「オカルト編集王」三上丈晴 VS「オカルトテレビ王」矢追純一! 謎と不思議のプロデュース仕事術を語る<特別対談>
ムー編集長・三上丈晴による”仕事術”……なる、あやしい書籍が世に放たれる。その名も『オカルト編集王』! その刊行を前に、三上丈晴を自身をオカルトの道へ導いたオカルトテレビ王・矢追純一氏との対談が行われ
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UFOや超能力、ネッシーなどを紹介し、全国に一大ブームを起こした男矢追純一。彼の知られざる真実を三上編集長がMUTubeで解説。
それは見た者全員が生涯忘れられない「事件」であった。
1974年3月7日午後7時、日本テレビの「木曜スペシャル 驚異の超能力!! 世紀の念力男ユリ・ゲラーが奇跡を起こす!」というゴールデンタイムの全国放送の人気番組で、ユリ・ゲラーという、当時まだだれも知らなかった青年が、生放送中に衝撃的なパフォーマンスを繰り広げたのである。
彼は手にしたフォークを指先でそっとなでるだけで切断し、番組の視聴者に向かって家にある金属製のスプーンや壊れた時計をテレビの前に用意し、自分と一緒に念じてほしいと促した。
「マガレ! ウゴケ!」
彼が叫んだ直後のことだ。
「うちの子供がスプーンを空中に投げただけで曲げてしまった」
「電池が入っていない時計の針がぐるぐると回っている!」
「壊れていたドライヤーが突然直ってしまった!」
そんな視聴者からの電話が殺到し、テレビ局の電話回線がパンクする事態になったのだ。
番組の視聴率は26.1パーセントを記録。無名の超能力者ユリ・ゲラーの名は一夜にして日本中を席巻し、全国に超能力ブームを巻き起こした。
それはテレビのブラウン管から、映像と音声を通して「念力」を不特定多数の視聴者へ送るという、世界初の試みでもあった。
この伝説的な番組を企画・演出したのが、当時38歳だった日本テレビ局員の矢追純一氏である。
本稿では、その矢追氏へのインタビューとともに、彼がかかわってきた日本のオカルト(テレビ)史を探っていくことにしたい。
まずは、矢追氏とユリ・ゲラーの出会いについてだ。
「それは、アポロ14号で月面着陸を果たした元宇宙飛行士のエドガー・ミッチェルが、自費で超能力の研究を始めたという英字新聞の記事を読んだのがきっかけでした」
カリフォルニア州にあるミッチェルの研究所を訪問した矢追氏は、そこで研究に協力していたイスラエル人青年についての話を耳にした。
「その青年は、手を触れずに金属を曲げたり、見えない場所で描かれた絵や文字を当てたりと、いろいろな能力を見せたんだそうです。
なかでもミッチェルが驚愕したのが、秤の実験でした……」
同じ重さの鉛を乗せて平衡状態に保たれた秤を、透明なガラス板で覆って完全に密封。なんとそれを、超能力で動かせるかどうか調べたというのだ。
「信じられないことに、青年が見つめただけで秤の平衡が崩れ、スッと動いてそのまま止まってしまったというんです。仮に重りの一部が消えたということであれば、原爆並みの爆発が起きてしまうはずだ、と。それなのに何事もなく、ただ鉛の重さの一部が消滅してしまった。それは科学的には絶対にあり得ないことである、と」
ミッチェルは、その青年はすでに研究所を離れ、現在はどこにいるのかわからないといった。おわかりのように、この青年こそあのユリ・ゲラーだったのである。
このとき、ユリ・ゲラーという青年に会いたい気持ちを強く抱いた矢追氏だったが、連絡先はまったくわからない。仕方なく次の取材先であるニューヨークに向かい、たまたま誘われたパーティーに顔を出すと、見知らぬ婦人から声をかけられた。
彼女は、「あなた日本人でしょ? 私の友だちが日本人なんだけど、あなたと話したがってるの」と、矢追氏に受話器を差しだしてきた。
「いわれるままに電話に出ると、相手は日本語を喋れない日系人の女性でした。仕事は何をしているのかと聞くと、なんと『ユリ・ゲラーという人の秘書をしているの』というんです!」
こんな偶然があるのだろうか?
矢追氏はさっそく、その秘書にユリ・ゲラーへの取材を申し込み、彼が住むニューヨーク一番街の高級マンションへ、取材スタッフを引き連れて訪問した。
「指定された階でエレベーターを降り、部屋はどこだろうかとウロウロしていると、目の前のドアがバッと開き、長身の青年が飛びだしてきた。彼はいきなり僕を抱きしめると、『お前が来るのは夢で見てわかっていた。お前と俺は前世で兄弟だったんだ!』と興奮しながら話すんです」
矢追氏ら取材陣は、ユリ・ゲラーの部屋で驚異的な超能力を見せられ、その場で日本のテレビ番組への出演を依頼。半年後には冒頭の、あの伝説の生放送へと一気に状況が進むこととなった。当時を振り返って、矢追氏はいう。
「ユリ・ゲラーは本物です。彼と一緒にいると不思議なことがたくさん起こる……彼を最初に番組に出したとき、科学の常識がひっくり返った瞬間を大勢が目撃しただけではなく、それを実際に体験したんです。だからあの熱狂は生まれた。本当は超能力はだれにでもあるんだと、皆が気がついちゃったんです」
筆者自身も子供のころ、リアルタイムで番組を視聴し、友人らとスプーン曲げに熱中したのを憶えている。事実、矢追氏の番組をきっかけに、清田益章氏や秋山眞人氏のような超能力を発揮する少年たちが次々と現れたのだ。
矢追氏は番組を通じて、当時の日本中の子供たちの意識の次元を、一夜にして大きく変えてしまったのである。
(文=坂野康隆)
続きは本誌(電子版)で。
webムー編集部
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