どっぺちゃん、こいとさん…死に至る影の病「ドッペルゲンガー」の恐怖/朝里樹の都市伝説タイムトリップ
都市伝説には元ネタがあった。振り返れば……奴がいる。
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ゲーム音楽などで知られる巨匠・植松伸夫氏のバンドのライブには、妖怪や怪奇現象もやってくる!? 噂のライブをレポート!
2024年10月5日土曜日、東京の大手町三井ホールは文字通りの幻想的な音楽の世界へと包まれました。なぜならゲーム業界のRPG作品の金字塔である、“究極の幻想”『ファイナルファンタジー』シリーズの作曲家、植松伸夫さんとその仲間たちによるバンド“con TIKI”のLIVEイベント「con TIKI SHOW」が開催されたからにほかなりません。
con TIKI
キーボード:植松伸夫
朗読 / オートハープ:戸塚利絵
ボーカル:暁 -Xiao-
ギター:岡宮道生
パーカッション:藤岡千尋
「ムー」がなぜ突然、植松さんのLIVEの取材に? そう思うのも無理はありません。しかし、これまで幻想の音楽を奏で続けてきた植松氏は、じつはかなりのムー民でもあるのです。
そんな植松氏とその仲間たちによって結成されたバンド“con TIKI”は、結成以来、オーストラリアや岩手県の鬼死骸村(一関市)などを巡りながら「植松伸夫 con TIKI SHOW」と銘打ったLIVEを披露してきました。11月にはノルウェー、来年にはイタリアなどを巡る予定とまさに世界を飛び回るcon TIKIが、10月5日と6日に、東京へと飛来。
植松氏曰く、笑いあり、涙あり、好きなところで笑ったり泣いたりしてほしい“楽しければなんでもあり”という、まるでどこか仏の教えにも通ずるようなテーマを掲げた凱旋LIVEを2Daysにわたって刊行することに。
世界を巡るcon TIKIと植松さん、このチャンスにぜひムー的なお話を伺うしかないと、LIVE会場に潜入。取材を刊行してきました。
まず、この記事を読んでいるムー民のあなたに、どうしても伝えたいことがあります。ホール内の雰囲気は、心地よい期待感で溢れたかなりモダンでおしゃれな大手町三井ホールだったのですが、そこに吊るされていた巨大スクリーンにcon TIKIのマークが大きく映し出されたのですが……それが、これ!
ムー民ならば一目瞭然、これはマヤの“パレンケの石棺”! 10月14日まで東京浅草花やしきで開催されていた“不思議ムー園地 浅草花やしき”の特別展示エリアの入り口の床にも、同じ意匠が描かれていましたよね。この時点で、植松氏とcon TIKIメンバーは、かなりのムー民なのだという噂ががぜん真実味を帯びてくるというもの。だって、いきなりパレンケの石棺の蓋をこんなにどでかく投影しないでしょう。ふつうは。
……と思っていたものの、何やら違和感が。よく見ると、パレンケ王が手を伸ばしている先には、本来はロケット説もささやかれる十字の物体があるべき場所が「楽器」になっている! なんて粋なcon TIKIのシンボルマークなのでしょうか。
かっこよすぎて、思わずこのマークがプリントされた今回のLIVE Tシャツを購入しました。
などとマークに一目ぼれしていたら、大きな拍手の中、舞台袖から……植松氏が登場! キーボードの前に座ります。同時に次第にマークからFFVIIに登場した魔恍のような緑のオーラが立ち上る映像とともに、かの有名なFFVIIの「オープニング〜爆破ミッション」が生演奏されました。
続けてFFIXのメドレー「テラ ~ 魂無き村ブラン・バル」という、深く沈むような独特な美しさのある2曲が演奏。しかもその後は、「懐かしい曲を」とFFIIからチップチューン的な音色も交えた最新の「バトル2」を生演奏。植松氏のソロによるFFシリーズ楽曲に、文字通り陶酔できるような幻想的な音空間に。
その後、2024年12月5日に発売予定のRPG『FANTASIAN Neo Dimension』より「メインテーマ」も演奏されました。非常に美しい広がりを感じさせるメインテーマでしたが、このゲームは植松氏がFFシリーズを生んだ坂口博信氏とのタッグで制作された最新作であり、風景はすべて手作りのジオラマで作られているのだそうです。
ゲーム音楽は、ほかにもFFVより大人気の「ビッグブリッヂの死闘」のソロ演奏があったかと思うと、con TIKIメンバー全員によるバンド演奏でボーカル曲も多数奏でられました。
FFX「素敵だね」、FFIXの「Melodies Of Life」、そしてFFVII Rebirthからは、主題歌である「No Promises to Keep」の日本語バージョンが初披露されることに。メンバーの暁さんの歌声とバンド演奏による歌の数々は、涙が出るほどの美しさでした。
しかし、“なんでもあり”とのcon TIKIの演奏は幻想的かつムー民が見逃せない展開も見せてくれました。
