「ネス湖大捜索」参加の日本人が「奇妙なコブ」を撮影していた! 現地リサーチャーも驚いた奇跡の一瞬/ネス湖現地レポート
20世紀最大のミステリー、ネス湖のネッシーの真実を現地ライターが追う! あの「大捜索」にかかわるきかっけは、一枚のプライベート写真だった。
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文=宇佐和通 協力=muda
「ネス湖にネッシーを観に行くんです」ーー澄んだ瞳のラッパーと、「muda」を標榜する一行はそう言ってのけた。行けば見られるほどネッシー調査は甘くないはず……だが、しかしながら、彼らは、やってのけたのだ! 驚きの映像に対し、現地のネッシーハンターたちの反応は?
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「muda」(ムダではなく“ムーダ”と読む)というウェブサイトがある。「無駄を愛する大人のカルチャーメディア」をコンセプトに運営しているこのサイトのメンバーが、5月13日から17日に渡ってネス湖の現地調査を敢行した。『ネッシー・ハンター・ラッパー』というタイトルのエピソードでスコットランドを旅行する主役は、バンドMOROHAのMC、アフロさん。
旅の目的は、もちろんネッシー・ハンティングだ。レイクモンスター、特にネッシーといえば「ムー」ということで、取材クルーが出発前に本誌にコンタクトを取ってくれた。ひと通りの情報をお伝えした後、「何か変わったものが撮影できたら教えてくださいね」という軽い言葉でやりとりを終えた時は、クルーも本誌編集部も、そこまで期待はしていなかったというのが本音ではないだろうか。
しかしクルーが現地入りしてほどなく、きわめて奇妙な物体が写っている映像が送られてきた。ネス湖に到着し、ソナー付きのボートで湖上探索を開始したその日に撮影に成功するという異様な早さの展開だ。
当日は、湖水は濁っていたが湖面は凪いでいて、湖面に霧が立ち込めているのに空は晴れているという日本ではなかなか見られない状況だったという。湖を周回したボートの船長も、「これほど見通しの良い日は年に何日もない」と語るほど好いコンディション。今思えば、条件は整っていたのだろう。
問題の映像は、周回を終えて戻ろうとしているところで、カメラを向けた先に現れたものを捉えている。そこに写っているのは、周囲の水面とは明らかに異質な何かだった。
筆者はこれまで、いわゆるレイクモンスターであるとか、それが湖面に立てる波をとらえたというビデオはかなり見ている。ファーストインプレッションとしては「ひとことで説明するのが難しいもの」としか形容できない。ただ、何のバイアスもないフラットな状態で見ても、その部分の質感が周囲とは明らかに違うので、どのタイミングでどこに奇妙なものが写っているのかはすぐにわかった。
その場でこの“奇妙なもの”を見たアフロさんは、最初「岩場かな」と思ったという。しかしその岩場らしきものは周囲の細かい波とは明らかに異なるテンポで動いていた。
強調しておきたいのは、しっかりとした固体の物体が水面で見え隠れしていたという事実だ。映像を実際に見た筆者がひとこと加えるなら、その部分は周囲の波とは逆方向に、かすかに動いているように思えた。明らかな違和感だ。
筆者が覚えた違和感について、もう少し詳しく語っておきたい。周囲の水面の様子と異質なことは指摘した。画面中央やや上の部分にある奇妙な物体は周囲より一段高くなっているように、水面から突き出ているように見え、さらに水面全体とシンクロする動きを見せないのだ。その場に静止した後、周囲の水面とは逆方向への動きを一瞬見せる。突然現れるその部分だけが突出している印象なので、ほぼ凪ぎの状態といっていい湖面との対比が一層際立つ。
ちなみに、物体が現れた場所はアフロさんたちが乗ったボートからかなり距離があったので、音は何も聞こえなかったという。
今回の映像に関しては特筆しておくべき点がいくつかあると思う。ここで一度、整理しておきたい。まずは、ネス湖に着いたその日に乗った水中ソナー搭載の船から撮影されたということ。そして、地元住民である船長が驚くほど天候などのコンディションがよかったこと。そして、問題の物体が現れたポイントの正確な座標までわかっていることだ。
その瞬間は、突然訪れた。少し離れたところにいたアフロさんは、急に呼ばれてカメラマンのもとに駆け付けた。モニターで映像を確認したが、最初はしっかりと確認できなかったので、「何かあるね」程度のリアクションしかできなかった。
しかしレンズを通してこの物体を見ていたカメラマンさんだけは、「何かとんでもないものを撮ってしまった」という表情を浮かべていたという。自分だけの画角の中で奇妙なものを見て、それを映像にとらえたことはわかっている。不思議なものを撮影できたという興奮と、その感情をありのままに伝えられないもどかしさ、本当に奇妙なものなのかというごくわずかだけ残された疑念。さまざまな思いがないまぜになった表情は、“少年のような”としか形容できなかったようだ。
まれに見る好条件で撮影された、ネス湖面に突如として現れた奇妙な物体。もう一度断言しておくが、筆者は映像を見る前に「ここに写っていますよ」といった説明は一切受けなかった。しかし、どこが異常なのかはすぐにわかった。そして異常なものが何なのか、深く考え始めた。この映像を見る人は誰もが同じ反応を見せ、同じプロセスをたどると思う。
ありありと脳裏に残っているカメラマンさんの少年のような表情とは対照的に、船長はサングラスをかけたままポーカーフェイスを崩さなかった。彼には彼なりの思いがあったのだろう。
