甲府UFO事件50周年に向けて現地のミステリー熱が上昇中! 「UFOKOFU1975 THE LIVE MOKUGEKI!」レポート
衝撃のUFO着陸、異星人遭遇から50年に向けて……現地・甲府が動き出した!
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文=大槻ケンヂ 挿絵=チビル松村
“懐かしの昭和ソングと陰謀論”の回想は「ヘイ・ユー・ブルース」へ。 「なぜ俺は負け組の側になってしまったのか?」この名曲から陰謀論の本質が学べた……?
2回連続で“懐かしの昭和ソングと陰謀論”について触れた。ダメ押しで今回はヘイ・ユウ・ブルースから話を始めます。左とん平が昭和48年に発売した「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」は、無茶苦茶カッコいいジャズファンクに乗せて俳優の左とん平が何度も「ヘイユウ、ウァッチャネーム!?」、お前の名前を教えろ!と叫ぶ、ある意味早過ぎたJラップだ。当時ヒットした。
小学生であった僕も教室で同級生と指差し合って「ヘイユウ!?」とお互いの名前を尋ね合ったもんである。この曲、オケに乗せてのポエトリーリーディングというサウンドスタイルも衝撃的だったうえに、歌詞がなんとも味わいがあったのだ。
要約したならこんなことが語られていた。
人は皆同じように裸で生まれてくるのに、どうして人生はうまくいったりいかなかったりの差ができるのか?
そしてなぜ俺は負け組の側になってしまったのか?
幸不幸を振りわけている誰かがいるのか?
俺をこんなふうにしてしまったそいつは一体誰だ?
名を名乗れ。
「ヘイユウ、ウァッチャネーム!!」
僕がネタにこそすれ(前回参照)そんなには陰謀論を信じることがないのは、子供の頃に「左とん平のヘイ・ユウ・ブルース」を散々聴いたからだと思うのだ。現在の自分の不遇を誰かのせいにして劣等感から逃れたいという心理は、人には誰しもあるけれど、俯瞰で見た時、それはちょっとブルージーでさみしい心象風景だ。
さらに「ヘイユウ、ウァッチャネーム?」と名を問い、相手(いるとするなら)が名乗ってもいないのにNASAだ米政府だイルミナティーだディープステートだと決めつけるというのも、見方によっては強引なんじゃないかなと、とん平の名曲から僕は陰謀論の本質であろう“自分の不幸は他人のせい”の、その閉塞感を学んだように思う。
とは言え、信じる人たちにとって、陰謀は一大事だし、そもそも俯瞰で世界を見た上での陰謀論なのだろうから、全てを否定もしにくいが、先日、高島康司著「Qアノン 陰謀の存在証明」という本を読んでいたら、実にヘイ・ユウ・ブルース味のある陰謀論者のエピソードが紹介されていた。
2016年、敬虔なキリスト教徒であり二児の父である男性ウェルチが「AR15自動小銃と散弾銃、さらに三十八口径のコルト・リボルバー拳銃で武装し、コメット・ピンポンに押し入った」
コメット・ピンポンとは「注文したピザを待つ間、店内にある卓球台で親子がピンポンを楽しめる」ピザ屋さんなのだが、これがどういうわけか、ペドフィリア(小児性愛)で悪魔崇拝主義の富裕層集団ディープステートが性目的で子供たちを地下室に監禁している店、とのウワサが立ち、義憤に駆られたウェルチさんはランボーなみに武装してコメット・ピンポンにピザ屋襲撃! 子供らが監禁されているといわれる事務所の地下室へと降りようとした。
「ん? でも? うそ!? オ~マイガッ」
と叫んだか知らないが、そこでウェルチさんはガク然とすることとなる。なんということか、コメット・ピンポンには、地下室などなかったのだ……。
地下室がなくっちゃ監禁のしようもない。彼は「自分が間違いを犯したことに気づき、観念して銃を」置いて投降。実刑四年の判決を受け、反省の声明も出した、とのこと。
陰謀論を信じる人の多くがそうであるように、マジメな方だったんだろうなぁ。ボランティア活動もして「模範的な市民」であったという彼氏。マジメマジメに生きてきて、でもある日ふと『なぜマジメに生きていないように俺からは見えるやつらの方がノウノウとしているんだ?』とか思ってしまったのではないか?
『おかしいんじゃないのかそれは?』
誰だってそんな疑念にかられる時はある。模範的市民ならなおのことだろう。
『こんなふうにしてしまったのは一体誰だ? 誰なんだ? 名を名乗れっ』
ヘイ・ユウ、ウァッチャネーム!!
ウェルチさんの場合はそこに、ペドフィリアの悪魔崇拝主義の特権的富裕層、という名前を当てはめたのだろう。
……ちょっと余談になるかもしれないが、特権的富裕層が悪魔崇拝主義で小児愛者、というのも陰謀論でとてもよく聞く話である。高島康司さんの本でも大富豪のペドフィリア島について触れている。億万長者エプスタインが所有する島で、富裕層による小児買春と悪魔を讃える儀式がさかんに行われていた、というのだ。島を訪れていた著名人にはクリントン元大統領やアンドリュー王子の名もあったという。
なるほど、金持ちとサタニストとペドフィリアとは絶妙のかけ合わせである。そりゃやっぱり僕ら庶民としては、大金持ちはサタニストでペドフィリアであってほしいものである。それでこそ溜飲が下がるってもんではないか……でも、だけど素朴に思うんだけど、大金持ちがサタニスト、まではまあわかるとして、彼らがみんな性的にペド趣味ってこと、あるかなぁ? いろいろじゃないの?
「ふっふっふ、島に御招待させて下さい。100兆円の賄賂のお礼に、いい子を貴方に、ね」
「いい子? 幼いんスか?」
「無論。むふふ、ペド島ですから。」
「いやぁ……あのう、実は私……老け専でして」
「ふ、老け専?」
「ええ、もうそうなんスよねぇ。60代から!」
「え? 大富豪なのにペドじゃないの? 悪魔崇拝主義でしょ? ペドちゃうん? 老け専なん?」
「サタニストっスよ。あ~そういうのなんか、やだなぁ、偏見~! 金持ちでサタニストで老け専の何が悪いの? もう100兆円返してよ」
「ええ? でもだってペド島なんだもん」
みたいな超特権的富裕層同士の問答が交わされることもあるのではないか。ないか。わからんが、非ペド大富豪の「ペド島行って困ったよ」ブログとか読んでみたいものである。
……話は戻って「ヘイ・ユウ・ブルース」果たして「俺をこんなふうにしてしまったやつ」は一体誰なのか? 一体なんと名乗るのか? 社会や時代やフリーメイソンですらなく「そいつの名前は“俺”だ。自分だ。自分自身のせいなのさ」と言ってしまったら、身も蓋も無さ過ぎるというものであろうか。
大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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