査方法の威力は、ネヴァダ州内のとある干上がった湖底で実施した模擬演習でも十分に証明されたので、シトロンは自信を持って近い将来、アメリカに限らず世界各国の僻地における落下隕石の発見に、この新たな探索方法を役立てようと意欲満々だ。

    身売りしたし

     ナイジェリアはカノ州出身の理容師アリユ・ナイドリスさん(26歳)は、負債の完全返済を願って、2000万ナイラ(約667万円)で自分を身売りすることにした。
     ナイドリスは買い主に誠心誠意尽くすことを誓っていたが、肝心の買い主が見つからぬうちに、地元ヒスバーの宗教警察に逮捕されてしまった。当局いわく
    「ナイドリスの行為は、イスラムの教えに反する。断じて許せぬ」

    南山宏

    作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。

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