今回の映像は、湖畔にある「ロッホ・ネス・センター&エグジビション」という施設にも提出済みだ。この施設に常設展示コーナーを持つレジェンド・リサーチャー、エイドリアン・シャイン氏にも映像について意見を求めている。
エイドリアン・シャインは、スコットランドの小さな漁船が怪物に襲われたという話に誘われ、イギリスからやって来た博物学者だ。1973年に初めてネス湖を訪れ、すぐにネス湖プロジェクトを立ち上げた。1980年代に入って当時のドラムナドロヒト・ホテル (現在のネス湖センター)にネッシー調査研究の拠点を設置し、博物学者としての科学的な視点からネス湖の調査を開始した。以来連綿と続いてきた調査研究の歴史のすべては、特別なスペースが設けられて「ロッホ・ネス・センター&エグジビション」に展示されている。
撮れたての映像を見せたところ、彼は冒頭の3秒を見たあたりでひと言「ウェイブ」と発したそうだ。ただの波……。アフロさんたちにしてみれば、見てほしいのは冒頭の3秒では決してなく、その後湖面に周囲とは明らかに違う質感の物体が現れる瞬間だ。「もう少し長めに見てくれ」ーーアフロさんはそう訴えたかったが、髪の毛も長いあごひげも真っ白なレジェンド・リサーチャーの毅然とした態度と決め打ち的な口調に気圧されてしまったようだ。
意外なのだが、シャイン氏はネッシー否定派のリサーチャーとして有名な人物だ。これまで、数えきれないくらいほどの画像や映像を見ている。半世紀にわたってネッシーを中心としたネス湖の生態系の研究を続けているのだから、存在を信じたい気持ちは誰よりも強いはずだ。ただ、自分なりの軸がぶれることはない。これまで見つかっている証拠はネッシー存在を否定するものばかりだし、ネス湖全体の生態系から考えても、長い期間にわたって巨大生物が生き続けられる環境ではない。だから、ネッシー存在を安易に肯定するわけにはいかない。こうした毅然とした態度は、正統派のリサーチャーとしてリスペクトすべきだと思う。
シャイン氏は、アフロさんに向かって「ディス・イズ・ユア・ネッシー」と言った。
こうしたものは、想像できないくらい多くの人たちが目撃しているのが事実だ。本物かどうかはわからない。でも、あなた自身にとってのクラシックなネッシーであることには違いない。その部分だけは認めよう。ーーそんなニュアンスが感じ取れる言葉だったようだ。
現地には、親子三代にわたって湖畔でギフトショップを経営している人もいる。ネッシーは文化的・観光的資源でもあるのだ。だから、謎は謎のままにしておきたいという気持が見え隠れする瞬間もあるらしい。
アフロさんは、ネス湖センターの「展示のバランスの良さ」に興味を持ったそうだ。ネッシーの存在を一方的に押し出すのではなく、これまで明らかになった偽情報も含め、ネス湖に関わるすべてを伝えようとしているという。ネッシーにまつわるすべてを大切にしようという思いは、地元の人たちの集まりで乾杯の時に唱和する「伝説が長く語られていきますように」(May the legend live on)というお約束の言葉にも表れている。
アフロさん自身、ネッシーを取り巻く人々の悲喜こもごもの感情が印象に残ったという。日本円で200兆円をかければ、湖水をすべて抜くことも不可能ではないという冗談も現地の定番だ。しかし、そもそもここにあるのはネッシーだけではないのだ。根底にあるのは、ネッシーを含めて、ネス湖の大自然や環境を守りたいという気持なのだ。
今回の映像は、地元の人たちの反応も面白い。ランチで入った店の店員さんに見せたら「鳥肌が立った」と言われたが、別の場所であったおじいちゃんは「これくらいなら見たことがある」という程度の反応だった。
もう一人、触れておくべき人がいる。伝説のネッシーハンターとして知られるスティーブ・フェルサム氏だ。ネッシーにとりつかれ、ネス湖畔に設営したトレーラーハウスで33年間も湖面を観察し続けている人物だ。彼はとあるギネス記録の保持者でもある。UMAを捜し続けている時間の最長記録保持者なのだが、アフロさんはその記録を「裏を返せば、追い求めているものを見つけられない時間が最も長い……連綿と続く敗北の歴史」と、称賛した。しかし彼は、それを決して隠そうとはしない。ウェブサイトでは、むしろ前面に打ち出している。
フェルサム氏に限らず、ネス湖畔に住む人々にとって、もはやネッシーはいるいないというレベルの話ではないのだ。ネッシーの話になると、誰もが思い出の人について語り出す。あるいは、思い出の人にひもづけた形の昔話が始まる。
ただ、若年層は本当に冷ややからしい。今回の旅では地元のサッカークラブのメンバーに対するインタビューも行った。高校生年代の人たちだ。ネッシーについて訊ねると、すごく茶化した口調で「もちろんいるに決まってるでしょう」といったニュアンスの答えを返して来たという。「こういう話が欲しいんでしょう?」という、取材側の思惑を読み切ったような対応だった。
アフロさんからお話を伺っていて、ひたすら羨ましくなった。
アフロさんたちが目撃したのは、本物のネッシーだったに違いない。鮮明な映像と出現地点の座標という客観的な証拠がある。それを撮影したカメラマンさんの反応についての周辺情報を考えても、信じない理由はない。著名なリサーチャーが映像を3秒見ただけで「ユア・ネッシー」とか「ウェイブ」としか言わなかったとしても、まちがいなくネッシーだったのだ。
アフロさんは、今回の旅のすべてを含めて「一生の思い出」とおっしゃっていた。次は筆者の番だ。この原稿を書きながら、“マイ・ネッシー”を捜す旅に出たいという気持ちが改めて強くなっている。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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