というのも、con TIKIのメンバーである戸塚さんの朗読に、植松さんが伴奏を生演奏でつけていく、音楽と朗読が一体になったcon TIKIの新プロジェクト“アカリガタリ”の楽曲は、どれもが昔話のようなムードをまとっている、非常にアヤシゲなもの。今回は「死神くん」と「あの世のルール」、そして「鬼は外」が朗読と演奏で披露されました。
朗読される物語には、新人の死神にお菓子をあげて家族の死期を伸ばそうとする子どもや、死んだろくでもない父親の幽霊を無碍にする息子と、その悲劇。そして、つまはじきにされる少年が出会った鬼との遭遇などなど……不思議と温かく、でも心をぞわぞわさるような話の数々。ユニークなイラストとともに、声と音がまじりあう物語空間は、圧倒的に唯一無二でした。
大手町三井ホールでの音響と朗読は、心に染み入るものがありましたが、よく考えれば、それこそこのホールの入り口には、かの将門公の首塚が祀られて静かに眠る土地でもありました。
……かと思えば、まるで何かの呪術を覗き見ているような、奇妙極まる映像とともに繰り返される不思議ソング「卵の中から産まれたあの子」、そしてLIVEの最後の曲には、タイトルからしてムー的な「ドッペルゲンガー」が演奏。
自宅に帰ると、自分のドッペルゲンガーが家族とすき焼きを食べている……。歌詞で語られるこの映像イメージが、歌声とともに脳裏に焼き付く「ドッペルゲンガー」、そしてミステリアスで知りえないものをそのまま歌にしたかのような、理解を超越した「卵の中から産まれたあの子」の2曲は、とくにムー民必聴(?)のレベルで奇妙奇天烈な楽曲で、素敵でした。
植松氏がムー民とのうわさの真相に迫るべく潜入したLIVEも、気づけばあっという間の終演時間。アンコールはソロ演奏でFFX「ザナルカンドにて」、それから、バンドメンバー全員での演奏でFFXII「Kiss Me Good-Bye」が歌われ、大団円に。
うっとりしていて、つい植松氏がムー民であるとのうわさの調査を放念してしまったほどの楽しいLIVEだったのですが、ここはなんとしても確認したい……。ということで、楽屋に潜入して直接お話を伺ってきました。
――植松さんは年季の入ったムー民であるとのうわさを伺ったのですが……よく考えると、そもそもcon TIKIのマークはパレンケの石棺がモチーフだったりして、うわさも何も一目瞭然だったのかもしれません(笑)。
植松 はい(笑)。これね、マヤのパレンケの石棺の蓋の絵をモチーフにしているんですけど。本来は、ロケットみたいなものが彫り込まれている部分をロケットじゃなくて“アナログシンセ”って楽器にしてあります。
――アナログシンセ! 違和感がないですよね。
植松 この石棺の人物が手を伸ばしているけど、その先にアナログシンセがあってとツマミをいじっていたりしたら面白いんじゃないかな? と思って作っています。こういうの大好きなので(笑)。
――そういえば、植松さんはEARTHBOUND PAPASという宇宙人が地球に飛来してきたら、というコンセプトのバンドも結成されていましたよね。やはりずっと昔から、皆さん宇宙人を信じていたのだと。
植松 岡宮と藤岡さんとは、そのころから一緒のバンドで激しいやつをやっていましたね。
藤岡 やっていたなあ(笑)。
岡宮 植松さんの演奏は、それこそEARTHBOUND PAPAS もそうだし、それより前には、まあけっこうな激しいバンド(編注:THE BLACK MAGES)時代も横にいて聴いてきたわけなんですが。なんだろう……。そういえばいつの間にか活動しなくなっていたと思ったら、con TIKIになっていたんですよね。
植松 ロックバンドだったんですけど、だんだん激しいのがしんどくなってきてさ……(笑)。というのは冗談で、いまも全然ロックが大好きで演奏したいと思っているんですけど。
藤岡 今回はソロ演奏も十分激しいよね(笑)。
植松 僕はまだロックとか全然好きなんですけど、演奏側からすると、ロックの曲って、だいたい音量が大きいんです……なので、間違えたりとか、変な演奏をしても意外と目立たないんですよね、自分の経験上で振り返ってみても。
岡宮 間違いが目立たない!(笑)
植松 そうなんだけどね、長らく何か自分が演奏しているのがちゃんと伝わっているのかどうかわからないような音楽を演奏し続けていると、少しどこかに演奏していて弾き甲斐がないというか、責任が持てなくなってきている気がしちゃって。
岡宮 たしかにライブで全体の音量とか音圧が大きいと自分が伝えたい音がちゃんと届いているのか不安になるときありますよね……。
植松 そうそう。だから、むしろ静かな中で一音一音を責任を持ってというかさ……「ああなるほど」って納得できる音を、ちゃんと腹をくくって聴かせられるような曲。そういう演奏をしないと後悔しちゃうかなと。
