米オザーク山脈に潜む巨人「ブルーマン」の恐怖! 長期不在と帰還を繰り返す未知なる存在は今どこに?/ブレント・スワンサー
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーがついに『ムー』に登場!! 日本人がまだ知らない世界の謎について語る!
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文=大槻ケンヂ イラスト=チビル松村
webムーの連載コラムが本誌に登場! 医者から「オカルトという病」を宣告され、無事に社会復帰した男・大槻ケンヂの奇妙な日常を語ります。
ジャンルを問わずマニアと呼ばれる人々はある共通の思い込みにとらわれているものだ。それは「自分の大好きなものは他人も大好きに決まっている」という思い込みだ。趣味嗜好そのほか、とくに昭和のプロレスマニアなんていうのはその傾向が強くて、酒の席でも公の場でも空気を読まず「で……実際に猪木と馬場がやったらどっちが強いと思う?」などとやおら切り出しては周りをシーンとさせたりしたものだ。「……知らんがな」ということだ。
オカルトにもこの傾向は当てはまると思うのだ。
「だれもが毎月『ムー』を読んでいるわけではない」
このたった1~2行がオカルト好きにはわからない。
それでついつい「今じゃないだろう」という場面で、たとえば会議で話が行き詰まったときなどに「ふぅ、なんかファフロツキーズ現象でも急に起こって状況が一変しないですかね」などと口走り「ふ、ファ? なんだそれ?」「ファフロツキーズ現象ですよ。ほら、魚とか空から降ってくる。知りませんか?」「知らんがな、てか、それ今いうことか?」――今じゃない! と上司に一喝されるわけだ。
「今じゃない!」
僕も何度もやったことがある。アレは数十年前、やっとご飯に行けることになった女性に対して食事中、得意気に空飛ぶ円盤について熱くUFOトークをしたことがあった。介良事件、ヒル夫妻事件、異星人死体解剖フィルムについてまでもだ。
「異星人死体解剖フィルムね、それ最初に公の場でいったのはミュージシャンらしいよ。レグ・プレスリーといって大仁田厚の入場曲『ワイルド・シング』に関わった人でね、この人があるとき……」
知らんがな。それ今いうことか。今じゃない。彼女からその後連絡は来なくなった。そりゃそうだ。皆さんも初デートにオカルト・トークはやめましょうね。
しかし逆に、ときとしてまれに、こちらのほうが「今じゃない」と思うオカルト・トークというのもあるかと思うのだ。
2年前に筋肉少女帯の重要なライブがあった。もちろん本番前はバタバタだ。僕も準備に追われてアタフタしていた。そしていよいよ直前となり、ついに緊張感も高まってきた、まさにそのときだった。スタッフのひとりが「大槻さん、青い顔の宇宙人って知ってます?」と不意に話しかけてきたのだ。
「え? 何? 青い顔の宇宙人?」
「そうです。青い顔の宇宙人。真っ青なんですよ。うちの母が見て教えてあげたんですよ」
「え? 教えた? だれに? 何?」
「うちの母がスーパーに青い顔の宇宙人がいるのを見つけて隠れてるつもりだろうけど見えてるわよと宇宙人に教えてあげたんですよ。それで……」
「……ちょ、ちょっと待ってね、すごいその話聞きたいんだけど、あの、今じゃない! 今じゃないときにまた詳しく」
教えて! といってステージへと急いだものだ。まさに今じゃない。
でもスタッフの気持ちもよくわかるのだ。筋肉少女帯の関係者の中でオカルト好きは僕ただひとりだけなのである。
そしてそのスタッフさんとはライブの日にしか会うことがない。ライブ当日の楽屋は慌ただしくて、青い顔の宇宙人の話を僕にしようとしてもタイミングはなかなか合わない。とても仕事のできる心配りもバッチリなスタッフさんのことだから、時期を待って待って今こそいお
う! と思ったら本番直前になっていた、今じゃないタイミングになってしまった、ということなのだろう。
もうその夜はライブ中「青い顔の宇宙人」のことで頭がいっぱいになってしまった。その後、改めてスタッフさんから話を聞いた。するととても興味深いブルーマンとの遭遇事件なのであった。
