基礎物理学の最前線を知る「宇宙と物質の起源」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    宇宙と物質の起源

    高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 編

    一般の読者に向けた、宇宙に関する最新の知見

    「宇宙と物質の起源」。何とも壮大な標題である。
     一般人には、想像すらおよばないが、物理学の最先端では、宇宙の起源はどのようにとらえられているのだろうか。本書は一般の読者に向けて、宇宙に関する最新の知見を、惜しみなく盛り込んだ、格好の啓蒙書である。

     本書の編者である「高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所」とは、加速器を駆使して宇宙や物質の起源を探求する研究所。本書には、同研究所に所縁のある、錚々たる科学者たちが結集している。
     素粒子とは何かに始まり、ヒッグス粒子の働き、質量の起源、元素正体、宇宙を構成する4つの力、大統一理論の現状、反物質と非対称性、宇宙はなぜ膨張するのか、宇宙の大規模構造とダークマター、さらには宇宙の進化や安定性に至るまでの「基礎物理学の最前線」について、それぞれの専門家による懇切丁寧な解説が提供される。
     とはいえ、いくら説明が丁寧でも、元来一般人にとっては難解な主題が扱われているので、精読にはそれなりに覚悟は必要。少なくとも高校程度の物理・化学の知識は必須だ。

     本書を読んで痛感されるのは、科学という営みに従事してきた、人間という存在の素晴らしさ。
     著者のひとりである齊藤直人氏の「サイエンスは時空を超えた人類の壮大なコラボレーション」という言葉は、評者の胸に染みた。

    講談社/1320円(税込)

    (月刊ムー 2024年6月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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