岡宮 そんな気持ちだったんですね……。
植松 長年やってきたんだから、「ロケンロー!」で押し通すんじゃなくて、ちゃんと伝えたいことを伝えたい。音と音楽で、もっと静かでコンパクトな、澄んだ音量でやっていきたいかな、これからは。
Xiao 植松さんがちょうどそう思っていたときに、ファンイベントで植松さんのピアノと、わたしの歌で演奏したのが、con TIKIが生まれたきっかけだったんです。
植松 そうそう。自分のピアノと、Xiaoさんの歌で演奏したときに、ふと「こういうのもあり」だなと思って、それからアコースティックギターが入ったり、いろいろ変遷があって、今のメンバーに。
戸塚 メンバーもじつはまだ増えるんですよ。
植松 来年のイタリア公演からは、FFVII Rebirthの主題歌をファーストテイクって動画用に録音したときに参加してくれていた、チェロの演奏家が新しく参加します。con TIKIのTIKIって、“知己”という意味から採ったんですから。ほかにも、コンチキ号漂流記とかのイメージもあったり。
――そうだったんですか! “コンチキショー”からつけたのだとばかり思っていました(笑)。
戸塚 ふつうそう思いますよね(笑)。
植松 知己だからとはいいつつも、SHOWをつけるとこれはいいって(笑)。そんなところに、ちょうど同じくらいのタイミングで平行して動いていた戸塚さんとの朗読と演奏が、“アカリガタリ”プロジェクトとして形になってきたから、本気でこういうものがあるバンドも面白いかな、と思ったりして。
――LIVEでは植松さんのソロ演奏も堪能できましたが、知己としてご一緒されてきたメンバーの皆さんは、舞台袖からソロ演奏をどんな風にご覧になっていましたか?
植松 あ、やってんね~とか思われていたにちがいない(笑)。
岡宮 植松さんのソロコーナーの曲ですけど、実は毎回演奏ごとに、ちょっとずつアレンジとか弾き方を変えているんですよね。
藤岡 たしかに、その変化を観るのが楽しい。
Xiao 音を抜いたり、エフェクトを足したりしていて。わたしもLIVEではいつも、植松さんから出てくるサウンドをそのまま聴かせてもらってるような気持ちになるんです。
戸塚 それって、すっごく毎回グッときますよ。
――con TIKIも3年目になるので、やはりそうした細かな違いを感じられているんですね。
植松 3年目なので、やっぱりバンドとしてもこなれてきてますね。やっぱりあちこちでコンサートやライブを演奏させてもらうようになって、いまやみんなで一蓮托生というか……1時間半なり、3時間なり、演奏を披露するのは緊張する恐怖の場ですから。そんなときは、ちらっと周りを見ると、いつもいっしょにやっている連中がいるので、精神的に助けられているってのはあります。
岡宮 さっき自分で静かな音で一音一音に責任を持ちたいとか言ってたけど、自分で自分の首を絞めちゃってるじゃないですか(笑)!
植松 なんか、ちょっとそういう緊張感を味わいたい年頃なのかも(笑)。
――そんなcon TIKIも、来年はまた海外を回られるんですね。ムーでもムー旅といって海外取材があるのですが、海外ならではのcon TIKI SHOWも楽しみです。
岡宮 海外の人たちって、反応がいいんですよね。何やったって大盛り上がりで喜んでくれるんですよ。
戸塚&Xiao オーストラリアで、カップルが肩を組みながらすごく盛り上がって観てくださっていたんです! そのお二人、後になって「結婚しました!」ってご連絡があってびっくりしました。
戸塚 そんな風に海外も盛り上がってくださるので、「やはりcon TIKIとしても何かおみやげは考えたいよね」ってちょうど話していたところで。
植松 そうなんですよ。だからいろいろな昔話や伝承を題材にしているアカリガタリ作品でも、来年は海外の伝承を基にしたような曲も作りたいな~と考えてます。アカリガタリは戸塚さんが物語も書いているので。
戸塚 ですよね! ノルウェーはトロールとかがいますし、イタリアにも悪魔とかなのか、ご当地の伝承を取り入れたものが作れたらって。
――それはすごく素敵ですね! きっとムー民的には、世界中の伝承が曲になってどんどん蓄積していったら、まるで音楽の幻想図鑑ができていくようなうれしさがあると思うのでムー的にも、今後con TIKIの活動からは目が離せません。では最後に、せっかくなのでムー民の読者に向けて、代表して植松さんからひとことメッセージをお願いします!
植松 con TIKIは、メンバー全員がUFOの存在を本気で信じているバンドです! 以上!(笑)
――ありがとうございました!
このインタビューで、植松さんとcon TIKIの活動が気になってきたら、ぜひ次回のLIVEにあなたも潜入調査をしてみてください。
webムー編集部
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