スタッフさんの70代のお母様が青い顔の男を最初に目撃したのは2019年の3月であったという。場所は、お母様がお住まいの奈良県宇陀市にある、スーパーマーケットだった。
そこにお買い物に行ったお母様が不思議な男を見た。作業服を着た人物なのだが、顔や手や露出した部分がまるでペンキでも塗ったかのように「青かった」のだそうだ。いうなればブルーマンである。ブルーマンを見た瞬間に、お母様は「あの人は宇宙人だ」との直感を得た。
まるで昭和の空飛ぶ円盤研究会の同人誌にでも出てくるような話ではないか。何周か回って今こそこういう話は個人的に面白いと思う。「母はそもそも見える人で」とスタッフさんはいう。いわゆる霊感の所持者であるお母様は、今まで何度も霊なら見てきたという。しかし、異星人は初めてとのこと。しかも青い顔のそれとは初遭遇であった。でもお母様はその日は、それはそれでスーパーを後にした。彼女は出方を窺ったのかもしれない。
2回目の遭遇は3か月後の6月。宇陀市の阿紀神社で毎年行われている「あきの螢能」の最中であった。境内に集う観衆の中に、お母様はまたブルーマンを発見した。作業着に青い肌。スーパーで見たのと同一人物だ。今度はお母様はブルーマンに駆け寄っていきなり彼に声をかけた。
「ちょっと、いい?」
ブルーマンは「は?」という顔でお母様を見たという。
「ちょっと、いい? あなた(地球人に)化けてるつもりだけどぜんぜん青いわよ」
青い肌の宇宙人なのはバレバレだから、わかる人にはわかるから、ちょっとなんとかしなさいよアンタ、とお母様は忠告をしたわけである。優しい方であると思う。ブルーマンのほうはこのアドバイスに対しまだ「は?」ちょっと何をいってるのかわからない、という顔をして、そのままサッとその場を去っていったのだそうだ。それきり3度目の遭遇は現在のところ発生していない。
きっとブルーマンは「やべっ、バレちゃった、ダメだ、青じゃないな」といってカモフラージュ・カラーをただ今変更中なのかもしれない。
さらに、お母様のほうも、霊が見える上に異星人まで見えてしまったら「うるさくて仕方がないから」ということで、2回目の遭遇以降は心のチャンネルみたいなものを「異星人が見えないようにシャットアウト」したことによって事なきを得ているのだという。
はたしてブルーマンの正体は何だったのか。お母様の直感に乗れば「異星人」であるが、webムーの記事によれば、全身の青いUMA「ブルーマン」の目撃例が1865年以来、何かあるという。「身長は3メートルを下らず、分厚い筋肉で覆われている」との報告もある。奈良ブルーマンとはかなり印象が異なる点が興味深い。
また全身を青く塗った「ブルーマン」というパフォーマンス集団も有名だ。もしかしたら来日した彼らのひとりや彼らの宣伝担当が、プロモーションで奈良を散歩した、などという可能性はないだろうか? 彼らの2019年来日公演を見たところ6月に愛知と大阪で公演を行っている。
……謎が謎呼ぶ奈良ブルーマン。ちなみに、オカルトの話を僕にとてもしたいんだけど話すタイミングを見つけられない、やっと巡ってきたときは本番直前で、という事例は他にもあって、去年も楽屋でライブ準備をしていたらスタッフのひとりが突然「あの大槻さん、時空の歪みって見たことあります?」と話しかけてきた。え、今その話? なんでも子供のころに友だちと遊んでいたら、公園に陽炎のようなものが立っていて、そこに入ったら中はドラえもんのタイムワープのシーンのような感じになっていたのだそうな。
「すごく面白いね。もっとその話聞きたいけど後でゆっくりでもいいかな。『ムー』のネタにさせてくださいよ。でもアレだね、それはきっと別の次元への入り口で、そこは場所もここではないし、時間も、過去か未来かもわからないし、とにかく、今じゃない!」
(月刊ムー2024年4月号より)
大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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