知られざる比叡山の魔所「狩籠の丘」/菅田正昭
京都の鬼門を守る比叡山(ひえいざん)。その山中に、3つの結界石が置かれた、奇妙な場所がある。遠い昔、最澄が魔物を倒し、地中に封じこめたとされるこの場所は、はたしてどのようなところなのだろうか。
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密教世界を眼前にし、曼荼羅を体験せよ!
「密教」― その名前は神秘的な響きを持っている。実際、教義や儀礼の継承方法として師匠から弟子への「口伝」を重んじる密教の神秘性は、中国より伝来してきた当時から人々の興味を惹き、日本の仏教界でも重用された。
日本における密教の2大宗派は天台宗と真言宗だが、日本国内でひと口に密教というとき、主に真言宗の教えや世界観について指す場合も多い。これは、中国密教を基盤とする「単一の密教」の教えとして日本にもたらされたのが真言密教であるという背景がある。
その真言宗の開祖であり、密教の教えを日本に広めた人といえば…そう、弘法大師・空海だ。2024年は、この空海が誕生してちょうど1250年という節目の年である。
これを記念し、奈良県奈良市の奈良国立博物館にて、生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」が2024年4月13日(土)から開催される。「奈良国立博物館の総力を挙げた展覧会」という大スケールのイベントなので、以下より見どころをチェックしていこう。
まず本展では、密教が海と陸のシルクロードを経由して伝わり、日本にまで至った伝来の軌跡を辿る。
密教は仏教発祥の地であるインドで誕生し、7世紀頃に確立したと言われる。初期に儀礼や呪術などを行う土着の信仰を取り入れており、やがてそれらが整理し体系立てられて、密教の根本経典である「大日経」と「金剛頂経」が成立した。
その後、「大日経」は陸路で唐に入ったインド層・善無畏に、「金剛頂経」は海路を経て唐に入ったインド出身の金剛智によって、それぞれ当時の中国に伝わった。
そして9世紀初頭、遣唐使に随行して唐に渡った空海が、師匠の恵果と出会って密教の教えを受け継ぎ日本でも本格的に広まるわけだが、そのほかにインドネシアなどの東アジア諸地域にも伝わっている。今回の展示は、このような密教の流れを辿ることができる貴重な場となる。
また展示会場に、密教の曼荼羅空間が再現されることにも注目である。
空海は密教について、「文筆で表し尽くすことが難しい。そこで図や絵を使って悟らない者に開き示すのだ」と述べたそうだ。簡単に言うと、そんな密教の世界観を「見える化」したのが曼荼羅である。
密教曼荼羅は、上述の「大日経」がベースの「胎蔵界」の図と、「金剛頂経」がベースの「金剛界」の図の2つからなる。両者はセットであり、2つの世界を表す「両界曼荼羅」と呼ばれる。
今回の展示会場では、密教世界の中心である大日如来とそれを取り囲む仏たち、そして胎蔵界・金剛界からなる両界曼荼羅の世界が、立体的な空間で展示される。
さらに会場では、日本各地で守り伝えられてきた国宝約30件、重要文化財約60件を含む約120件の至宝を一堂に展示。空海が唐から持ち帰ったとされる法具、唐代美術品のほか、天台宗の開祖・最澄に宛てた手紙などを含む空海の直筆史料も公開される。
特に見どころなのは、現存最古にして、空海が制作を指揮した現存唯一で最古の国宝・両界曼荼羅(京都・神護寺)であろう。高雄山神護寺に伝わったことから「高雄曼荼羅」と呼ばれており、2022年に修理が完了してから一般公開されるのは本展が初だ。
ちなみに、胎蔵界が前期展示(4/13~5/12)、金剛界が後期展示(5/14~6/9)と、2つの曼荼羅の展示時期が分かれているので注意されたい。
というわけで、本展の基本情報をさらうだけでも、空海にまつわるイベントとして規模がかなり大きいことが伝わってくる。ぜひ空海生誕1250年というメモリアルイヤーに、空海ゆかりの寺社も多い奈良の地へ、密教曼荼羅のルーツを辿りに足を伸ばしてはいかがだろうか?
【イベント概要】
生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」
https://kukai1250.jp/
【会 期】
令和6年(2024)4月13日(土)~6月9日(日)
前期展示:4月13日(土)~5月12日(日)/後期展示:5月14日(火)~6月9日(日)
【会 場】
奈良国立博物館 東・西新館
【休館日】
毎週月曜日、5月7日(火) ※ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館
【開館時間】
午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
【観覧料金】
当日券, 前売・団体券(20名以上)
一般, 2,000円, 1,800円
高大生, 1,500円, 1,300円
中学生以下無料
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
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