ワニかサメか? 龍か蛇か? 歴史考証で変化する出雲神話の神格たち/江戸・明治の神話絵巻
古代日本に爬虫類のワニはいなかった……ならば鰐とは? ヤマタノオロチの八岐とは? 神話の記述は時代の考察を経て描かれる。
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坂井洋一・石井数俊 著
「出雲開きツアー」を記録するドキュメント
出雲神話の、悲劇の英雄・大国主。一般には神話上の存在とされているが、著者のひとりである坂井洋一氏はあるとき、実は大国主は実在の人物であり、その子孫が今も健在であるという驚きの情報を得る。のみならず、彼らは古代出雲王国の真の歴史を、口伝の形で連綿と伝えてきたというのだ。
それが坂井氏のいう「出雲口伝」である。それによると、出雲王国の建国は紀元前500年ころ。アーリア人のインド侵入により、北へ逃亡した先住民族のドラヴィダ人は、樺太から日本に侵入して、出雲で王国を築いたというのである。つまり日本人のルーツの一部は、彼らドラヴィダ人ということになる。
さらにもうひとつのルーツは、秦から出雲にやってきたユダヤ系の方士・徐福。彼と出雲王国の間で繰り広げられた、さまざまな諍いやドラマの末に、大和王権が確立してゆく。
本書はこのような歴史観の下、令和4年に敢行された「出雲開きツアー」を記録するドキュメント。前半で「出雲口伝」の内容が詳細に語られた後、突然ツアーが始まるので面喰らってしまう。それも、聖地巡礼の観光ガイドとしても、十分使える内容なのだ(何とおすすめのグルメスポットまで掲載されている!)。これはぜひ巡ってみたいところであるが、そのためには自動車は必須。
巻末では、もうひとりの著者石井数俊氏が、霊的出雲王国を論じている。何とも盛りだくさんな本である。
(月刊ムー 2024年6月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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